伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

外国人労働相談最前線

2022-06-25 23:45:43 | 人文・社会科学系
 NPO法人POSSEが2019年4月に立ち上げた外国人労働サポートセンターでの外国人労働者からの相談と支援活動の経験を元に日本での外国人労働者の実情とその改善のためになすべきことを論じた本。
 行政書士事務所が、そこで働く外国人労働者からパスポートと卒業証明書を在留資格更新のためとして預かり更新手続き後も返さず、パスポート管理契約により保管しているとしてユニオンとの団体交渉でも返還を拒否し、そこまででも驚きですが、横浜地裁に2020年1月に提訴した裁判が2022年3月現在なお係属中(12~17ページ)というのは、なんて言ったらいいんだろう。こういう悪辣な企業を法律家が支え、生きながらえさせ、裁判を長引かせているというのも嘆かわしいところです。
 企業への不満を述べた外国人技能実習生を受け入れ先から追い出そうとし罵倒する監理団体(技能実習生を受け入れ先企業に送り出し、受け入れ先企業から毎月監理費を受け取る、国が許可する「非営利」法人)に対し学生ボランティアが中心となって団体事務所を訪れ、事務所前や駅前で情宣をして行政を動かした(監理団体許可取消等)というエピソード(42~45ページ)は、心強いものを感じます。近年、使用者側の弁護士が会社前での情宣についても裁判所の仮処分を駆使して排除を強めてていますが(前は社長等の自宅前の情宣以外はそれほどやられなかったのですが)…労働者側の健闘を期待します。
 著者は、その担い手となっている1995年以降生まれの「Z世代」と呼ばれる若者を「ジェネレーションレフト」と呼んでいます(45~46ページ)。日本の若い世代は、むしろ自民党支持者が多数派を占めていると見るのが昨今の通常の考えかと思いますが、希望を込めて、そう見ておきたい/であればいいなぁというところでしょうか。


今野晴貴、岩橋誠 岩波ブックレット 2022年4月5日発行
コメント
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