伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

「隠しアイテム」で読み解く春画入門

2022-06-10 21:27:36 | 人文・社会科学系
 江戸時代の春画の中に描き込まれている道具や食べ物、動物、着物等の文様などから、描かれているシチュエーションや絵師の狙いを解説し、併せて江戸時代の生活・風俗等を紹介する本。
 もっとも、春画そのものに描き込まれた物等の解説は、「はじめに」で取り上げているものを除けば詳細ではなく、春画を題材に風俗、世相を紹介するという趣が強くなっています。
 江戸時代の婦女には「四徳」:貞操を守る「徳」、口数を控える「言」、裁縫上手の「功」、容姿を整える「容」が求められていたけれども、著者は「いつの時代の女性も、四徳のすべてを身につけている者など、ほとんどいないでしょう。一つぐらい欠けていたほうが、女性としては魅力的です」と述べています(87ページ)。春画の世界では「徳」の欠ける場面が次々出てきていますが…
 「江戸中期には煙草を吸わない者は百人のうちに二、三人ほどしかいなかったそうです」(88ページ)、「江戸時代は煙草の吸引は無害とされ、子供も煙草を好んで吸ったようです」(91ページ)っていうのはビックリでした。
 男女の(男男もありますが)交合がおおらかに微笑ましく描かれていますが、大手出版社がこれだけモロの描写をしたものを販売しているところ、時代は変わったなと思います(もちろん、ネットではそれこそ絵レベルじゃなくてモロの動画が流れているのですから問題にもならないと思うのですが)。その昔、40年くらい前ですが、バイロス画集の出版に関連して生田耕作先生が京都大学を去られたことを思い起こすと隔世の感というか、胸にさまざまなものが去来します。


鈴木堅弘 集英社インターナショナル新書 2022年2月12日発行
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