なるほど、これがリーマンショック(サブプライムローン)の一因と目される、巨額詐欺事件の裏側ですか。
非常に興味深いのは、(発言を信じるならばだが)始めから騙そうという意図があったわけではなく、後々提案したプランが達成できないとわかり、そのまま持ち逃げしたという話やね(まあそれならニセ管理職を複数準備する理由とは?て話だが)。その意味で、この件は桁外れの金額から「巨悪」のような印象を最初は受けるかもしれないが、実際には身を守るための小市民的行動だった、とみることができるだろう。
もしこの「小市民」という表現に違和感があるならば、これを「凡庸なる悪」と言い換えてもよい。即ち、そこに強い悪意や強烈なエゴイズムがなくとも、状況の中で保身を優先して行動した結果、大きな災厄を惹起させうる、ということである(その意味では、他の人間とも交換可能な行動原理と考えてよいだろう)。
そしてそこを踏まえると、逃亡時に齋藤自身が詐欺に遭ったこともさして驚くべきことではない。というのも、逃亡時の大きな不安がまずあって、それを解消してくれる提案者がいたので、不安からの脱却=保身という行動原理に基づき、そこに飛びついたという話なのだから。ゆえに相手が本当に信用できる人間かの裏取りよりも、藁を掴むことを優先した、というわけだ。
ただ自分の中で最初不審だったのは、その「凡庸なる悪」がわざわざ動画に出て発言する理由は何か?ということだった。しかし最後の方まで見ていると、罪を着せられて「消された」と思しき人間がおり、自身の身にもそれなりの危険があるため、あえて表にゴリゴリ出ていくことで、むしろ身を守ることにした、ということのようだ(まあそこには、「収監中の不正にまつわる復讐」という側面もあるようだから、ただ保身だけで説明ができる訳ではないようだが)。
諸々の発言を見ていると、「明確な嘘はついていないにしても、都合の悪いことは話していない」感が満載だが、今回の動画はそんな「凡庸なる悪」の類型が見れるという意味で、なかなかに参考になるものだったと感じた次第である。
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