作者が自分の父井上光晴(白木篤郎)と瀬戸内晴美・寂聴(長内みはる・寂光)の関係、それを見つめる母(笙子)を描いた小説。
帯にも「小説家の父、美しい母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、〈書くこと〉と情愛によって貫かれた三人の〈特別な関係〉を長女である著者が描き切る、正真正銘の問題作」とうたわれ、実話だというのが売りになっています。両親とも没後、瀬戸内寂聴の承諾を得て、インタビューの上で書いたということですが、こういうことまで書いてしまえるというのが、作家なんですね。こうやって書くのも愛と言えるのでしょう。
瀬戸内寂聴は、何でも書いていいと言って話したが書かれなかったことも少なくないと話しています(百歳 いつまでも書いていたい 瀬戸内寂聴という生き方)が、作者が瀬戸内寂聴から聞いた中でも井上光晴がソ連の作家同盟の招待で訪ソしたときに口説き落とした女が来日してきたのを瀬戸内晴美を連れて見送りに行って渡されたプレゼントが使用済みのズロースだったというエピソード(113~119ページ)を書いているのがすごい。父親にこんなに厳しくなれるのかと思いました。もっとも、その後ももっと酷い話が出てくるので、作者からしたら、実態を知ればその程度は厳しいうちに入らないと言いたいかもしれませんが。

井上荒野 朝日新聞出版 2019年2月28日発行
「小説トリッパー」連載
帯にも「小説家の父、美しい母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、〈書くこと〉と情愛によって貫かれた三人の〈特別な関係〉を長女である著者が描き切る、正真正銘の問題作」とうたわれ、実話だというのが売りになっています。両親とも没後、瀬戸内寂聴の承諾を得て、インタビューの上で書いたということですが、こういうことまで書いてしまえるというのが、作家なんですね。こうやって書くのも愛と言えるのでしょう。
瀬戸内寂聴は、何でも書いていいと言って話したが書かれなかったことも少なくないと話しています(百歳 いつまでも書いていたい 瀬戸内寂聴という生き方)が、作者が瀬戸内寂聴から聞いた中でも井上光晴がソ連の作家同盟の招待で訪ソしたときに口説き落とした女が来日してきたのを瀬戸内晴美を連れて見送りに行って渡されたプレゼントが使用済みのズロースだったというエピソード(113~119ページ)を書いているのがすごい。父親にこんなに厳しくなれるのかと思いました。もっとも、その後ももっと酷い話が出てくるので、作者からしたら、実態を知ればその程度は厳しいうちに入らないと言いたいかもしれませんが。

井上荒野 朝日新聞出版 2019年2月28日発行
「小説トリッパー」連載