生者は嘘をつくが、死者は嘘をつかない

2023-11-11 11:25:40 | 歴史系

 

 

なるほどメディチ家党首+αの遺体分析とは興味深い。「生者は嘘をつくが、死者は嘘をつかない」と言われるが、史料に表れる劇的なエピソードが、しばしば単なるゴシップの掲載に過ぎなかったことがわかるな(「引きこもり」のように言われた人物の筋肉の発達から、実際は乗馬などを頻繁にしていたことが予測される等)。さしずめ今ならマスゴミ扱いだろうが、まあ昔から人々の野次馬的関心は存在していたことの証左とも言えるだろう(・∀・)

 

まあこの辺は、一代で帝国を築いたティムールが、「びっこのティムール」と言われていたことに関し、実際に遺体を調査したら矢傷によって片足に障害を負っていたことが確認されたような例もあるので、一概には言えないのだけれども。

 

その他、メディチ家の貴族化により太陽に当たらないことで生じる「くる病」が増えたこと、あるいは四歳まで母乳で育てていたこととその悪影響なんて話もおもしろかった。この辺は科学の発達していない時代のこと、病気の原因がわらかずさぞや悩ましかったことだろう(日本でも、食事で白米が増えたことによる脚気だとか、あるいはお歯黒や鉛を含むおしろいの有毒性などは有名で、それにまみれた女性から授乳されていたことが、江戸期の権力者たちの不健康にも色々影響していたのかもしれない)。いな科学が発達した今でさえ、「何となく体によさそうなイメージ」だけで信仰のように唱えられる育児法みたいなものはあるので、昔のこととして笑っている場合でもない、という話である。

 

障害に関する記述のある人物と言えば、シェイクスピアに絡めて前にも取り上げたことのあるリチャード3世だろう。

 

 

 

テューダー朝の仇敵として殺された彼は、シェイクスピアの「リチャード3世」が典型のように、欲にまみれた暴君の典型として描かれ、かつその背景には自分の醜い容姿に対するコンプレックスがあるとして、これでもかという程に醜悪な外見を強調されたのであった。しかし実際に見つかった遺体を解析してみると、当時としては長身の部類に入るが、脊椎側彎症のため体型が曲がっていた可能性が高く、それが強調されて「せむし」としての描写になったことが予測されること、また蒼い目の金髪である可能性が高いことなどがわかったが、もう一つ興味深かったのは、遺体の主をリチャード3世と同定するためDNA検査に協力した人物たちのY染色体の状況から、系図にはない人物の血が混じっている可能性が示唆され、(現在のイギリス王室にもつながる)テューダー朝の正当性に疑問符が投げかけられたことであった。リチャード3世の遺体は正式な王として再度埋葬されるにいたったが、死者=敗者が生者=勝者の残した歴史に関して大きな問いを投げかけた、非常に印象的な出来事だったと言えるだろう。

 

こういった発見を見るにつけ、私などは天皇陵も発掘してみたらええやんと思う。色々とわかることもあるだろうし、今主張している「正当性」に自信があるなら、それをやって困ることなんて何もないんではないか、とね(・∀・)

 

以上。


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