中国の兵法・戦略の古典「孫子」について解説した本。
「孫子」の著者と成立事情、元にすべきテキストなどから検討がなされ、考えてみれば2000年以上前の文献が完全な形で残っているはずもなく、いろいろなものが組み合わされたり、後年の解釈によって修正されていたりということはありうるわけです。「九変篇」と題され、本文中にも九変と挙げられているのに5つしか事例が挙げられていなくて、研究者はいろいろ悩み他のところと組み合わせるなどの解決を図っているということも紹介されています(174~180ページ)。本来のものはまた別だったかもということは意識した方がいいのでしょうね。
「孫子」は、哲学的抽象的でその分応用が利く記述であるのを、三国時代魏の曹操が注釈を施して、より具体的な戦術に落とし込み、また現実に戦争をするときを前提とした解釈を施しており、この本は基本的にその曹操の解釈に基づいて解説しているとのことです。著者は、曹操が付けた注釈により「孫子」に深みが出て、また文学的に美しくなっていると評価しています。従わない者に苛烈な制裁を与え、兵を死地に追い込んで逃げられないが故に奮戦させて勝利するなど、諸処に見られる冷酷さは元からあるものか曹操が解釈して付したものかはわかりませんが、そういうことも考えることで、曹操像についてもまた改めて思いをはせる材料になりそうです。
渡邉義浩 中公新書 2022年11月25日発行
「孫子」の著者と成立事情、元にすべきテキストなどから検討がなされ、考えてみれば2000年以上前の文献が完全な形で残っているはずもなく、いろいろなものが組み合わされたり、後年の解釈によって修正されていたりということはありうるわけです。「九変篇」と題され、本文中にも九変と挙げられているのに5つしか事例が挙げられていなくて、研究者はいろいろ悩み他のところと組み合わせるなどの解決を図っているということも紹介されています(174~180ページ)。本来のものはまた別だったかもということは意識した方がいいのでしょうね。
「孫子」は、哲学的抽象的でその分応用が利く記述であるのを、三国時代魏の曹操が注釈を施して、より具体的な戦術に落とし込み、また現実に戦争をするときを前提とした解釈を施しており、この本は基本的にその曹操の解釈に基づいて解説しているとのことです。著者は、曹操が付けた注釈により「孫子」に深みが出て、また文学的に美しくなっていると評価しています。従わない者に苛烈な制裁を与え、兵を死地に追い込んで逃げられないが故に奮戦させて勝利するなど、諸処に見られる冷酷さは元からあるものか曹操が解釈して付したものかはわかりませんが、そういうことも考えることで、曹操像についてもまた改めて思いをはせる材料になりそうです。
渡邉義浩 中公新書 2022年11月25日発行