八王子市散田町在住のスポーツ好き親父の戯言!

八王子市の学童野球チーム散田ドラゴンズ元管理人(2007年3月~2016年2月)のブログです。

中村計著『佐賀北の夏 甲子園市場最大の逆転劇』(新潮文庫)

2011年09月21日 21時35分11秒 | プロ野球・高校野球

4年前の夏、佐賀北と広陵の決勝戦は見たはずですが(「筋書きのないドラマ…高校野球」)、恥ずかしながら試合展開についてはよく覚えていません。予想外に勝ち進み資金が足りなくなって困っているということや、公立らしい質素な施設などが報道され、そちらの方がよく記憶に残っています。桑田・清原のKKコンビ、松井の5敬遠、松坂対PL学園の死闘、斎藤佑樹対田中将大の死闘など、どうしても素人は絶対的なエースや四番に目がいってしまいます。

 

しかし、野球はやっぱりチームスポーツだということを思い知らせてくれる一冊ですし、世間が言っていたような「公立高校ならではの伸び伸び野球」なんかではないことも、かと言って、優勝がまぐれなんかではなかったこともよく分かる一冊です。そして、ここに書いてあることが正解とは言いませんが、指導者にも、高校球児にも非常に得るところのある一冊ではないかとも思います。

 

百崎監督は、私が思っていたイメージとはまったく違いました。私も大方の世間の人と同様、あまり厳しいことは言わず、自主性に任せる温厚な監督だと思っていました。ところが、豈はからんや、厳しく(を通り越して怖い存在で)、生徒に隙は見せず、でも冗談は好きで、生徒との個人日誌を通じて徹底的にコミュニケーションをするという、豪放磊落なタイプが多そうな高校野球監督の中では、異色なタイプのように感じます。もっと言えば、子どもには分かりづらいなかなか複雑な性格なようです。

 

でも、野球が誰よりも好きなことは分かります。先生としても優秀なようですが、一刻も早く練習にいくために、最後のホームルームはカットしたりと、野球に注ぐ情熱は職業監督と変わらないか、それ以上です。それと、生意気な問題児タイプも嫌いじゃないクールな百崎監督と素直で従順なタイプが好きな熱血派の吉富部長の組み合わせも良かったのかもしれません

 

いずれにしても、いくつかの条件が重なった幸運があったかもしれませんが、そうした幸運を招き寄せるのも、決して偶然ではなく、優勝という結果も決して偶然やまぐれではないということをこの本は教えてくれます。佐賀北は公立ながらスポーツ推薦枠もあり、世間で思っているような公立高校のイメージと違うことや、過密日程の試合運営を円滑にするために、甲子園ではストライクゾーンが明らかに広いということ、決勝では佐賀北の明らかなホーム状態になり、主審の判定が佐賀北寄りになっていたという見方があったことなどの裏話も書かれていますが、著者が言っているように、それで佐賀北の優勝の価値が下がるとは、私も思いません。

 

やはり、野球って人間がやるもので、だから面白く、正解もなく、これで終わりっていうものもないのだということがよく分かります。以下、読んでいて、本に折り目をつけたところの要約です。

 

「運は宿命的なものだと思っていたが、全員でひたむきに戦う姿勢を見せれば、ベンチも、スタンドの空気も変わり、相手チームもミスをしたりする」

 

「試合に向かう時のルールは、寝てはいけない、騒いではいけない、音楽も漫画もダメ。弱い時は大抵行きのバスで騒いだり、寝ていたり、緊張感がないもの。そのかわり帰りのバスでは力を使い切って寝静まっていなければおかしい」

 

(帝京戦の勝因の一つに挙げられる、送球までの速さと正確さがプロ並みだった捕手市丸の言葉)「普段から持ち替えの練習はしていたし、わしづかみでもコントロールできる。肩の強さは関係ない。ベース上に放れば山なりでもアウトにできる」

 

「シーズン真っただ中で、ただでさえ練習時間も短いのに、毎日1時間近くトレーニングに時間を費やすのはセオリーに反するように見えるが、夏は体力勝負になるため、選手に不満があっても徹底してトレーニングを行った(それが甲子園での再試合や連戦の中でも戦えた要因)」

 

(日誌で不満をぶつけた選手に対する監督のコメント)「サインに不満を持つより、サインをしっかりこなす力をつけよ。何回も言う、我々は可能性を求めて様々な試みをしている。選手は監督、部長を信じて動く。その繰り返しから揺るぎない関係、攻撃ができる」

 

(監督と他校で監督の実績がある部長との関係について)「吉富が赴任すると決まった時に活かす方法を考え抜き、出した結論が任せるということだった。任せた以上は、ん?と思っても任せ、しっかりコミュニケーションをとる。頻繁にコミュニケーションをとっていると、翌日意見が逆になることもある。おかげで独りよがりになることがなくなった。」

 

「優勝で話題になって野球日誌を真似しようとする人もいるが、中途半端な気持ちだったらやめた方がいい。ありきたりなコメントしか書かなくなったら、向こうも手を抜く」

 

(かつて野球でも勉強でも非の打ちどころのなかった教え子が自殺してしまった時から)「選手の投票で尊敬できる人を選び、その選手を無条件でベンチ入りさせる新しい制度を設けた。野球でも、勉強でも、なんでもいいからがんばっていると思える人を選ばせ、亡くなった生徒が最後につけていた13番をつける決まりにした」

「その子のことがあるまで、きちんとした子を育てようとし、言うことに従わない子は認めなかった。しかし、ノートで監督を批判したり、ふて腐れて練習途中で帰ったりすることは、ムカっとするけど大したことではない。何も問題がないからいいわけじゃない」

 

