Sightsong

自縄自縛日記

樋口尚文『実相寺昭雄 才気の伽藍』

2020-12-14 21:48:25 | アート・映画
樋口尚文『実相寺昭雄 才気の伽藍』(アルファベータブックス)がなかなか面白かった。
京浜東北線で南東京から川崎へと南下するときには『ウルトラセブン』の「狙われた街」における町工場の雰囲気を思い出すことがあるけれど(メトロン星人!)、そのあたりの特撮物で実相寺にやられた少年は多かっただろう。
『怪奇大作戦』は生まれる前の作品で再放送もなかったから、「呪いの壺」や「京都買います」に痺れたのは大人になってからだ。暗くて歪んだ『シルバー仮面』も、『曼陀羅』や『哥』のようなATGの怪作映画もあとで観た。
大島渚は『夏の妹』で主人公たちに『シルバー仮面』の主題歌を歌わせている。また、著者は『シルバー仮面』の5人兄弟に連合赤軍の若者たちを重ね合わせている。自分より上の世代、同時代の人たちでないと共感しない部分もあったに違いない。
そしてまた、著者は実相寺のことを「快楽思想犯」と評している。あの偏執狂的なカメラワークと演出を刷り込まれたら、「ごもっとも」としか言いようがない。
また何か観ようかな。

曽根麻央+デイヴィッド・ブライアント@六本木サテンドール

2020-12-14 08:43:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

六本木のサテンドール(2020/12/13)。

Mao Sone 曽根麻央 (tp, ds)
David Bryant (p)

Kyte Flying(曽根)、Days of Wines and Roses、Little One(Hancock)、Nocturnal Alley(曽根)、Blue in Green(Davis)、Nardis(Evans)、Some Other Time(Bernstein)、First Impressions(Bryant)、Isfahan、Gathering at Park Drive(曽根)、There Will Never Be Another You。

曽根さんの音は飛沫のひとつひとつに色が付いているようで聴いていて愉しい。はじめはエコーをかけすぎではないかと思ったが、それも長いデュオを演るからこそだと気づいた。デイヴィッド・ブライアントはいつものようにさまざまな繊細な和音で惹かれる。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●曽根麻央
大口純一郎/曽根麻央 双頭Quartet@下北沢No Room for Squares(2020年)

●デイヴィッド・ブライアント
デイヴィッド・ブライアント@Body & Soul(2020年)
ジーン・ジャクソン@赤坂Crawfish(2019年)
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
マリア・グランド『Magdalena』(2018年)
ルイ・ヘイズ@Cotton Club(2017年)
エイブラハム・バートン・カルテットとアフターアワーズ・ジャムセッション@Smalls(2017年)
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
マリア・グランド『Tetrawind』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)


生誕100年・金達寿展@神奈川近代文学館

2020-12-14 08:32:42 | 韓国・朝鮮

在日コリアン作家・金達寿の生誕100年を記念した展覧会に足を運んだ(神奈川近代文学館)。

かれは日韓併合下の朝鮮に生まれ、戦中戦後、日本語で作品を書き続けた。金石範、李恢成、金時鐘らと同様に、「占領者のことばを使って表現する」という、自身のアイデンティティを揺さぶられる事態を文学に昇華していった人だと言うことができる。

会場には、『玄界灘』『朴達の裁判』の原稿や、パイオニアの金史良(朝鮮戦争に身を投じて消える)からの手紙なんかが展示され、また金芝河を支援するスピーチのテープを聴けたりもして、とても面白かった。小松川事件の李珍宇(大島渚が『絞死刑』で描いた)や金嬉老への支援をしていたということは意識しておらず発見。

僕の『玄界灘』には署名が入っていて、「寿」の字が可愛いなと思っていたのだけど、原稿を見ると、「あ」や「み」の丸いところが同じ感じ(当たり前だ)。そして右肩上がり。こういう展示は作家に親しみがわいてきて楽しい。

●金達寿
『金達寿小説集』
金達寿『玄海灘』
金達寿『朴達の裁判』
金達寿『わがアリランの歌』