伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

企業法務のWHYとHOW

2022-06-28 21:14:00 | 実用書・ビジネス書
 花王株式会社の法務・ガバナンス部門統括担当の執行役員である著者が、法務部の仕事とそのあり方、法務部員の心がけ等を論じた本。
 ふつうの発想/感覚では、会社では利益を生み出す製造・販売(営業)あるいは企画などが本体業務で、法務部はそのサポートというか、現場からはむしろ目障りだったり足かせと感じられる部署だろうと思うのですが、まえがきから「法務部が企業価値向上のために経営のど真ん中に居座る存在になるべき」と述べているところが、著者の/この本の真骨頂なのでしょう。
 一番分厚い第4章の「いま取り組むべき課題」はいかにも海外に子会社のある大企業ならではのあるべき論で、もちろんサプライチェーン全体のサステナビリティ(海外の調達先などでの児童労働等の人権侵害等をさせない)の推進に努めていただくのはけっこうなことですけど、私のような労働者側の弁護士の経験上、口先でコンプライアンスとかきれいごとをいいながら自社の労働者に対しては労働基準法・労働安全衛生法等の労働関係法規を遵守しない会社が多いこともあり、そういうところはなんだかなぁと思います。第2章の「法務部の戦略」や第6章の「法務部員に必要なスキル、能力、心構え」あたりが読みどころかなと思いました。
 実は、タイトルから、会社側の弁護士が日頃会社とやりとりしていることを書いた本かと思って手に取りました。法務部と社内のクライアント(相談に来る各部署)の関係は、両者がともに同じ会社に属し、縄張りや部署の利害を超えて会社の利益を最優先に考えることでスタンスが決まる(4~12ページ)という点で、会社と(顧問)弁護士の関係とは違うのだということを改めて考えました。弁護士の場合、依頼者の利益を考えその実現に向けた方策を考えますが、立場としては独立の法律家としてであって、依頼者と同じ組織に属していたり依頼者そのものではあり得ないしあってはいけないということが、利点でもありまた難しい点でもあるわけです。


竹安将 商事法務 2022年3月18日発行
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