ノビネチドリです。深山性の植物の印象であまり高山では見ていません。かつて渓流釣りにはまっていた時期があり奥山の渓谷にしばしば入りました。不思議とクマには一度も出会いませんでしたが、ノビネチドリはかなり頻繁に出会った気がします。湿り気の好きな種という印象で沢地の土壌の発達した場所に見られたことを思い出します。
花はありませんが花後発達した果実がびっしりと付いています。ラン科の種はどれも種子が小さく一つの果実の中におびただしい数がはいっています。ノビネチドリも1つの花穂には20~30の果実がついていますから一体いくつの種子が入っているのか想像もできないくらいです。これがどうやって形成されるのかも不思議です。一つの種子は精細胞と卵細胞の合体でできていることになっていますから、無数の合体がこの中で起こったのか?これも謎です。
似た仲間にテガタチドリという種がいます。いずれも根系が名前の由来で、手の形に根が四方八方に伸びているのがテガタチドリで数本が長く伸びているのがノビネ(伸び根)チドリとされます。見えない地中の形質で名前を付けられるより見える地上の形質で名前を付けていただくと疑問も少なくなるかもしれません。