文化逍遥。

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わたしのレコード棚ーブルース86『Feel Like Going Home』

2020年03月20日 | わたしのレコード棚
 2003年にマーティン・スコセッシ製作総指揮による映画の7連作シリーズ「The Blues Movie Project」の中から、我が家にあるDVD『Feel Like Going Home』を取り上げる。監督は、マーティン・スコセッシ自身で、自らメガホンを取ったのはこの作品だけである。



 この映画は、若手ブルースマンのコリー・ハリスを案内役に、アメリカ深南部から更には西アフリカのマリまで飛ぶ、という「ブルース起源を探す旅」になっている。
 見どころは、コリー・ハリスとタジ・マハールあるいはケブ・モーらとのセッション、プリ・ブルースともいえるファイフ(原始的な横笛)オサー・ターナーの演奏、そして、マリの演奏家とのジャム・セッションなどだろう。

 この作品では、あくまでブルースの起源をアフリカに求めている。が、それについては諸説あり一概には決められない、というのが本当のところだ。故中村とうよう氏などは、ブルースを含め全てのアメリカ音楽のリズムの源泉はアイルランドにある、と言い切っていた。そこまで断定できるかは別として、わたしもブルースの起源に関しては、アイリッシュミュージックの影響が強い、と考えている。具体的には、アパラチアン山脈南部のピードモント地方に入植したアイルランド移民達が伝えた「オールドタイム」と呼ばれる古いアイルランド民謡と、黒人達の音楽が融合して出来たのが「ブルース」なのだ、と考えている。歴史的には、19世紀中頃のアイルランドにおける「じゃがいも飢饉」になどにより、多くのアイルランドからアメリカへの移民が発生したが、大まかに言って、「被差別民」という点では、黒人もアイリッシュも境遇が近く、かなりな交流があったらしい。地理的に、東部のピードモント・ブルースではオールドタイムの影響が顕著だし、ミシシッピーあたりでも、レッド・ベリーなどのように民謡という意味でのフォーク・ソングでは、リズムのみならずコード進行などでもよりその傾向が強い。

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