Sightsong

自縄自縛日記

鈴木則文『トラック野郎・望郷一番星』

2015-01-22 07:49:39 | 北海道

鈴木則文『トラック野郎・望郷一番星』(1976年)を観る。

舞台は北海道。ライバルは梅宮辰夫、マドンナは島田陽子。特別出演・都はるみ。ついでに松鶴屋千とせ、由利徹のいつもの芸。片思いの恋と喧嘩と爆走と。以上!

いや面白いんだけど、なんでここまでバカバカしく作ることができたのか。いやになるほどバカバカしくて笑える。鈴木則文よ永遠に、菅原文太よ永遠に。(ふたりとも昨年亡くなった)

●参照
鈴木則文『少林寺拳法』(1975年)
鈴木則文『ドカベン』(1977年)
鈴木則文『トラック野郎・一番星北へ帰る』(1978年)
鈴木則文『忍者武芸貼 百地三太夫』(1980年)
鈴木則文『文学賞殺人事件 大いなる助走』(1989年)


大林宣彦『野のなななのか』

2014-06-02 06:30:30 | 北海道

有楽町のスバル座で、大林宣彦『野のなななのか』(2014年)を観る。

北海道芦別市。風変わりな老人の死をきっかけに、4人の孫、ひとりの曾孫、老人に長いこと付き添った女性、老人の妹らが次々に集まってくる。

まずは、過剰すぎるほど過剰に吐き出され重なり合うことばの群れに驚かされる。死者のことばさえ、生者と隔てることなく混交する。そして、過剰のなかから見出されるものは「つながり」だった。

もっとも、これは封建社会への回帰ではない。「日本」ということばが出てくるものの、「日本」などへの回帰でもない。老人を慕う女性が、ソ連兵に強姦されてサハリンで死に、その前に古本屋に残してきた中原中也の詩集をリンクとして、別の女性に生まれ変わる。鉄道事故で死んでも、女性はまた生かされる。老人の友人は、ソ連兵の残された妻子のもとに赴き、そこで人生を共にする。紐帯は、血縁や地縁でもなく、閉ざされた共同体の論理でもない。 

大林宣彦のファンタジックな視線。「3・11」後の原発、敗戦後の戦争に対する明確な意思表示。ハチャメチャの中に、光芒のような一筋を見出すことができる映画だった。

●参照
大林宣彦『SADA』
『時をかける少女』 → 原田知世 → 『姑獲鳥の夏』


山下隆博『心の温度』

2014-05-25 23:40:42 | 北海道

新宿ニコンサロンで、山下隆博『心の温度』を観る。新宿西口に行ったついでに覗いたに過ぎなかったのだが、なかなか素晴らしい作品だった。

北海道の、泊原発に近い地域。写真家の生まれた故郷だという。ここでの人びとの生活風景を、メッセージを明示することなく捉えた作品群である。

じっくり観ると、室内の布団、運転手や若い女性の顔、雪景色、(おそらくは)泊原発といった被写体が、非常に精細であり、目を奪われつつ、会場を何周もして凝視してしまう。グラビアに掲載された「アサヒカメラ」誌を開いてみると、ウィスタの大判カメラ(4×5)を使っている。これによる質感は、まだデジタルとは明らかに異なる。

ちょうどトークショーをやっていて、何を思って撮ったのかを聴くことができた。シノゴをあえて使ったのは、ディテールにこだわったからであるという。ただ、手段論よりも(大判を使えば精細な写真ができるのは当たり前だ)、実践という動かし難い事実に、ただならぬ迫力を覚えた。


旨い札幌(2)

2014-03-25 07:21:47 | 北海道

一昨年末以来の札幌。いまだに土地勘がない。

■ すみれ

札幌ラーメンの有名店(らしい)。本店は遠いのでススキノ店に行った。

甘い挽き肉にシコシコ麺。他の味噌ラーメンと何がどう違うのかわからないが、旨い。

■ 七福神商店

海の物を求めてススキノと狸小路をうろうろ。外に貼りだされているメニューに「ルイベ」とあったこともあり入ったのだが、残念ながら品切れ。しかし、店員さんお薦めのものはいちいち旨かった。

