Sightsong

自縄自縛日記

ボイス+パレルモ@埼玉県立近代美術館

2021-07-15 21:07:19 | アート・映画
なにしろボイスのことが好きなので、ドイツやアメリカの美術館で機会があればかれの作品を探した。そんなわけで、弟子筋にあたるパレルモの作品と合わせての今回の展示は見逃すわけにはいかない。片道1時間半、埼玉県立近代美術館まで出かけてきた。
むかしは気難しく精神が服を着ているような人を想像していた。『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』というドキュを観たらそれが思い込みにすぎないとわかった。むしろ剽軽でさえあり、言動には矛盾があって脊髄反射的でもあり、それが動きをもつボイスの思想をあらわしてもいるのだと思った。
今回もドローイングが展示されているが、静的な構造や硬さや一貫性を拒絶するかのようなそれらはやはり刺激的。冊子に文章を寄せている振付家の皆藤千香子さんもドローイングがいちばん好きだと話していた。一昨年、千香子さんに勧められて、ボイスが幼少期を過ごしたクレーフェを訪れた。多くのドローイングも観ることができた。
ボイスに関する日本語の本は少ないけれど、ミヒャエル・エンデとの対談『芸術と政治をめぐる対話』、それと、最近出た渡辺真也『ユーラシアを探して』は両方ともおもしろい。後者を読むと、ボイスが、ナチズムという歴史、神話的なもの、ユーラシア的なものにずっと複眼的な視線を向けていて、そのフィルターは、かれが幼少時を過ごしたクレーフェの白鳥城のシンボルであったり、ウサギという血と肉を持つ生き物であったり、かつてヨーロッパにも版図を拡げたモンゴル帝国であったりしたことがわかる。かれがフェルトや獣の脂肪を使ったこともそれと無関係ではなかった。包み込むこと、覆い隠すこと、全体性を持つものとして、アートには不似合いな固くないマテリアルを選んだ。今回の展示でもチンギス・ハーンもウサギもフェルトも脂肪も何が描いてあるかわからないドローイングも並べてあるけれど、つまり、そういうことである。
ところで、日本天狗党のサックス奏者・赤木飛夫さんが働いているというので、近くの「cafe & jazz shoji」に立ち寄って、オーナーさんや赤木さんたちと一緒にランチ。美味しいので美術館に行く際にはここにもぜひ。
 
●ヨーゼフ・ボイス
渡辺真也『ユーラシアを探して ヨーゼフ・ボイスとナムジュン・パイク』
クレーフェのエフェリン・ホーファーとヨーゼフ・ボイス
1984年のヨーゼフ・ボイスの来日映像
アンドレス・ファイエル『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』
ミヒャエル・エンデ+ヨーゼフ・ボイス『芸術と政治をめぐる対話』
ケルンのルートヴィヒ美術館とヴァルラーフ・リヒャルツ美術館
ロサンゼルスのMOCAとThe Broad
ベルリンのキーファーとボイス
MOMAのジグマー・ポルケ回顧展、ジャスパー・ジョーンズの新作、常設展ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