この災害の終息が見えてから将来のために読むべきものかもしれないが、重要な指摘・論考。
今回改めてTwitterの有効性が明らかになったことは強調すべきだ。これらもTwitterでの口コミによるものであり、テレビや新聞経由では目に触れることがない。なお、急速に反響を呼んでいる広瀬論文に関しては、池田信夫氏が「これは悪質なデマ」だと断じているがどう判断するか。
ところで、「××での放射能測定値は××の何倍」という報道は、その意味を軽んじてただセンセーショナルにしているという点で問題だと思うがどうか。
●広瀬隆『破局は避けられるか――福島原発事故の真相』(2011/3/16) >> リンク
「テレビでは、コメンテーターも政府もみな、微量、微量と言い続けた。ここまでくれば、みな、おそるべき犯罪者たちである。さらに2号機では、格納容器の破損が起こり、4号機では建屋内の使用済み核燃料のプールが沸騰を始めたという。ここには、原子炉より多くの放射性物質が入っている。作業者が近づけない場所であるから処理はおそらく不能であろうと、15日の午後5時時点で、私は推測するが、この推測が間違ってくれるよう祈っている。福島第一原発の6基のうち、1基がメルトダウンすれば、そこには職員がいられなくなる。すべてを放棄して逃げ出すだろう。あとは連鎖的に事故が起こる。
この発電所には、全部合わせて、事故を起こしたチェルノブイリ原発の10倍を超える放射能があると思われる。あとは、この放射能が無害であると、政府と原子力安全・保安院と電力会社とテレビの御用学者たちは言い続けるはずだ。もし日本の国民が愚かであればそれを信じて、汚染野菜を食べることだろう。明日、すぐには死なないからだ。しかしかなりの高い確率で発癌することが分っている。子供たちを守れるのは、事実を知っているあなただけである。」
反論 → ●池田信夫『デマにご注意』(2011/3/16) >> リンク
「たしかに核廃棄物の放射能は多く、それがコントロールできなくなったことは深刻な事態である。大量の核廃棄物が大気にさらされた可能性があるが、これはチェルノブイリのような「メルトダウン」とは違う。チェルノブイリの場合は核燃料が暴走したまま原子炉が崩壊したので、高温の噴煙が上空まで上がって欧州全域に飛んだが、今回は放射能汚染は基本的には原発の周囲にとどまる。
「連鎖的に事故が起こる」とは何をいおうとしているのかわからないが、1~3号機の連鎖反応は止まっている。4号機の事故は「核の燃えかす」によるものなので、再臨界(核燃料の連鎖反応が再開される)を起こすことは考えられない。崩壊熱による火災は今後も考えられるが、これは連鎖反応とは違う。」
●塩谷喜雄『未曾有の震災が暴いた未曾有の「原発無責任体制」』(2011/3/15、フォーサイト) >> リンク
「実は、東電の福島第一は津波に弱く、炉心溶融の危険性があることは、5年前から指摘されていた。想定外などではない。福島第一で想定されている津波、チリ地震津波クラスに遭遇すると、大きな引き波によって冷却用の海水を取水できなくなるといわれる。この引き波による取水停止が、炉心溶融に発展する可能性を、2006年に国会で共産党の吉井英勝議員が質問している。」
●大前健一『福島第一原発で何が起きているのか――米スリーマイル島原発事故より状況は悪い』(2011/3/15) >> リンク
「今回の反省から全ての原発を再点検し、必要な施設の付加をして生かせるものは生かす。しかし、新たな炉の建設や今回のような恐れのある炉は廃炉とするしかない。国民はその不便を「電気の節約」という行動で積極的に甘受するしかないだろう。」
※なぜか再生可能エネルギーに触れられていないが・・・。
以下、過去すでになされていた指摘。
●チリ地震が警鐘 原発冷却水確保できぬ恐れ対策求める地元住民(2010/3/1、しんぶん赤旗) >> リンク
「原発の津波対策をめぐっては、2006年に日本共産党の吉井英勝衆院議員が国会質問で不備を指摘しています。5メートルの津波(引き波)によって、日本の原発の約8割にあたる43基の原発で、冷却水が海から取水できなくなることを明らかにしました。また、原発ごとに想定されている引き波でも、12原発が、取水不能になるうえ貯水槽もないことがわかっています。」
●石橋克彦『迫り来る大地震活動期は未曾有の国難である』(2005/2/23、衆院予算委員会) >> リンク >>リンク(原文)
「・・・普通、原発の事故というのは単一要因故障といって、どこか一つが壊れる。
で、その場合は多重防護システム、あるいはバックアップシステム、安全装置が働いて、大丈夫なようになるというふうに作られているわけですけども、地震の場合は複数の要因の故障といって、いろんなところが振動でやられるわけですから、それらが複合して、多重防護システムが働かなくなるとか、安全装置が働かなくなるとかで、それが最悪の場合にはいわゆるシビアアクシデント、過酷事故という炉心溶融とか核暴走とかいうことにつながりかねない訳であります。」
●谷口雅春『浜岡原発2号は東海地震に耐えられない 設計者が語る』(2005/7/13) >> リンク
「ところが1972年5月頃、驚くべき事態が起こりました。部門ごとの設計者の代表が集まった会議で、計算担当者が「いろいろと計算したが無理だった。この数値では地震がくると浜岡原発はもたない」と発言したのです。」
「私は、それを聞いて「やばいな」と思い、しばらく悩んだ末に上司に会社を辞める旨を伝えました。自分の席に戻ったところ、耐震計算結果が入った三冊のバインダーが無くなっていました。そのため、証拠となるものは何も持っておりません。」
参考
●本ブログ『原発ゴミは「負の遺産」―最終処分場のゆくえ3』 >> リンク
●本ブログ『『核分裂過程』、六ヶ所村関連の講演(菊川慶子、鎌田慧、鎌仲ひとみ)』 >> リンク
●本ブログ『既視感のある暴力 山口県、上関町』 >> リンク
●本ブログ『眼を向けると待ち構えている写真集 『中電さん、さようなら―山口県祝島 原発とたたかう島人の記録』』 >> リンク