タラの芽とアスパラの天ぷら、ホッキ貝、ツブ貝、名前を聞いたことがない八角(背びれが派手)、やはり初めて聞くぶどう海老(水揚げするときに、水圧差でぶどう色になるから、だとか)。調子に乗ってその他いろいろ、日本酒。

ぎりぎりまで飲んでしまい、慌てて千歳に向かった。札幌から30分程度で着くかと思いこんでいたら、50分くらいもかかってしまい、焦った。当然ながら、飛行機の中では爆睡。


タラの芽とアスパラの天ぷら、ぶどう海老


ツブ貝、ホッキ貝


八角

●参照
旨い札幌
旨い釧路
「らーめん西や」とレニー・ニーハウス
札幌「五丈原」
札幌「雪あかり」、「えぞっ子」
デュッセルドルフ「匠」(西山製麺)


降旗康男『居酒屋兆治』

2014-01-02 01:52:27 | 北海道

久しぶりに、降旗康男『居酒屋兆治』(1983年)を観る。(何しろ高倉健なので・・・。)

20年ぶりくらい前には大原麗子くらいしか意識していなかったが、ちあきなおみ、伊佐山ひろ子、細野晴臣、佐藤慶など脇役が超豪華。

それはともかく、固定化しまくったジェンダー、バルネラビリティへの願望、暴発することがわかっている抑制、場末感など、もうやりたい放題。妄想を正直に形にした映画という意味では傑作か(笑)。

●降旗康男
降旗康男『地獄の掟に明日はない』(1966年)
降旗康男『あ・うん』(1989年)
張芸謀・降旗康男『単騎、千里を走る。』(2006年)
降旗康男『あなたへ』(2012年)


旨い釧路

2013-10-18 07:50:25 | 北海道

所用で釧路に足を運んだ。台風26号のために大揺れしながらも、何とか辿り着いた。

ちょうど初雪が降った日で寒く、繁華街・栄町の「あぶり屋」に入って一安心。頭のなかには「秋刀魚」しかない。タクシー運転手も、いやここで食べたら他の秋刀魚は食べられませんよなどと煽ってきた。

そんなわけで、秋刀魚の刺身と塩焼、ししゃも、真ほっけ、ザンギ、白レバー。秋刀魚は脂がのっているし、ザンギは大きくて柔らかい。どれもこれも旨い。

所用を終えて、翌日の昼は、「和商市場」に立ち寄った。もう1時過ぎだというのに、多くの人。目当ては、飯の上に好きなネタをのせてもらう「勝手丼」である。店の人は、途中でも、あっまだご飯が見えますよ!などと煽ってくる。釧路は煽りの街か。

秋刀魚、鯨、いか、ほっけ、鮪、しめ鯖、蟹爪、蟹の子を選んだ。もうこっちのものだ(何が?)

空港には、佐藤紙店とソメスサドルとが共同で出店している。ここで、佐藤紙店の釧路オリジナルインク「夜霧」を入手した。どの万年筆で使ってみるか・・・。

●参照
旨い札幌
「らーめん西や」とレニー・ニーハウス


『ルル、ラン どこに帰ろうか タンチョウ相次ぐ衝突死』

2013-07-14 10:43:39 | 北海道

NNNドキュメント'13」枠で放送された『ルル、ラン どこに帰ろうか タンチョウ相次ぐ衝突死』(2013/6/9放送)(>> リンク)を観る。問題提起のドキュメンタリーである。

タンチョウは、北海道東部、釧路湿原近くなどに棲息する。かつては江戸で越冬し、明治期には乱獲のため絶滅しかけた鳥でもある。

そのタンチョウは、いまでは、北海道で越冬する。なぜか。昭和に入り、北海道や国は保護に大きく方向転換したからだ。そのため、給餌が地道に行われている。

一方で、タンチョウの営巣地も個体数も急増している。電車との衝突事故は後をたたない。農害もあるという。人間に馴れすぎて野生に戻れないタンチョウもいる。地元のシンボル化、観光資源化、保護といった活動が生み出した矛盾である。環境省は、棲息地を北海道全域に広げるとの解決策を示しているが、新しい場所では、その矛盾ごと引き受けることが求められてしまう。

それはそれとして、このドキュメンタリーや、Youtubeで数多くアップされている映像を観ると、やっぱり釧路湿原に行きたくなる。大学生の時分に、本多勝一『釧路湿原』を読んで以来、ずっと憧れている場所なのだ。

