King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

『太陽の棘』読了

2017年04月05日 12時52分48秒 | 読書

沖縄には何度か行ったこともあるし、ニュースに
流れることもあり、南の島とかリゾート地とか
基地問題に揺れる町とかいくつのイメージが直ぐに
浮かぶ土地でもあります。

ただ、この小説を読みいきなり戦後直ぐの沖縄が
描かれ、今までそんな破壊尽くされ焦土と化し、
それても人々はたくましく生き抜いた土地という
イメージは一度も思い至ったことがなく、いきなり
衝撃を受けます。

本土戦という一番の激戦地であり、ひめゆりの塔
とかがまでの悲劇とか伝え聞いている事件はいままで
あるものの焼野原直後が舞台となった作品は非常に
珍しいと思います。

そして、この小説が事実をもとにしているというのも
非常に重く、かつ非常にうまく書かれていると実感
します。

これは外国人の視線という戦勝者からの立場という
特異な観点をとったことと描くのが芸術家という
特殊な人々でもろもろの陥りがちな罠を避け、人と
芸術のかかわりを描いたところにこの作品の持ち味と
作品の成り立ちの重要性があり、沖縄という日本にとって
戦後の繁栄の棘を思い直すきっかけになっていると
思います。

他にも領土問題とか日本にはいくつかの重要な忘れ
得ない棘があるのですが、何をもってこれを解決すべきか
まずはどちらにもくみしない冷静な目を持って追体験する
重要性を感じます。

私が訪れた「斎場御嶽」にもいまだに艦砲射撃を受けた
窪地があったのを思い出します。

観光地であり重要な聖地でも、あえてそのままに残して
ある点に深く沖縄の心を思うことになる光景でした。

今の日本人も結局ニシムイの画家たちと同じ、故郷で
ありながら何もできなかった自分たちが現地でできることと
して芸術村を作り活動するという心は日本人として
守り得なかった地という意識と同じ視線と重なりあうものが
あり、現地の悲惨さを今更暴き立てるのでなく、復興の
為に集まり活動する彼らの姿が米兵医師との交流で通じ合う
物として心打つという構造は何かの可能性と何かをもう
一度信じ託せるものに通じていると思います。

これはオバマが広島を訪れ安倍がパールハーバーを訪れた
ように勝者と敗者でできることがきっとあり、それは今後
またこのようなことが繰り返えされないように必要なこと
なのだと思います。

最近気になったのは、中国では日本と違い老舗というものが
ないということです。

日本には1000年以上続く老舗とか親の職業をずっと受け継ぐと
いうことが当たり前にあるわけですが、伝統とか職人の技とか
連綿と継承することが当たり前な世界と西欧の文化や技術を
柔軟に吸収するという能力もあるわけです。これは逆に特異な
特性かもしれません。

中国は文化大革命という悲劇のせいで古いものは排除すると
思っていましたが過去のものをすべて否定することから
現代を作った彼らに日本人と同じ文化に対する思い入れや
芸術に対するこころといったものが同じように理解され
尊ばれるとは思えません。

この日本人が持つ特性ともいえる礼節や美に対するこころとか
自然を愛するこころなどこそが世界遺産のようなもので、いくら
金や物質的に豊になったところで日本の様にはなれないのは
こころにそういう高潔な覚悟と審美的なこころがないと文化も
成り立たないのです。

そういう特異性を私は最近目立つタカ派的なものに結び付けて
はならないと思います。

歴史的に否定した教育勅語の教材復活とか銃剣道の採用とか
敵基地攻撃能力とかとかく物騒なニュースに何か勘違いして
いる人たちが増えているような気がしてなりません。

ニシムイの人と米兵士が理解しあえたように同じ目線を持つ
努力が必要であり、それこそがお互いの棘を取り去ることに
繋がるのだと確信します。

日本人が特異な民族と理解し優越を感じるのでなく、同じ
視線と文化を持ってもらうことこそが侵略とか格差とか
ポピュリズムから脱却できるのではと思います。
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今月の季節のブレンドは

2017年04月01日 18時26分18秒 | 珈琲
辺りの山々はいまだ雪景色の秩父
です。

冷たい風が吹き抜けまるで冬の様ですが、
それでも春は近づいています。

いつもなら暖かい日と寒い日が交互に訪れ
春の足音を感じたものでした。

そんな暖かい日も全くなく久しぶりに降った
雨は夜遅く雪になり、朝になって雪景色を
見るというめったにない遅い春のようです。

我が家では杏子が咲き、沈丁花が香っています。

外観は冬のままでも、春は実はすぐ近くにいます。

そんな今を思って今月のブレンド『太陽マジック』
を発売します。

先月の『早春賦』を飲んでいただいた人には
その流れがよくわかると思います。

その違いを感じた時により季節感と満足を味わって
いただけるものと思います。

名前はもちろんイーハトーボ農学校の春からとりました。


その詩を読んでから飲むのも一興かも。
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