伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

地震と火山の観測史

2023-01-08 22:22:20 | 自然科学・工学系
 東大地震研究所で地震予知・噴火予知の研究、南極観測等に従事してきた著者が、研究の基礎になる地震等の観測の歴史について解説した本。
 歴史と名が付くものはそういう整理と語りがなされるものとも言えますが、地震の観測や地震予知についての「人」と「制度」「組織体制」についての説明、これは誰の功績だとか、いつどこどこにどういう組織が作られ、それがどのように変わっていったかという話が中心になっています。その中で誰がどういう病気で亡くなったとか、誰と誰は仲が悪かったとかいう話が書かれていて、それは業界の裏話として貴重な情報なのかもしれませんが、部外者の読者にはあまり興味が持てない話題じゃないかと思います。タイトルというか、このテーマでは、観測技術の発展、観測器のしくみやその観測器で何をどのように測定できる(できた)のか、そのデータをどのように用いて何を把握するのか、昔はどこまでが限界でそれがどのような技術の変化でどうなったのか、そういう歴史の方に重点を置いて書いて欲しかったと思います(そう期待して読み始めたんですけど)。
 著者の業界での位置・スタンスは私にはわかりませんが、先人・恩師は持ち上げつつ、同時代の人には批判が多く書かれています。特に「東海地震説発表者」に対してはかなり執念深く批判を続けていて、何か恨みがあるのかと思ってしまいます。そういう点でも通常の学術書とは違った趣の本でした。


神沼克伊 丸善出版 2022年10月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする