鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

Vol.25<中国論(16)>「米国または中国に併合されたら起きること」

2012年10月21日 | 政治見識のための政治学





長々と中国の歴史を見てきました。
米国とならんで日本が隣接する現代世界の二つの大国の一つの性格を知るためです。
米国については連載した『しあわせ社会の編成原理』でわかると思います。

日本はどちらにも関わりを持たないわけにはいきません。
といっても両国の体質は大きく異なっていますから、両方に均等に関わるわけにはいきません。

各々にどういうウエイトで、どういう風に関わっていったらいいか。





<中国の統治特性>

それを知るためにまず両者を比較しつつ各々の特質を浮上させてみましょう。

比較のためのキーワードは「思想言論の自由度」です。
中国という国は、人民の思想言論を統制して国家を運営していくという、統治方式を取っています。

(これに好悪の感情を伴わせてみるのは、本稿の趣旨に沿いません。
ただ冷静に一つの統治方式とみるのがいい。一国の統治方式は
相応の必要から出来てきている面が大きいのです)

米国は思想言論の自由を大原則にして国家を運転してきています。

この違いがもたらすものをまず一般的にみてみましょう。
そのために、このシリーズの冒頭に示した「マックス・ウェーバーの統治の二本柱」
を思い起こしましょう。

①政府に対して人民がもつ正当性の意識と
②政府のもつ物的暴力手段(警察と軍隊)

~がその二本でした。

一般的に言って、最初の①「人民が統治者にもつ正当意識」が大きいと
②「物的暴力手段行使が必要な局面」は少なくなります。

逆に①が小さいと②は大きくなります。
言うことを聞かないやつが潜在的に増えるからです。

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このメガネを通してみると、中国は後者になると思われます。

人間というものは、思いの自由とそれを表現する自由を本能的に求める動物です。
だから与えられる事重度が小さいと、人民が政府を正当と思う意識は小さくなります。

そうすると、政府は国民の一体性を保つために、
もう一つの柱である物的暴力手段を陰に陽に多用せざるをえなくなります。

共産党独裁で国家運営するにも強い物的な力が必要になるのです。
人民に一党独裁の政治思想を容認させるのは大変な仕事です。

統治者は政権確立時だけでなく普段にも「白色テロ」をすることが必要になる。
白色テロとは、知識人に自由な言論をさせないようにする脅しの行為です。
それは、当人だけでなく家族に対する脅しをも含みます。

思想統制のためには、まず知識人を黙らすことが必須になるのです。

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2010年にノーベル平和賞を受賞した劉暁波も抑圧の中で生きてきました。
中国在住の中国人として初のノーベル賞に輝いた彼は、その知らせを獄中で聞きました。
その間家族も迫害の中で暮らしたといいます。

思想統制には、そのほかにインパクトの強い政治思想宣伝(プロパガンダ)
を繰り返すことも必要になります。





<米国の統治特性>

対して米国は、思想言論の自由を原則とした国家運営の創始者です。
だから中国とは多くの面で対照的になります。

人間は自分の思いの自由を求めますから、これを容認する政権者には
正当意識を大きく持ちます。

すると、統治のために物的暴力手段を用いる必要度が小さくなる。
用いてもその手段は、思想統制国家と比べると、遙かに穏やかなものになります。
白色テロの必要性も小さく、
インパクトの強い政治思想プロパガンダをうつ必要も少なくなります。




<吸収合併された場合の比較>

この二つの大国に対して日本はどういう行動をとるべきか。
その基本哲学をいかなるものにするべきか。

それを浮上させるために、奇想天外な事態を想像してみましょう。
日本がこの二つの大国によって突如吸収併合された事態をイメージします。

米国による場合は、その51番目の州に併合されたとする。
中国では省の一つとして併合されたとイメージします。

これは当面の現実では奇想天外そのものの事態です。
いうまでもなくそんなことは当面起きえません。

万一将来起きるとしても、そのためには様々な交渉がなされるでしょう。
それを通していろんな約束が取り交わされるでしょう。
だから、いまのままでそっくり併合されることはありえませんが、
突然そうなったとイメージしてみます。

そして各々について、生じる事態を想像してみましょう。
するとこの二つの国の本質、および、それら各々と日本との関係の本質が
浮上してくると鹿嶋は考えるのです。





<米国の一州になったら>

まず米国について。
日本が現状のままで突如米国に併合され、その51番目の州になったらどうなるか。
結論から言えば、日本人はさほど不幸にはならないだろうと思われます。

日本は敗戦によって、米国の統治下で米国流の国造りをさせられました。
米国で聖句主義者たちが多大な血を流して憲法に組み込んだ思想言論自由の原則を、
そっくりいただいて日本国憲法を編成しました。

実際にはGHQの担当者たちが、多分に働いてくれました。
日本に幸せ国家を作る夢に燃えて編成してくれました。

以後日本人はそれをちゃっかりいただきエンジョイしてきています。

一般的に言って、この原則のもとでの統治は
人民にものごとを強制する度合いが小さいです。

国民は比較的自発的に相互連携して社会生活を営んでいきます。
こういう暮らしには苦痛は少なく、幸福感は高いのです。





<中国の一省になると>

今度は中国について。
もしも、日本が中国の一省に組み入れられることが起きたらどうなると推定できるでしょうか。

中国は社会主義思想に反する思想が出ないように統制しつつ、一党独裁で国家を運営している国です。
日本省だけを言論自由にしておくわけにはいきません。

まず共産主義肯定の思想に日本民族の意識を改造しなければなりません。
それを中国政府は共産党特有の方法でするでしょう。

白色テロは必須です。
知識人が勝手にいろんな思想を論じてくれるというのは、何よりも困るのです。
不従順な知識人には見せしめの公開処刑もほどこすでしょう。
直系親族の連座制も実施するでしょう。

中国はこういう体質を好き好んで身につけているのではありません。
近代中国が歴史的にたどってきた国造りは、結果的に共産主義方式になりました。
それには相応の必然性もあったでしょうが、とにかくいまここまできた。
だから共産党独裁方式でやるしかないのです。

+++

階級闘争も学習させるかも知れません。
ホームレスや不定期雇用者、非正規社員などを結集させる。
これら低所得層の心に富裕層に対する憎しみを駆り立て、彼らに富裕層の財産を没収させ、
即決裁判で公開処刑させもする可能性もゼロではありません。

階級闘争的な政策手法は、毛沢東によって中国共産党のなかで体質化されてきました。
そこでの残虐性の資質も人民や軍隊(人民解放軍)のなかに蓄積してきました。

毛沢東はそれを土改(土地改良)で植え付け、以後の大躍進運動、文化革命で補強してきました。

そしてこれらの政策は、いま現在もチベットやモンゴル人民に対してなされています。
当局の情報隠匿努力にもかかわらず、その実態情報は部分的ながら
インターネットを通して流出してきています。




<中国の統治環境は過酷だった>

実は、中国における過酷な政治行為は毛沢東共産党に始まったものではありません。
残虐性を強烈に打ち出す政策の体質は古くからありました。

秦の始皇帝の中国統一(漢民族の一体化)政策からしてすでにそうでした。

彼が民族統一のために漢字を統一させたのは驚くべき慧眼でした。
だがそれのみでは漢民族の統一はなりません。

皇帝は自らの統一思想を貫き通すために、別方式の思想を主張した儒学者ら460人を
生き埋めにして殺しています。
これは儒学の文書焼却とあわせて、始皇帝の焚書坑儒とよばれています。