(期待されながら秋、春と負け、夏の前哨戦となる市長旗大会を前に)「負けたら、三年生はユニフォームを脱げと厳命した。自分が監督になってから、その下でやりたいと入ってきた選手たちに厳しくしているようで、どこかで妥協していた。だからもう妥協は一切しないと決めた。かわいそうだなと思ったら見ないようにすればいい。信頼を失ってもいい、やれといったらやれと。鬼になろうと決めた。そこから甲子園まで一度も負けなかった。あれで選手も、監督も変わった」

 

「監督は口を出さずに自主性を尊重しているなどと言われたが、そんなことはきれいごとで、徹底して管理してチームを作ってきた。楽しんでやるなんて好きじゃない。練習中だって、殺気立って、死ぬ気でやれって言う。公式戦ではガミガミ言っても意味はないので、ニコニコしているが、そこだけ見ても分からない」

(部長の吉富が)「百崎先生はいろいろ制限する囲いは作る。でも、その中で自由にさせる。だから、うちは怒る回数は少ないけど、緊張感があり、統率がとれる。監督が常にガミガミいっているチームは怖くない」

 

(秋、春と勝てなかった頃)「ずっと見ていてくれている人から、昔はもっと相手にプレッシャーをかける野球をしていた、と言われて、ヒントになった。神埼の時は選手がいないから、役割分担をするしかなかった。佐賀北は選手層が厚いから、知らず知らずにスケールの大きなチームにと野球が変わっていた。役割分担をしっかりして、相手がバントをするとわかっていてもしつこくやるのが佐賀北の野球だった」

 

「佐賀北の取材では、高校野球にありがちな『監督を胴上げしたい』という種類の空気を感じなかった。百﨑は常々言う。この監督のためにってチームが羨ましくもあるが、俺のガラでもないし、無理だと開き直っている」

 

これが正しいとか、正しくないとかではなく、野球や生徒たちと真摯に向き合い、悩み、苦闘してきた一人の人間の記録として価値があると思います

 

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やっと一息。

2011年09月21日 18時24分58秒 | 管理人のこと、雑感

私の記憶の中ではもっともすごい台風だと書きましたが、あながち記憶違いでもなかったようです。「非常に強い勢力の台風」が上陸するのは18年ぶり(その時は当然生まれていました)、そして非常に強い勢力の台風が東日本に上陸するのは、1951年の観測開始以来初めてだそうです。

 

先ほど書いた時よりもどんどん雨風とも凄まじくなり、八王子の最大瞬間風速31.8mと言っているそばから、すぐに36.6mとなり、最終的には43.1mとなりました。あな恐ろし、いと凄まじき、という言葉がぴったりな感じでした。

 

16時から17時くらいが一番ひどかったでしょうか。各局の台風15号関連のニュースをずっとはしごしていましたが、各地の中継で「とてもすごい横殴りの雨です!」とやっている画面を見ながら、「絶対八王子の方がすごいって…」と呟いていました。しかし、全然笑いごとではありませんでした。いや、本当にすごかったです。街路樹が折れそうだとも書きましたが、八王子のどこかで木が折れて住宅にぶつかったとニュースでやっていました。いやはや。

 

また、浅川も氾濫警戒水位を超えているとニュースでやっていました。その影響で娘の電車も減速運転で遅れていましたが、今はいつもの高尾駅から先だけでなく、立川~高尾間も運転見合わせになっています。風に弱い武蔵野線はもちろんのこと、青梅線、総武中央線、山手線、京葉線などのJRや、京王線、西武線、東急線、小田急線など私鉄も軒並み運転見合わせとなってしまいました。学校や企業も早々に児童や従業員を帰宅させる動きになりましたが、震災時と同様、肝心の交通網が完全にストップし、行き場を失った人たちが、駅やバスターミナルに溢れる様子が中継されていました。震災と違って、あと1時間もすればダイヤは回復すると思いますが、それでも滅多にある事態ではないですね。

 

17時30分を過ぎると、まだ雨風は激しいものの、明らかに峠を越し、18時を過ぎる頃には普通の雨になりました。それでも、山間部に降った雨が川に流れ込んでくるのはこれからでしょうから、まだまだ油断は禁物ですね。

 

しかし、本当にすごかったです。

 

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台風15号!

2011年09月21日 15時13分02秒 | 管理人のこと、雑感

今日は休みですが、当然のことながらジョギングには出られません。少し小降りになった隙に、本当に家のまわりを一回りクロの散歩に行き、休校ではなく、「自主判断で来られる人は来なさい」()という指示の娘は学校に行くというので、車で送っていきました。そして、昨日から熱を出している倅を医者に診てもらいにいき、夕方がピークとのことで、昼前に買い物に行き、午前中に用事をすべて済ませました

 

そして、昼食をとると娘から迎えに来てくれとのメール。何があっても休校しない方針らしいですが、さすがに途中で終わりになったそうです。14時過ぎに駅に娘を迎えに行きましたが、ちょうど同じ頃に浜松付近に上陸したそうです。そして、家に帰ってきてから、猛烈な雨風になってきました。賢明な判断でした。

 

久々に感じる猛烈な台風です。というか、記憶にある中でも最も激しい部類かもしれません。高台になっているこの辺りは、水が出ることはないでしょうが、本当にものすごい暴風雨で、何か物が飛んできて、ガラスでも割れやしないかと心配になります。窓から見えるバス通りの街路樹も、右へ左へ、猛烈に揺れていて、今にも折れそうなほどです。家も地震でもないのに、地鳴りのように揺れています。八王子で最大瞬間風速31.8mを記録したそうです…。恐るべし、台風。

 

あと、2~3時間のことでしょうけど、何もないことを祈ります。

 

 

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