京都もうだるような暑さ。烏丸で「ヒマラヤ」という極寒の映画を見たが、暑さが解消されるわけでもなく、そのまま東山まで歩く。途中で食事をとも思ったが、観光客が多く、そのまま東山青少年センターまでなだれ着く。へとへと。センターはけれど冷房が効いていて極楽。人間に戻る。
演劇で京都にまで繰り出すのはほんと久しぶり。お目当てはつぼさかまりこ出演の「寿歌」。彼女の作品は「さよなら父さん」を見て驚愕して以来ほとんど見ている(前作のY2Pチャレンジは見逃す)。客演では活発な役の多い彼女だが、今回はどうなんだろう、、。
北村想のホンのこと、野心作だとは想像していたけれど、これほど素晴らしい作品とは思っていず、90分ほとんど目が点になりました。
年の離れた男と女に若い男がふとしたことでくっつく。まさしくこのシチュエイションはかのフェリーニの名作「道」ではないか。男が力芸のザンパノ、女が知恵遅れのジェルソミーナ、若い男が綱渡りのイル・マット。みすぼらしい旅芸人たちである。しかし彼らの姿はまぎれなく我等人生の真実でもある。
この演劇には僕らが抱えているすべてのものが詰まっている気がする。核戦争で何もかもなくなってしまった地球。この世の終末に仕方なく出現したイエス・キリスト。生き延びた男と女。けれど毎日を放射能の雪や雨にたたられ、行先もなくただただ前を歩き続ける毎日、、。
絶望的な話なんだけど不思議と明るいんだよなあ。哀しいけれどささやかな希望もある。人間はどういう環境でも生きていけるのか、、。キリストも去り、男と女は再びインダス文明の都モヘンジョダロを目指して歩く。歩かなければならない。
ラスト、放射能に汚染された雪が彼らを横なぶりに殴りつける。照明がコントラストをつける。ストップモーション。壮絶なラストであります。このまま彼らは固まったようにも思えます。それは死を意味するが、、。それとも一瞬のシルエットだったか。
つぼさかが女の情念を体いっぱいに表現する。女の持つ可愛さ、哀しさ、強さ、、すごい。つぼさか、やったね。京都にまで見に来た甲斐がありました。
土肥順一もスケールの大きい演技でした。人間の逞しさ、弱さ、優しさを強く感じられました。
伊藤彰久も難しい役どころを的確に演じられました。さすが役者です。体力もすごいですね。土肥を背負っての演技中、セリフは全然衰えなかった。あのロザリオはそのまま持って帰りたいほどでした。
今年の演劇ベスト5には絶対入る秀作でした。いい時間をありがとう。
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