文化逍遥。

良質な文化の紹介。

わたしのレコード棚ーブルース104 Eugene Powell

2020年09月21日 | わたしのレコード棚
 どの世界にも隠れた名人はいるもので、ブルースの世界にも世に知られぬ名人がいる。もっとも、ブルースマンの中でレコーディング出来たのは、10人に一人位だったとも言われているので、我々のようなブルースファンの知るところとなっているのは、ほんの一握り、と言うべきかもしれない。
 ヴォーカルとギターの、サニー・ボーイ・ネルソン(Sonny Boy Nelson)ことユージン・パウエル(Eugene Powell)も、そんな隠れた名人の一人だ。1908年にミシシッピー州ロムバーディー(Lombardy)で生まれ、1998年11月4日に同州グリ-ンヴィル(Greenville)で亡くなっている。1936年にブルーバード・レーベルにサニー・ボーイ・ネルソン名義で最初の吹き込みをし、1950年代初めころまで音楽活動をしていたというが、1952年以降は音楽から遠ざかっていたらしい。1972年になって、ミシシッピー・シークスのメンバーだったサム・チャットモンに勧められ復帰し、ブルース・フェスなどにも参加している。


 YAZOOレーベルのLP1053『Harmonica Blues』。タイトルのとおり、ハ-モニカの歴史的名演を集めた名盤。この中でパウエルは、ハーモニカとヴォーカルのロバート・ヒル(Robert Hill)という人のバックで、ギターを弾いている。1936年の録音なので、ごく初期の頃のものということになる。


 WOLFレーベルのLP120.911。1967年から1981年までに「再発見」されたブルースマン達の生活していた場での、言わば「フィールド録音」を集めたオムニバス盤。名盤。パウエルは、1981年にグリ-ンヴィルのおそらくは彼の家で録音された3曲を収録。ヴォーカルとギターだが、収録時には70歳を超えており、さすがに衰えは隠せない。が、この人独特の音遣いは健在で、特にブルーノートと言われる5音音階を基礎としながらも、時に流れるように加える半音階は、とてもモダンで洒落た感じを受ける。あるいは、それがためにローカルの場では、あまり受け入れられなかったのかもしれない。


 上のLPジャケット裏。


 さらに、拡大した写真。パウエルは、右目が悪かったようだ。おそらく、撮影場所は彼の自宅前ではないか。


 「Mississippi Delta Blues Fes' 1984」でサム・チャットモン(右)と共演した時の一コマ。タイトルから1984年に行われたように考えられるが、1984年はヴィデオの発行年で、実際のフェスティバル開催は1978年と思われる。ヴィデオの映像をデジカメで撮ったもの。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする