認知症になった89歳の著者が、老いに向き合い、老いても夢を持ち好奇心を持ち志を持って生きていこうと語る本。
人生・生活の中での時間の過ごし方について、「濃密な時間」として、青春時代に山登りに夢中になっていた頃、新聞の届かない穂高中腹の涸沢テント村から「朝日新聞」連載の「氷壁」を早く読みたいがために毎朝朝食後に2時間かけて麓まで降りて「氷壁」を読み4時間かけてテント村に戻ってくる友人がいたことを紹介して、こうした時間は濃密であると述べています(160~161ページ)。80前後の頃は「昭和」的な喫茶店で過ごす時間が濃密と感じられたとも(161~162ページ)。なるほどと思いますが、他方で、著者は「もっとも時間を薄く感じやすいのは『待ち時間』ではないかと思う」(162ページ)としています。積極的に味わいに行くということでないにしても、降って湧いた待ち時間も、使いよう、気持ちの持ちようでは、濃密な時間にできるかもしれません。著者の言う「効率のいい時間」とは別種の「濃密な時間」を大切にしたいという心持ちは、これから意識していたいなと思います。
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森村誠一 角川文化振興財団 2022年3月23日発行
人生・生活の中での時間の過ごし方について、「濃密な時間」として、青春時代に山登りに夢中になっていた頃、新聞の届かない穂高中腹の涸沢テント村から「朝日新聞」連載の「氷壁」を早く読みたいがために毎朝朝食後に2時間かけて麓まで降りて「氷壁」を読み4時間かけてテント村に戻ってくる友人がいたことを紹介して、こうした時間は濃密であると述べています(160~161ページ)。80前後の頃は「昭和」的な喫茶店で過ごす時間が濃密と感じられたとも(161~162ページ)。なるほどと思いますが、他方で、著者は「もっとも時間を薄く感じやすいのは『待ち時間』ではないかと思う」(162ページ)としています。積極的に味わいに行くということでないにしても、降って湧いた待ち時間も、使いよう、気持ちの持ちようでは、濃密な時間にできるかもしれません。著者の言う「効率のいい時間」とは別種の「濃密な時間」を大切にしたいという心持ちは、これから意識していたいなと思います。
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森村誠一 角川文化振興財団 2022年3月23日発行