それほど基礎を積んだわけではない学生劇団だろうか。出し物は松尾の現代アングラ劇。これは難しいぞ。人生のアカも知り、血を出すことの痛みをいやというほど経験していないととんでもない劇になってしまう。そもそもやるほうにも見るほうにも余裕がないと難しい演目なのだ。
それは冒頭の裁判シーンで露見する。何人かのセリフの発声がなってないのだ。声を出すということの本質的な練習をどれほどしてきたのだろうか、と少々訝う部分が散見された。
でもみんな当然若い。松尾をやってみたいという彼らの勇気を今回は買ってみたい。2時間を超える長丁場。膨大な登場人物。登場人物の屈折する性格、べとべとする触感をどう出すことができるか。難しいのである。
でも彼らは挑戦した。とにもかくにも一応松尾の世界の輪郭はやってのけた。あの若さでだ。これは大いに称賛に値する。拍手をしたい。
中盤、ふくすけの独白めいたモノローグが4,5分続く。立ち姿、スピード感、せりふ回し。フクスケ役の和田は思いがけず朗々とやり抜く。観客のまなざしと劇の中心部をすっぽり捉えていた。素晴らしい。
この劇をやり遂げたことは彼らにとっては大きいと思う。当然次回も期待することになる。
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