熊本市中央区水前寺公園21-16に当初は新屋敷にあったが昭和47年に移築された夏目漱石の「熊本第三旧居(大江旧宅)」がある。この家から小説「草枕」の題材になった玉名市小天への旅行に出発した曰くの家といわれている。夏目漱石は明治29年(1896)、旧制第五高等学校(現在の熊本大学)の英語教師として愛媛県松山市から熊本に赴任し熊本での暮らしが始まった。漱石は明治29年(1896)~明治33年(1900)までの4年3ヶ月の間に6回引っ越している。漱石が最初に住み、鏡子夫人と結婚式を挙げた「第1旧居」(下通町103の通称光琳寺の家)、「第2旧居」(合羽町の家)、1年住んだ後に引っ越したのがここ水前寺にある「第3旧居」(大江村の家)である。次に住んだのが白川に近い第4旧居」(井川淵町の家)、漱石夫妻が一番気に入り、熊本で最も長い1年8か月暮らした家が「第5旧居」(内坪井町の家)、最後に住んだ「第6旧居」(北千反畑町の家)では熊本最後の3か月を暮らした。漱石は東京やロンドンでも引っ越しておりどうやら「引っ越し魔」であったようだ。漱石は熊本滞在中に度々水前寺公園を訪れ「しめ縄や春の水湧く水前寺」という言葉も残している。(1909)