とある町で先祖代々引き継がれた薬屋を10年余り前に父親が死んで以来一人で営んできた薬剤師の平山タバサの下に、過去を逃れてその町に流れ着いた語り手の山崎由美が転がり込んだところから、深くつながっているように感じられる町の人たち、タバサが調剤する怪しげな薬、幻影とも実在とも判別できない目の前に現れる人たちなどに翻弄されながら、由美が過ごす日常とタバサや町の人たちとの関係を夢・幻想とうつつを行き来しながら描いた小説。
タバサも由美も、その来歴がわかったようなわからないような、タバサの薬の正体も、登場する幻影のような人々とこの町の構造も、解明されたようなやっぱりわからないような、はっきりさせたい読者にはもやもや感の残る、想像力を働かせたい読者には自由に解釈する幅のある、そういう作品かなと思います。
もっとも、前半と後半を隔てる、由美との関係・庭の池の扱いをめぐるタバサの2つの決意については、タバサの人柄への理解も含め、もう少し説明というか、気持ちの変化の背景事情の描き込みが欲しかったように思います。私の読み方が浅いということかも知れませんが。
東直子 新潮社 2009年5月20日発行
「波」連載
タバサも由美も、その来歴がわかったようなわからないような、タバサの薬の正体も、登場する幻影のような人々とこの町の構造も、解明されたようなやっぱりわからないような、はっきりさせたい読者にはもやもや感の残る、想像力を働かせたい読者には自由に解釈する幅のある、そういう作品かなと思います。
もっとも、前半と後半を隔てる、由美との関係・庭の池の扱いをめぐるタバサの2つの決意については、タバサの人柄への理解も含め、もう少し説明というか、気持ちの変化の背景事情の描き込みが欲しかったように思います。私の読み方が浅いということかも知れませんが。
東直子 新潮社 2009年5月20日発行
「波」連載