1974年以来概ね6年おきに実施されている青少年の性行動全国調査のデータを中心とするアンケート調査の分析と関連する論考を組み合わせて若者の性行動の変化・推移とそれをめぐる社会側の受け止め等を論じた本。
前半の調査データの分析は、主として統計学的な処理と分析によって論じられています。その部分の執筆担当でない編者が「おわりに」で触れているように(240ページ)、「今までに性的なことに関心をもった経験があるか」という問いにイエスと回答する割合が1999年調査以来減り続けているということを、単純に若者の性に対する関心の低下、「草食化」と決めつけてよいのか、つまりこの質問に対する回答者の受け止め、「性的なこと」の意味内容が時代を通じて同じなのかといった、統計処理をする前に考えるべきことがきちんと検討されているのかの方に、私は疑問を覚え、統計学の知識がない者には正しいのかどうか判断できない技術的な分析には今ひとつ関心を持てませんでした。
デートDV被害についての質問で、高校生と大学生を合わせ、被害経験ありの回答が、2011年調査で女子の24.6%、男子の20.9%、2017年調査で女子の21.3%、男子の17.9%とされています(73~74ページ)。この分析を担当した執筆者は、一般成人を対象とした調査や10代の若者を対象とした調査では、男女の加害経験や被害経験が同程度になりやすいとも述べています(71ページ)。本当ですか? 回答者がDVとか「被害」をどういうものと受け止めて回答しているのか、ちゃんと確認なり検討しないでいいんでしょうか。この回答を統計的に分析すれば真実・実態が明らかになるんでしょうか。
学校の委託を受けて性教育の出前授業をしている人がコンドームの模擬装着をしたら、生徒の一人から「コンドームなんか見たくない」「スクールセクハラだ」と言われたという話(165ページ)。こういう風潮、こういう声が出たらそれに過剰に反応する風潮、とても嘆かわしいと思う。
そういったことなど、いろいろと考えさせられる本でした。

林雄亮、石川由香里、加藤秀一編 勁草書房 2022年3月25日発行
前半の調査データの分析は、主として統計学的な処理と分析によって論じられています。その部分の執筆担当でない編者が「おわりに」で触れているように(240ページ)、「今までに性的なことに関心をもった経験があるか」という問いにイエスと回答する割合が1999年調査以来減り続けているということを、単純に若者の性に対する関心の低下、「草食化」と決めつけてよいのか、つまりこの質問に対する回答者の受け止め、「性的なこと」の意味内容が時代を通じて同じなのかといった、統計処理をする前に考えるべきことがきちんと検討されているのかの方に、私は疑問を覚え、統計学の知識がない者には正しいのかどうか判断できない技術的な分析には今ひとつ関心を持てませんでした。
デートDV被害についての質問で、高校生と大学生を合わせ、被害経験ありの回答が、2011年調査で女子の24.6%、男子の20.9%、2017年調査で女子の21.3%、男子の17.9%とされています(73~74ページ)。この分析を担当した執筆者は、一般成人を対象とした調査や10代の若者を対象とした調査では、男女の加害経験や被害経験が同程度になりやすいとも述べています(71ページ)。本当ですか? 回答者がDVとか「被害」をどういうものと受け止めて回答しているのか、ちゃんと確認なり検討しないでいいんでしょうか。この回答を統計的に分析すれば真実・実態が明らかになるんでしょうか。
学校の委託を受けて性教育の出前授業をしている人がコンドームの模擬装着をしたら、生徒の一人から「コンドームなんか見たくない」「スクールセクハラだ」と言われたという話(165ページ)。こういう風潮、こういう声が出たらそれに過剰に反応する風潮、とても嘆かわしいと思う。
そういったことなど、いろいろと考えさせられる本でした。

林雄亮、石川由香里、加藤秀一編 勁草書房 2022年3月25日発行