参考映像
「危ないよ~線路上のタンチョウ親子」(番組でも紹介)
「タンチョウ 求愛ダンス」
「タンチョウ 赤い吐息 美しき光景」
「伊福部昭 交響詩・釧路湿原」

●NNNドキュメント
『狂気の正体 連合赤軍兵士41年目の証言』(2013年)
『活断層と原発、そして廃炉 アメリカ、ドイツ、日本の選択』(2013年)
『沖縄からの手紙』(2012年)
『八ッ場 長すぎる翻弄』(2012年)
『鉄条網とアメとムチ』(2011年)、『基地の町に生きて』(2008年)
『風の民、練塀の町』(2010年)
『沖縄・43年目のクラス会』(2010年)
『シリーズ・戦争の記憶(1) 証言 集団自決 語り継ぐ沖縄戦』(2008年)
『音の記憶(2) ヤンバルの森と米軍基地』(2008年)
『ひめゆり戦史・いま問う、国家と教育』(1979年)、『空白の戦史・沖縄住民虐殺35年』(1980年)
『毒ガスは去ったが』(1971年)、『広場の戦争展・ある「在日沖縄人」の痛恨行脚』(1979年)
『沖縄の十八歳』(1966年)、『一幕一場・沖縄人類館』(1978年)、『戦世の六月・「沖縄の十八歳」は今』(1983年)


旨い札幌

2012-12-15 09:50:41 | 北海道

狸小路近く、「GARAKU」でスープカレー初体験。というのも、仕事前だとワイシャツやネクタイにカレーが飛びそうで嫌だったからなのだが、別に、気を付ければいいだけの話である。「やさい15品目大地の恵み」、980円。

夜、17時の開店早々に「だるま」に突入。雪が積もっているなか、既に7人くらいが並んで待っていた。久しぶりにつららを見た。

ここのジンギスカンは生マトンで、あっさりとしていてペロリ。ひとり客も居て良い感じ。


黒木和雄『わが愛北海道』、戦前の道庁製作映画

2011-09-25 19:54:35 | 北海道

明日所用で北海道に行くしなあ、と、気分を盛り上げるために、北海道の広報宣伝映画を2本観る。

『わが愛北海道』(1962年)は、黒木和雄が岩波映画時代に撮った出世作。小樽のニシン御殿、釧路から出る北洋のサンマ漁、泥炭地、石狩川、根室、函館、苫小牧の王子製紙、札幌の大通公園などが次々とあらわれる・・・のだが、並の広報映画ではない。何しろ黒木和雄であり、しかも助監督に東陽一小川紳介(!)。

何だかよくわからない七三分け男が仕事の関係で北海道に赴き、キョウコという長靴作りの仕事をする女性に恋をし、訪れる土地ごとに解説をし、いやそれ以上に心象風景を語るという怪作なのだ。「私は地面を踏みしめて歩く。まるで漁港の女性たちの熱気がどうのこうの」などと意味不明でナルシスティックな独白の羅列、笑うよりも段々と眠くなってしまった。こんな奴が横でぶつぶつ呟いていたら張り倒したくなるだろう。いまとなっては怪作に近いと思えてならない。アラン・レネの影響って何がだ。

それよりも、科学映像館で配信している戦前の北海道関係映画(1936年)のほうが潔く、爽やかに笑うことができる。少なくともナルシスティックではない。ユーモアもある。

なかでも「北海道拓殖実習」は実習生の朝から晩までを描いた小品が面白い。起床・就寝の合図をする和太鼓の映像で挟まれる。起床のときなどは、横に「暁の眠りは破らるる」などと字幕が入るところで吹きだしてしまうし、さらに、実習生皆で、牛の横で「デンマーク体操」なるものを行うのである。映画『めがね』のメルシー体操のようなノリで見ていたら、実は今も立派な体操のメソッドとして存在するものなのだった。

>> 戦前の北海道関係映画(ダイジェスト版)

●黒木和雄
黒木和雄『日本の悪霊』
黒木和雄『原子力戦争』
井上光晴『明日』と黒木和雄『TOMORROW 明日』
『恐怖劇場アンバランス』の「夜が明けたら」、浅川マキ(黒木和雄)

