King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

『行人』読了。空気を読む

2016年05月26日 16時19分28秒 | 読書
歴史小説を続けて読んでいましたが、
しばらくまた夏目漱石に戻りました。

そして、この作品に出合い、100年も前にして存在していたことに驚愕する
のでした。

例えば作品に出てくる空気が生まれたという現代に通じるこの言葉も
すでに漱石により使われていたという事実。

空気を読むという言葉がはやり言葉になったのは20世紀のことでしょうか。

漫才の突っ込みに使われてみんながそんな空気を意識したときに、もはや
明治の時代に空気を意識することは行われ小説になっていたということと
このテーマになっていることや描かれていることが現代に通じることばかり
で逆に精神世界において何の発展ももしかして我々は成しえていないのでは
と思えてきます。

多くの小説家が現れ、ノーベル賞をとるような作家も現れているのに、
漱石を古いと笑えないのはどうゆう事かと考えてしまいます。

あのいつもノーベル賞の頃になると受賞があるのではと騒がれる作家も
丸きり漱石の焼き直しでしかないと思えるし、作中にあまり聞く人もいないジャンルの
クラッシックの音楽を伏線として出したりする手法も漱石がよく用いる絵画と
禅の世界をタブらせたりする手法によく似ています。

そして、主人公は何も解決せず何も行動として残さないものの、なにかとても共感したり
何か重要な体験をした感じになるという不思議な感覚もよく似ています。

最後が手紙という形も漱石の小説にはよくある得意の形で独特の緊迫感が
漂い、現代の新聞もとらず手紙などもやり取りしない現代でも臨場感や
場面展開がよく伝わります。

兄さんがよいよおかしくなったという時に大学でテレパシーの実験をやった
などというシーンなどもそんな昔からこんなことがと思うほど古さを
感じないばかりか逆に自分たちがより進歩を示せないで世界には貧困と
欺瞞に満ちた混沌が渦巻いているという現状を憂うのです。

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