何気なく見た劇。しかし痛烈に残る作品となった。
舞台に照明が上がると一人パソコンを駆使し、脚本を書いている女性がいる。同棲しているのだろうか、男と些細な会話を交換する。女は脚本作成中の男の不用意な会話に苛立っている。男は優しく女を心配しているだけなのだが、、。
何気ないこの若いカップルの会話がたいした内容でもないのだが、現代風を切りこんでおりなかなか面白い。もう終わりかけの二人かなあとも思ったが、実はそうではないことが後で分かってくる。現代のヤングは意外と優しく繊細である。そこはかと感じられる秀逸な会話である。
執筆女性は最後まで後ろ姿でパソコンに向かっている。と、同時に成人式に出るために着物を着つけてもらう女性が出てくる。先ほどのカップルと同時進行である。という風に二つの物語が舞台で進行してゆく。
成人式の後は父親の自殺の光景である。と言っても後日談での会話で分かるだけなのだが。うーん、成人式の女性も演劇部と言っていたし、ひょっとしてこれは、彼女が僕らの前で書いている脚本が舞台の舞台劇として演じられているのでは、と思い始める。
なかなかうまい脚本である。決して観客に後ろ姿しか見せない脚本家。そして最後、、。
うーん、いいね。何より自殺で生を閉じた父親への思慕が強烈に伝わってくる。何の説明もなく死んでいった人に対して残された家族はどう向き合うか。この主題は舞台が終わったら次のことを即考えている観客に重い鎖をぶら下げてしまう。
1時間20分の短い舞台だったが、後々残る演劇となった。秀作である。
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