松濤美術館での展示の最終日。大辻清司の作品をいくつも観る良い機会だった。
大辻が、アヴァンギャルドとは特定のスタイルに固定しないことだと言ったことと、コンセプト、オブジェ撮影、ルポルタージュを同じところに持ってきたこととの矛盾をどう捉えるべきなのか、ちょっと整理できないでいる。ただ、牛腸茂雄の「スタイル」が極めて情緒的なもので、それは徹底的に個人に引き寄せているからこそ外部の「スタイル」ではないことは納得できる。
それにしても大辻の撮ったアヴァンギャルドの中に、勅使川原蒼風を見つけて嬉しくなってしまう。自分も、十代から二十代のころ、安部公房『壁』の安部真知による挿絵、蒼風の息子・宏による安部作品の映画化、そのあたりの世界に惹かれていた。