●岩波映画
瀬川順一『新しい製鉄所』
高村武次『佐久間ダム 総集編』
土本典昭『ある機関助士』
羽仁進『教室の子供たち』、『絵を描く子供たち』

●科学映像館のおすすめ映像
『沖縄久高島のイザイホー(第一部、第二部)』(1978年の最後のイザイホー)
『科学の眼 ニコン』(坩堝法によるレンズ製造、ウルトラマイクロニッコール)
『昭和初期 9.5ミリ映画』(8ミリ以前の小型映画)
『石垣島川平のマユンガナシ』、『ビール誕生』
ザーラ・イマーエワ『子どもの物語にあらず』(チェチェン)
『たたら吹き』、『鋳物の技術―キュポラ熔解―』(製鉄)
熱帯林の映像(着生植物やマングローブなど)
川本博康『東京のカワウ 不忍池のコロニー』(カワウ)
『花ひらく日本万国博』(大阪万博)
アカテガニの生態を描いた短編『カニの誕生』
『かえるの話』(ヒキガエル、アカガエル、モリアオガエル)
『アリの世界』と『地蜂』
『潮だまりの生物』(岩礁の観察)
『上海の雲の上へ』(上海環球金融中心のエレベーター)
川本博康『今こそ自由を!金大中氏らを救おう』(金大中事件、光州事件)
『与論島の十五夜祭』(南九州に伝わる祭のひとつ)
『チャトハンとハイ』(ハカス共和国の喉歌と箏)
『雪舟』
『廣重』
『小島駅』(徳島本線の駅、8ミリ)
『黎明』、『福島の原子力』(福島原発) 
『原子力発電の夜明け』(東海第一原発)


「らーめん西や」とレニー・ニーハウス

2011-07-07 23:55:49 | 北海道

札幌に所用で足を運んで、記者のJOE_asさんを待つ合間に、クラフトショップを覗いた。いろいろ150円の缶バッジがあって、その中に、クリント・イーストウッドの映画音楽で知られるレニー・ニーハウスのバッジもあった。別に札幌とは関係ないが、これを自分への札幌土産とする。村上春樹のいう「小確幸」か。

夜の帰り便までの間に、書肆吉成で古本でも漁ろうかと思っていたのだが、てんやわんやでそんな時間はとてもない。結局、面倒くさくていつも立ち寄る駅ビル10Fの「札幌ら~めん共和国」で、「らーめん西や」に入り、半ラーメンとカニ丼を食べる。欲張らない、これでよし。

●参照
札幌「五丈原」
札幌「雪あかり」、「えぞっ子」
デュッセルドルフ「匠」(西山製麺)


今田敬一の眼

2010-03-16 23:40:25 | 北海道

所用で北海道に足を運んだついでに、北海道立近代美術館の常設展「今田敬一の眼」を観てきた。

今田敬一を含め、すべて北海道の美術に貢献した画家たちである。しかし、三岸好太郎と珍しい有島武郎の絵以外は、名前を眼にするのもはじめてだ。また、帝銀事件で容疑者とされた平澤大�胎(平沢貞通)の作品も1点あった。帰宅してから、150人を紹介している『近代日本美術家列伝』(神奈川県立近代美術館編、美術出版社、1999年)をひもといてみたが、一人も見当たらなかった。

素晴らしいと感じる画家は何人もいた。パンフの表紙(「朝の祈り」、1906年)に採用されている林竹治郎は、エッジが丸く溶けるようだ。年長の子供が押さえている本は聖書だろうか。背後の鏡のフレームには十字架が見える。北大前身の札幌農学校には外国人教師を多く招き、クリスチャンとなった学生も多かったという。

能勢真美の作品は、鬱蒼とした沼を描いた「緑庭」と、ゴーギャン風に熱帯の裸の女性を描いた「青い鳥」。透明感というのか、抜ける感じが良い。

中村善策の「摩周湖」は、しばらく階段の踊り場から眺めるほど深い群青色に眼が惹きつけられるものだった。

札幌はまだ寒く、雪が降っていた。鳩のように歩き、旨いと教えてもらったラーメン屋「五丈原」まで辿り着いた。スープが旨かった。

●参照
北海道版画協会「版・継承と刷新」、杉山留美子


札幌の書肆吉成

2009-12-03 23:38:23 | 北海道

今日、所用で札幌に行ってきた。折角なので、店舗をオープンしたばかりの書肆吉成まで足を運んだ。ミニコミ誌『アフンルパ通信』を発行しているところであり、以前、ジョナス・メカスに関する記事を読みたくてバックナンバーを取り寄せたことがある。

