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多少太宰の言葉は入ってはいるが、それも装飾として使われる程度で、あまり意味はないような気がする。この作品のいいところは有名小説「走れメロス」からエッセンスだけは生かすが、それからいかに脱却すべきか、という大胆な試みに成功していることだ。
社会はそもそもナンセンス、だから共産主義も無政府主義もそもそもナンセンス、人間、どういう環境にあってもいかに誠実に生きて行けるのかが一番重要なことではないのか、と主人公モキチ氏はのたまう。
そのために親友を人質にし、果てしない珍道中ともいえる人生の旅に出かけることになる。そして彼は、人生に絶望した市長、自分の家族、追いかけロボット等と問答し、果ては原爆のスイッチまで保持する危険な司令官とも戦わなければいけなくなる、、。
ハチャメチャな展開だが、ラストはウルトラマンごとく原爆を持ったまま宇宙のかなたに上ってゆく。この劇のその壮大なスケール感がいい。100分間、観客をじんわり乗せるそのパワーがいい。
読み過ぎかもしれないが、大統領と直結するこの司令官はマッカーサー、絶望状況の市長は昭和天皇、そしてモキチらは兵士、民衆等当時の国民そのものと見ることもできる。
面白かった。楽しかった。太宰はどっかにふっとんじゃったけど、でもそれでよかった気がする。これも一応「走れメロス」ではあるのだ。その奇想天外な空想力に拍手を送りたい。
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