幼なじみで今はラグビー部のチームメイトの高坂宏樹に密かに恋愛感情と欲情を持ち続けるが、宏樹が死んだ兄の恋人だった葉山響子と交際を始めのめり込んでいったために宏樹を独占できなくなったことに不満を持ち続ける高校3年生の鷺沢隆之と、37歳の写真家との関係を清算したいと思いつつも吹っ切れずにいて、隆之の写真を撮り続け、問題行動をして度々停学になる写真部長工藤都が、互いの状況と心情を告白して、困難な状況に悩み立ち向かう青春小説。
1994年に出版された作品の新装文庫版ですが、解説ではその訳を「この物語が、時代を超えて愛される魅力に満ちているだけでなく、今読まれるべきテーマを背負っているからだろう」としています(251ページ)。宏樹に向ける隆之の思いをそう言っているのかもしれませんが、1980年代にはもうBL(ボーイズラブ)はブーム化していたのですし、それが禁断の愛で打ち明けられない(カミングアウトできない)というのでは、もう今の時代に合っているように思えませんし、都と写真家北崎の関係など古くさく思えます。
当事者の切ない気持ちは、素直に入れますが、今読まれるべきと力むものではない感じがします。
村山由佳 集英社文庫 2022年10月25日発行(単行本は1994年7月、文庫初版は1997年6月)
「小説すばる」連載
1994年に出版された作品の新装文庫版ですが、解説ではその訳を「この物語が、時代を超えて愛される魅力に満ちているだけでなく、今読まれるべきテーマを背負っているからだろう」としています(251ページ)。宏樹に向ける隆之の思いをそう言っているのかもしれませんが、1980年代にはもうBL(ボーイズラブ)はブーム化していたのですし、それが禁断の愛で打ち明けられない(カミングアウトできない)というのでは、もう今の時代に合っているように思えませんし、都と写真家北崎の関係など古くさく思えます。
当事者の切ない気持ちは、素直に入れますが、今読まれるべきと力むものではない感じがします。
村山由佳 集英社文庫 2022年10月25日発行(単行本は1994年7月、文庫初版は1997年6月)
「小説すばる」連載