コウモリのような翼を持ち顔が削られて目鼻口がなく手足が異様に長く2メートルあまりの灰色の体を持つ「天使」が空を舞い漂い、2人以上を死なせた者を炎で焼き尽くしながら地面へと(地獄へとと解されている)引きずり込む、故意であれ過失であれ自らの手で2人を死なせながら地獄へ堕ちることを避けることは、医師が手術で患者を助けられなかった場合以外には、あり得なくなった世界で、天使愛好家の大富豪に天使が集う離島「常世島」に招かれた探偵青岸焦が、招かれた客たちが次々と殺害される事件に遭遇してその謎を解くというミステリー。
2人殺すと直ちに天使に葬られるという事態になって、殺人が劇的に減るかというと、必ずしもそうはならず、死刑が廃止され(死刑制度を維持しようにも執行人のなり手がいない)1人は殺しても天使は手を下さないということから1人は殺してもいい、殺す権利を持っているという風潮が生じ、また地獄に堕ちることになるなら少しでも多くを巻き添いにしてやるという者が現れて爆弾や機関銃等による大量殺人が横行するという、人間の性についての悲観的でシニカルな見方、そういった大量殺人によって4人のスタッフを一気に失い意欲を失って探偵の存在意義を疑い続ける青岸のやさぐれ方に、作者のあるいは作品のクセが感じられます。
そういった特殊な設定と青岸の心情部分でのこだわりに引っ張られますが、最後には探偵がみんなを集めて謎解きをするという探偵ものミステリーの王道に至り、クラシカルな読後感を持ちました。
斜線堂有紀 ハヤカワ文庫 2022年11月25日発行(単行本は2020年8月)
2人殺すと直ちに天使に葬られるという事態になって、殺人が劇的に減るかというと、必ずしもそうはならず、死刑が廃止され(死刑制度を維持しようにも執行人のなり手がいない)1人は殺しても天使は手を下さないということから1人は殺してもいい、殺す権利を持っているという風潮が生じ、また地獄に堕ちることになるなら少しでも多くを巻き添いにしてやるという者が現れて爆弾や機関銃等による大量殺人が横行するという、人間の性についての悲観的でシニカルな見方、そういった大量殺人によって4人のスタッフを一気に失い意欲を失って探偵の存在意義を疑い続ける青岸のやさぐれ方に、作者のあるいは作品のクセが感じられます。
そういった特殊な設定と青岸の心情部分でのこだわりに引っ張られますが、最後には探偵がみんなを集めて謎解きをするという探偵ものミステリーの王道に至り、クラシカルな読後感を持ちました。
斜線堂有紀 ハヤカワ文庫 2022年11月25日発行(単行本は2020年8月)