ポール・オースター『4 3 2 1』の邦訳がようやく出版され、梅屋敷の仙六屋カフェで翻訳家の柴田元幸さんによるトークが開かれた。葉々社さんの主催(いい書店!)。
2013年5月に書き始めて2017年1月に出版。アメリカの事情のことを考えればこの分厚い本を2年半ほどで書き終えたことになるという。1960年代を描いた作品としては『Moon Palace』、『Invisible』に次いで3作目。柴田さんが最初のところを朗読しはじめるとどうも覚えがある。それも当然で、原著が出たとき自分も読みかけ、あまりの量に挫折したのだった。
柴田さんによればオースターを映画が支えていた面もあったようで、サイレント期のコメディアンであるローレル&ハーディはサミュエル・ベケット経由で意識した可能性があるという。会場では『極楽ピアノ騒動』が少しだけ上映されてみんな爆笑。お尻を蹴飛ばされた女性が警官にお尻のことを「daily duties」と表現しており妙に可笑しい。原題は『The Music Box』であり、じっさいオースターの『The Music of Chance』だって思い出させてくれる。
オースターは黒人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンのことを書いているけれど、『4 3 2 1』でもそれを想起させるバスケットボールの試合のエピソードがある。その部分の柴田さんの朗読はみごとでもあり、また人種差別という面では「まるっきりいまの話だと思えてしまう」とのコメントにも納得させられてしまう。
それにしても厚く、およそ800頁。翻訳のゲラの修正も順序通りではなく敢えてとびとびにして整合性をチェックしたりして、たいへんだったらしい。柴田さんの手書きの原稿をオマケにいただいた。 さていつ読もう。年末年始かな。
●ポール・オースター
『ユリイカ』のポール・オースター特集号
ポール・オースター『Baumgartner』(2023年)
ポール・オースター+J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡2008-2011』(2013年)
ポール・オースター『冬の日誌』(2012年)
ポール・オースター『Sunset Park』(2010年)
ポール・オースター『インヴィジブル』再読(2009年)
ポール・オースター『Invisible』(2009年)
ポール・オースター『闇の中の男』再読(2008年)
ポール・オースター『闇の中の男』(2008年)
ポール・オースター『写字室の旅』(2007年)
ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』(2005年)
ポール・オースター『オラクル・ナイト』(2003年)
ポール・オースター『幻影の書』(2002年)
ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』(1997-2002年)
ポール・オースター『ティンブクトゥ』(1999年)
ポール・オースター『リヴァイアサン』(1992年)
ポール・オースター『最後の物たちの国で』(1987年)
ポール・オースター『ガラスの街』新訳(1985年)
ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』(1982年)
『増補改訂版・現代作家ガイド ポール・オースター』
ジェフ・ガードナー『the music of chance / Jeff Gardner plays Paul Auster』