緊急事態宣言は延長されそうだが、そうでなくても外出はしづらい状況、ということで在宅のお供に書いてみましたよと。正直量は見てないので、何かしら強く印象に残った作品を15個に絞っており、ドラゴンボールとかエヴァンゲリオンのような「超メジャー級」のものは除いております。なお、数字はお勧め順というわけではないので悪しからず。
1.灰羽連盟
独特な世界観と美しい音楽が印象的だが、この作品は何より「絆」についての物語である(だから、「世界の謎」は解き明かされず、あくまでそれは背景のまま)。不安になると人はやたら「意味」を求めたがるものだけど、その前に重要なのって抽象的な何かでインチキに自己肯定するんではなく(「保守」の多くが、その実歴史的背景を繊細に考慮するのではなく、ただ過去を、あるいは自己の言説を正当化するために過去を悪用しているだけであるのもその一種)、身近な関係性ではないだろうか。この作品の構造をそういう風にとらえることもできる。
2.ポプテピピック
This is Japan!カオスでありドラッグアニメでもあるが、このごった煮感や声優リセマラ(あるいは関係性妄想)、そして主人公二人の関係性を軸にした世界の話=セカイ系(これも古い言葉やなあ)といった構造全てが、パフォーマティブに日本アニメの状況を体現しておる、とか偉そうに言ってみるテスト。は?そんなことアニメに求めてないって??Bet you're a hater aren't you!
3.ソウルイーター
物語としてもよくできているが、話の構造によって「プロパガンダとは何か」を示す希有な作品でもある。なんせ内容が政治的だったら政治的主張だと思ってる田吾作ばっかやからねー。アメリカのイラク戦争(9.11からの流れ)から間もない頃の作品であるのを知れば、その意味はよりよく理解されるだろう。
21世紀、いな日本アニメ史上の金字塔とさえ言えるのではないか?善悪の境界線の曖昧さ、「ヒーローものという搾取構造」などなど・・・正直、これを見たら勧善懲悪など幼児的にしか感じられない(というのも、そこで様々な背景や評価の微妙さといった「ノイズ」を切り捨てずにはいられないほど、現実を単純化したい&せずにはいられないという精神性が透けて見えるからだ)。ここで描かれたことは、クリント=イーストウッドの「父親たちの星条旗」・「硫黄島からの手紙」などに通じるものがある。
「ちょ聞けよ!」「フランス、フランソワ、フランシスコザビエロ!」「違います、移動式ロングキックです!」
正直、どっからこのワードセンスが出てくるか本当に知りたいwww
6.モノノ怪
スタイリッシュな怪異譚。話自体はおどろおどろしいものも多いが、それを怪しくも美しく描き出している。表現ってこんなに豊かで可能性があるんだなあと感心させられる一作。
7.この世界の片隅に
色々先入観をもって物事を考える前に、その当時の実態というものに目を向けることがいかに重要か、ということを改めて認識させられる作品。勘違いしないでほしいが、この作品=100%正しいなどということではない。というかそもそも、そうやって何某かのものに絶対的な善・絶対的な悪というものを仮託したがる精神性こそが世界の複雑さに目を向けようとしない幼児性そのものなのである。
8.BEASTARS
実存と共生の話。原作はモノローグが非常に多いが、いかにテンポを失わないようにしつつ、しかも適切にアニメという形で表現するかという点に心を砕いており、声優の演技や演出も極めて優れている。
9.初代ガンダム
まあ言わずとしれた傑作ですわな。長いので時間取れねーよ!という人は劇場版でもOK。人間模様の描写は、今見てもなおレベルが高い(ランバ=ラルのおっさんは今見てもかっけーのであるw)。ちなみに一応の「オチ」が見たい人は「逆襲のシャア」をどうぞ(初代の「オチ」という点に限れば、ZやZZを見る必要があるとは少なくとも俺は思わない)。そしてそれらで描かれた「救いとしての母」を意識したアンチテーゼとしては、不人気であった「Vガンダム」がわかりやすいだろう(すでに見た人はシラク隊、カテジナ、シャクティの母、ウッソの母がどうなったかを想起)。
10.地獄少女
わかりやすく言えば「復讐しか選択肢のないスカイハイ」。復讐の連鎖という悲劇を描いている点でも示唆的である(人を呪わば穴二つ)。儚さを思わせる情景描写もよい。1・2・3とあるが、2・3は正直お勧めしない(結果として殺人代行サイトを肯定してるor利用を促進すると危惧して意図的に話の構造や復讐の構造をメチャクチャにしたんじゃないかとさえ思える)。
11.ひぐらしのなく頃に
賛否両論ある作品だが、これを見て考えるきっかけにはよいのでは?と思う(例えば団結力の強い共同体の負の側面と正の側面両方を描写しているし、そこから離脱するとして、では個人になった時の救いは?という点も様々描かれている。正直この話を見てなお「自分のことだから自分で何とかしろ」という発想が変わらないんであれば、それはもう信仰ではないかねと思ったりする)。逆にゲームと違って「推理」要素がかなり脱色されるので、違和感は少なくなる・・・かもしれない。
12.攻殻機動隊
今Netfrixで最新版がやっとりますな。個人的にはテレビ版の「stand alone complex」が特にお勧め。劇場版は押井守節全開なので、見る人によって結構評価がわかれるかなと。
13.ぼくらの
エヴァンゲリオン(というか「ヒーローもの」)の一側面を突き詰めるとこうなる。これをさらに突き詰めるとまどマギになる。個人的には原作の方がより本質に迫っているとは思うが、まあアニメに方もわかりやすい展開としてはありか。
悪魔シスターズの下僕になり隊です(;´Д`)洋アニを逆輸入したって感じだが、悪魔=倫理、天使=脱倫理という逆転構造などもおもしろい。曲もめっちゃポップ&エロス!
15.Fate/ZERO
Fateシリーズの始まりにして「逆説」の物語。Fate/stay nightは実は四部構成で、時間的制約で三部構成となったために、三部の最後を無理やり救いの話にせざるをえなかったらしい(これは月姫のTrue Endの峻厳さを知っていれば、違和感のないところだろう)。その結果として、stay nightは「なんやかんやあってもまあ救われる」みたいな話になってしまっているが、Fate/ZEROはまあその鬱憤を晴らすかの如く、救いのないことないこと。「己が善きことと思って行動したとしても、それは最悪の結果を生み出しうる」というこの世界の逆説をこれでもかというほど見せつけられる。ちなみに、こう書くとただのアンチカタルシス・アンチヒーローものと思うかもしれないが、そも世界とはそういうものである。一体歴史に目を向けたとき、どれだけ多くの逆説が紡ぎ出されてきたことだろうか!ゆえにマックス=ウェーバーは、その著書の中で「善行を行えばよき結果が生み出されるなどと信じるのは政治的未熟児である」と喝破したのであった。
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