札幌駅の北、元町駅と北二十四条駅との間あたりにある。今朝雪が少し積もったとかで、街路樹の下にはまだじゃりじゃりになった雪が残っていた。歩くのは好きなタチだが、かなり寒かった。

古本の品揃えはかなり良かった。このような、志のある古本屋に入ると、足が棒のようになる。何冊もあっ欲しいという本があったが、ここは堪えて(笑)、2冊をわがものにした。

ついでに、『アフンルパ通信』の創刊号も購入。吉増剛造が詩を寄稿していて、その原稿用紙が薄い紙に縮小印刷され、帯になっている。吉増のあまりにも独特な、文字がカミキリムシのように蠢いて紙を持つ手を咬みそうな世界、それがミニチュアになって、すぐに破れそうで儚い。つくづく変な詩人である。

吉増剛造が奄美・沖縄を歩く映画、『島ノ唄』(伊藤憲)のパンフレットにも、原稿用紙2枚のコピーを付けてくれていて、これも蜻蛉の羽のようで大事にとってある。かつて、吉増は8ミリ映画について、「脈動を感じます。それはたぶん8ミリのもっているにごり、にじみから来るのでしょう」(『8ミリ映画制作マニュアル2001』、ムエン通信)と表現した。この儚くて同時に強い感覚は好きである。


「光の落葉―奄美、加計呂麻」の原稿(一部)

「アフンルパ」とは、アイヌ世界において、あの世への入口となる凹みだという。死の凹みは生の蠢き、書肆吉成も札幌の凹み?

●参照
島尾ミホさんの「アンマー」
仙台の古本屋「火星の庭」


北海道版画協会「版・継承と刷新」、杉山留美子

2009-09-10 00:27:35 | 北海道

所用で北海道に足を運んだ。思いがけず時間が少し空いたので、北海道立近代美術館に行ってみた。1989年に、「シャガールのシャガール」という展覧会を観て以来だから、もう20年ぶりだ。

特別展は、北海道版画協会の創立50周年記念展「版・継承と刷新」。この作家たちについての予備知識はゼロである。木版、エッチング、リトグラフ、シルクスクリーン、ミクスドメディアなど、ひとつひとつが楽しい。ただ、自分の嗜好では、プリミティヴさ、力強さを直接的に訴えかけてくる木版画が良い。なかでも、町の向こうにどおーんと大きな山がある、大本靖「マッカリの山」、ウォーカー・エヴァンスの写真のような存在感がある尾崎志郎「オレゴンの古い納屋」、4つの版を組み合わせ、アイヌの手仕事の様子をぎっちり描いた木村多伎子「祭前夜」の3点が素晴らしく、出る前に戻って再度じろじろ観た。

常設展は、杉山留美子「光満ちる時」。知らずに入って仰天した。まるでマーク・ロスコではないか。もちろん作家が違えばその吐き出すものは違うわけだが、観た途端に厳かな気分になり、どこかに連れて行かれる感覚は共通している。エアブラシかとも思ったが、どうやら、綿帆布に刷毛で何度も繰り返し着色しているようだ。

他にも常設作品はいろいろあって、李禹煥を2点体験できたのは嬉しかった。

ところで、札幌といえばスープカレーが有名になっていて、今回食べようかと思ったのだが、スーツだからやめた(つい、カレーうどんを食べたあとに服に飛び散っているのを思い出してしまうのだ)。それで、いつものようにラーメン。新千歳空港の「雪あかり」は、西山製麺の麺を使っていて、東京でもここの麺がビッグブランドになっている。何だかよくわからないが旨い。

自宅のお土産は、いつも六花亭の「マルセイバターサンド」。お土産と言いつつ、自分が好きなのだ。

 
「えぞっ子」の味噌コーンバターラーメンと、「雪あかり」の塩ネギラーメン