Sightsong

自縄自縛日記

照内央晴+喜多直毅@本八幡cooljojo

2020-12-26 09:43:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2020/12/25)。

Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)

意外に思えたこのデュオもこの日で6度目。これまでなかなか機会がなくて、はじめて観ることができた。共演を積み重ねたからか、緊張感はあっても両者とも「遠慮せずやりたいことをやる」という雰囲気が出ていた。

対照的に提示され、あるいは強調されたのは、ポルタメントと単音との違い。喜多さんはマージナルな音領域にも平然と侵犯しつつ、連続的にあらゆるところに耳を連れて行ってくれる。ときに音が単線から複線となりどこから出ているのかと驚かされた。それに対し照内さんは和音よりも単音を多く使い、組み立てが違うことを前提としてサウンドを作っていった。敢えて音数を少なくし、ひとつひとつの音の強度を高めているようにも思えた。

そのような併存と拮抗のなかでときおりの事件が起き、それぞれの動きをみせるのがおもしろい。ヴァイオリンが突然そのような身振りとともに離脱しても敢えてピアノはピアノ世界を維持する。ヴァイオリンの弓の振幅に対し、ピアノのフレーズでの振幅。不協和音に不協和音。ヴァイオリンの弦の振幅とともに増してくる音の厚みに対し、ピアノの跳躍することによる音の多様化(アクションペインティング的)。乱暴に跳ねるヴァイオリンに対し着地点を見出そうとするピアノ。細くて切れそうなヴァイオリンの蜘蛛の糸、それによる喪失感に理解を示すようなピアノ。ガラスのように割れてしまいそうなヴァイオリンの疾走、諦念の美しさをみせるピアノ。

最後に付け加えられた短い即興は、狂の遊戯だった。遊びながらの音が眼前を上下左右に通過した。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●照内央晴
豊住芳三郎+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2020年)
藤山裕子+照内央晴+吉田隆一+吉田つぶら@なってるハウス(2020年)
吉田達也+照内央晴@荻窪Velvet Sun(2020年)
豊住芳三郎+照内央晴@山猫軒(2020年)
庄子勝治+照内央晴@稲毛Candy(2020年)
松本一哉+照内央晴+吉本裕美子@水道橋Ftarri(2020年)
照内央晴+加藤綾子@本八幡cooljojo(2020年)
神保町サウンドサーカス(直江実樹+照内央晴、sawada)@神保町試聴室(2020年)
豊住芳三郎+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2020年)
千野秀一+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
奥田梨恵子+照内央晴@荻窪クレモニア(2019年)
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
照内央晴+加藤綾子@神保町試聴室(2019年)
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴@なってるハウス(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)

●喜多直毅
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2020年)
喜多直毅+元井美智子+西嶋徹@本八幡cooljojo(2020年)
喜多直毅+元井美智子+久田舜一郎@松本弦楽器(JazzTokyo)(2020年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+内橋和久@下北沢Apollo(2019年)
ハインツ・ガイザー・アンサンブル5@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
喜多直毅+西嶋徹『L’Esprit de l’Enka』(JazzTokyo)(-2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
喜多直毅+元井美智子+フローリアン・ヴァルター@松本弦楽器(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
喜多直毅+翠川敬基+角正之@アトリエ第Q藝術(2019年)
熊谷博子『作兵衛さんと日本を掘る』(2018年)
喜多直毅クアルテット「文豪」@公園通りクラシックス(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ファドも計画@in F(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年) 


『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』

2020-12-26 09:28:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』(文遊社)。

「阿部薫の他国への伝播と影響」を寄稿した。

Special thanks for giving me great comments or helps: Clifford Allen, Henry Kaiser, Weasel Walter, Matt Mottel, Michael Foster, Patrick Shiroishi, Piero Bittolo Bon, Liudas Mockūnas, Louise D.E. Jensen, Florian Walter, I-Cheng Lin, Kato David Hopkins, Minyen Hsieh, 王啟光, Xiao Liu, Lao Dan, Zhu Wenbo, Zhao Cong, Liu Lu, 山本達久, 崔善培, 香村かをり, 佐藤行衛, Alfred Harth, Han Joo Lee, OKI Kim, Sung Wan Kim, Siew-Wai Kok, Yong Yandsen, Gürkan Baltacılar, Martin Escalante. And thanks for giving me opportunity: 奈良真理子 and 大島彰 さん

 

阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった

著者 大友良英、他=著 
定価 2,700円+税
判型・造本 四六判変形、上製、320頁
ISBN 978-4-89257-125-1

夭折のフリージャズサックス奏者・阿部薫。 阿部の音楽は、21 世紀をどう「生き延びる」のか――大友良英、不破大輔など、現代の音楽シーンの第一線で活躍するミュージシャンら総勢 43 名が<阿部薫は何をし、何をしようとしていたのか>を語り、考察する!

執筆者: 大友良英、不破大輔、柳川芳命、吉田隆一、橋本孝之、纐纈雅代、吉田野乃子、沖縄電子少女彩、剛田武、大谷能生、 ペーター・ブロッツマン、クリス・ピッツィオコス(以上、ミュージシャン)、スズキコージ(画家)、田中啓文(作家)など 

 「『お前らに殺されてたまるか!』阿部薫があの世でこの本を読んだらきっとそう叫んだに違いない」……大友良英

装幀 佐々木暁

(2020年12月中旬発売予定)

☆2020年、阿部薫のCD、続々と発売されています☆  
北海道での未発表ライヴ音源、渋谷での未発表ライヴ音源、3枚組BOXセットが発売!!
『19770916@AYLER. SAPPORO』 阿部薫 2020年04月15日
『LIVE AT JAZZBED / ライヴ・アット・ジャズベッド』
高柳昌行・阿部薫・山崎弘 2020年04月29日  
『STATION '70 / ステーション '70』高柳昌行&阿部薫 2020年05月27日  
『完全版 東北セッションズ 1971』 阿部薫 2020年09月20日  

あの人は天才ですから(一九七八年、『週刊朝日』より)
ある一時期……彼は、わたしの宗教であった(一九七九年)

ーー鈴木いづみ

目 次

A Short Letter to Kaoru Abe  b
阿部薫への短い手紙 ペーター・ブロッツマン
序 大友良英

耳をすませば沈黙の音 (silent)

『阿部薫タイジ』 清水博子
阿部薫のソロインプロビゼーション 田中啓文
1978年7月7日の阿部薫~以来断ち切れぬ影 柳川芳命
音楽以上の何か 橋本孝之
アートの奇跡 sara
阿部薫の音楽についての断想 奈良真理子
阿部薫の亡霊に取り憑かれて 畠山地平

私の好きなアルバム (record)

『ラストデイト』 五十嵐広樹
『19770916@AYLER, SAPPORO』 イギー・コーエン
ジャズサックス奏者としての阿部薫を味わい尽くす 石井和雄
1971年東北ツアーの記録 金子泰久
阿部薫の3枚 笹山皆樹
『ラストデイト』 定淳志
『彗星パルティータ』とか Dicekex
『LAST DATE』 伊達伯欣
ロックを聴いて育ってきた Tucci
アンビエント、阿部薫 宮本隆
『STUDIO SESSION 1976.3.12 』 吉田野乃子

生きている音。それが音だから。
それしか、出すつもりねえし。 (sound)

幻想の東京 1978-2020 ナカムラハジメ
俺は加速している 秋山徹次
超 阿部薫現象 纐纈雅代
阿部薫 不破大輔
阿部薫について 川島誠
阿部薫にまつわる断章 横井一江
阿部薫の楽器と技法について 吉田隆一
楽器の無意識について 大谷能生

特別中の特別なアルバム紹介 (record-2)

〝特別中の特別〟を持つ表現者・阿部薫の3枚 高良俊礼
『なしくずしの死』『北』『19770916@AYLER, SAPPORO』

スペシャル (special)

阿部薫さんを聴いて 沖縄電子少女彩
阿部薫へのオマージュ クリス・ピッツィオコス
私は阿部薫やデレク・ベイリーが苦手だった 杉本拓
阿部薫の他国への伝播と影響 齊藤聡
地下アイドルとしての阿部薫 剛田武

制作者またはレコ屋の話 (produce)

もう一つの解体的交感 斉藤安則
阿部薫 関根豊
マイナーなネットワークがつなぐ阿部薫の音 沼田順
阿部薫の『モノ』と『価値』 塙耕記
知識として貯蔵できない音 高良俊礼

メモリアル (memorial)

阿部薫という出来事 長嶋康郎
『びーどろ』の夜 奈良明
アベ・マリア スズキコージ  
小野好恵さんへの便り 阿部薫 
阿部薫のこと…… 鈴木いづみ
  
執筆者紹介
編集後記 大島彰

☆好評既刊☆

阿部薫1949 - 1978 増補改訂版  定価 3,500円+税

伝説に包まれ、29歳で夭逝した天才アルトサックス奏者の生と死とその屹立する音の凄まじさを、五木寛之、中上健次、村上龍、原尞、浅川マキ、大友良英、坂田明、山下洋輔、近藤等則、坂本龍一、若松孝二、芥正彦、副島輝人他67人が語る異色評伝。【増補:阿部薫インタビューby阿部真郎】

ぼくは誰よりも速くなりたい 阿部薫
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鈴木いづみ×阿部薫 ラブ・オブ・スピード  定価 2,000円+税

伝説の作家とジャズミュージシャン、時代を駆け抜けた最速のカップル

速度が問題なのだ 鈴木いづみ

【本文より】
村上春樹や村上龍、僕とか山田詠美のエッセンスって、じつはすでに鈴木いづみが70年代に書いていたようなものなんだよね・・・高橋源一郎
鈴木いづみのSFには、ノスタルジーではなく“いま”がある・・・大森望
作中に漂う強い諦念と、プラスチックみたいな透明な明るさが、切実で美しい・・・三浦しをん
阿部薫は極北にひとりで立っていた・・・町田康
鈴木いづみさんは、そこにいるだけで危機感に充ちていた・・・田原総一朗
こんなふたりが一緒にいたのか!?[…]天才が出会って結ばれたのか……うぅ映画みたい!・・・新藤風
【インタビュー】他人の三倍くらい自由に生きたふたり  若松孝二[聞き手/平沢剛]
【鈴木いづみ写真館】荒木経惟【阿部薫写真館】南達雄
【鈴木いづみ×阿部薫】大友良英/山中千尋/加部正義/戸川純/あがた森魚/近田春夫/与那原恵/佐藤江梨子/今野勉/四方田犬彦/平井玄/原雅明/騒恵美子他

阿部薫(アルトサックス、他)

1949年5月3日、神奈川県川崎生まれ。父の影響でジャズに親しみ、ほぼ独学で楽器をマスターした。高校を2年で中退、横須賀基地で黒人たちとジャム・セッションを展開、すでにフリーフォームだったという。
68年19歳。川崎「オレオ」にてデビュー。
69年20歳。芥正彦と出会って晩年まで親交を深める。
70年21歳。高柳昌行ニューディレクションとして注目された後、ソロを中心とした演奏活動を全国各地で展開する。アルト1本で先入観のリセットを迫るような激しい演奏は、商業シーンとは別のところで心酔するファンを生み続けた。
73年24歳。鈴木いづみと出逢い結婚、魂のぶつかり合いのような関係を生涯続けることになる。
78年9月9日、急性胃穿孔のため死去。
彼を題材にした小説に、稲葉真弓「エンドレス・ワルツ」、映画に、若松孝二の同名作品がある。

●阿部薫
1977年の阿部薫
(1977年)
阿部薫+山崎弘『Jazz Bed』(1971年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
のっぽのグーニー+竹下勇馬、阿部薫没有未来@大崎l-e(2019年)
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)