このようにやることがダイナミックなのは、あの広大な国土に散在している億の人民を
統一するには必要でもあったからでした。


+++

人種的な政治環境も過酷でした。
ほぼ単一民族の日本と違って、中国では常に異民族が統治権を奪取する可能性がありました。

実際モンゴル族は元を建国し、漢民族を統治下におきました。
蒙古民族の凶暴さは、日本人にも蒙古襲来時の対馬人民への処置でもって知られています。
彼らの体力の強さは、今でも朝青龍や白鵬、日馬富士といった力士が
日本大相撲の頂点を占めていることからもうかがわれます。

だがその彼らでさえ、漢民族の明王朝に政権を奪われるときには、悲惨な歴史をたどっています。
中央政府のみならず、地方政庁で働いていた元人の役人までもが皆殺しにあっているのです。

+++

異民族による征服、政権奪取というのはそういうものです。

よく、日本の皇室は万世一系といいます。
建国以来続いてきているのは、世界に類のないすぐれた皇室だからと誇る国粋主義者もいる。
これに神道の神のちからといった宗教的な意味を加える人もいます。

だが、それは異民族による政権奪取がなかったからというだけのことなのです。
もし異民族による征服が起きていたらその時点で全血統は断絶となったこと必定です。
(皇室礼賛者の方々にはごめんなさい)


+++

話を戻します。
毛沢東は詩人でもあり大変な読書家だったと伝えられています。
彼は中国政治史もその政治土壌と共に学んだのでしょう。

地理的人種的に形成された過酷な政治環境には、凶暴な政策も必要だった。
歴代統治者の歴史にそれを悟ったのでしょう。
毛沢東はそれを人民集団にさせるという方式を考案した。
これは彼の「発明」でした。

これらによって出来た体質は、日本省にも発揮されるでしょう。




<意図的政治見解ではない>

鹿嶋は今回このことを、政治的意図をもって述べているのではありません。
嫌中国感情を意図的に造成するために語っているのではない。

春平太の意識は客観的です。

このシリーズにおいても、日本がかつて中国に多大な恩恵を受けてきたことを示しました。
唐王朝時代には儒教思想でもって、日本の親として暖かく留学生を迎え文化を学ばせてくれました。
彼らが長安で学びもち帰った漢字とそれによる文化の恩恵に対しては、
いくら感謝してもしすぎることがありません。

日中戦争の敗戦時にも、国民党政府(蒋介石)は以徳報恩でもって戦争賠償を免除してくれました。
おかげで戦後日本の経済復興は速やかに進みました。

そういう事実も冷静に踏まえ、感謝と共に客観的に春平太は述べています。
そのうえで、現在日本が中国に接近するには限度があると鹿嶋はいっているのです。

明治維新以来、日本政府は共産主義方式を採用することは一度もしませんでした。
共産主義思想のもつ正義感、理想に心酔する運動家や学者は少なからずいましたが、
国家がこの方式をとることはなかった。

戦後も米国方式で国家運営をしてきました。
だから日本人民は、共産党独裁による国家運営がなされる中で暮らすのが
どういうことかを体験していません。

その状態で歴史的現実を知らずにナイーブに中国に接近していけば、
政治的面から不幸に陥る危険が大きいと指摘しているのです。

+++

現在、日本には無邪気な嫌米気分が盛り上がっています。
マスコミも無知だから、それを煽る報道ばかりしている。
民放テレビもワイドショーで「米国支配を逃れましょう」と
まるでプロパガンダのように報道しています。

この気分に乗って中国に抱きついていくようなことになったら危険極まりありません。
あほうどりのように幼稚に接近していってパクリと飲み込まれたら、
仰天の不幸に陥るよ、地獄を見ることになるよ、といっているのです。

中国もそれを悪意でもってするのではありません。
政治構造として、ごく自然にそうせざるをえないのです。

中国が自国の国民にしていることが、日本人には、地獄に感じられる。
恵まれた地政学的環境のなかで甘ちゃんとして暮らしてきた民族には
そう感じられることになるよ、といっているのです。






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