伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ファーストクラッシュ

2023-01-05 23:24:01 | 小説
 父親の神戸の愛人が死んで孤児となった小学6年生の少年新堂力を父親が引き取って連れてきたために同居することとなった高見澤家の3姉妹、ひねこびた口の悪い次女咲也、お嬢様然として上品な長女麗子、活発で遠慮ない三女薫子が、それぞれに力に惹かれ思いを寄せる様を、それぞれの立場からの3部立てで描いた小説。
 イケメンで、立場を弁えて控えめに振る舞っているものの、さして力量も魅力もあるように感じられない少年に、死んだ愛人と夫の生活に嫉妬の炎を燃やす母親も含めて、女たちがことごとく魅了されていくというのは、冴えないおっさんの読者としては、何だこれという思いを持ちます。神戸に愛人を作って通っていた、その愛人の連れ子を妻の元に迎え入れる無神経な父親が存在感がなく顧みられないのは自業自得としても。
 母親が力に向ける視線を「他者の心の内で起こった感情の揺れが表情や仕草に浮き出るのを目撃するのって、その辺のドラマよりはるかに私をわくわくさせる」(33~34ページ)、「この種のことって、どんな遊びよりもおもしろい」(33ページ)という小学生の咲也。女子小学生ってこんなにおませというか大人びた興味を持っていたのかと、ちょっとビックリ/ドッキリ/ぞくりとしました。


山田詠美 文春文庫 2022年10月10日発行(単行本は2019年10月)
「文學界」連載
コメント
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