森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ハナカンザシ

2012年03月22日 | 自然観察日記
さすが大雪もかなり量が減ったとはいえまだまだ家の周囲は白い大地です。言葉は冷静でも心の中では雪消えが待ち遠しく爆発寸前。雪のない地方がうらやましく思う日々です。この間の「ロス」は大きいなぁ。しかし、もうすぐです・・・。
ハナカンザシという名前が付いているキク科植物です。オーストラリア原産なのだそうですが、キク科にしてはなんとなく雰囲気が違う花ですね。一見キンポウゲの仲間のような雰囲気もあります。しかし、よくよく見るとおしべと思われるものは管状花です。かさかさした感じで乾燥地域に適応した種のようです。
単純に雄しべ雌しべを沢山集めたキンポウゲ科の花とわざわざ管状花をつってそれを中心に沢山集めたキク科の花。長い進化の過程を経て結果としては同じような構造になってしまう。不思議ですね。(なお、外周を飾る花弁様のものは、キンポウゲ科は多くは「がく」でキク科は舌状花の花弁です)

渦巻き構造

2012年03月21日 | 自然観察日記
若芽やつぼみの中に折りたたまれている葉や花の仕組みも興味深いものがあります。多くは渦状に折りたたまれているように見えますが、一見不規則な形に見えるものもあります。完成形で折りたたまれているわけではなく、いわば葉や花の原基の状態が少し進んだ状態で止まっているように見えます。その後、形態形成において細胞の分裂する方向に規則性があるのでしょう、意図された形態が作られていきます。いずれにせよ微小な世界にある造詣の美しさに見入ってしまいます。
これはシダ植物のマルハチの幼い葉の渦巻き構造です。大きな渦の中に小さな渦があり、その小さな渦の中にさらに小さな渦がある・・・。フラクタル構造というのがあります。どんな意微小な世界でも元の形と同じ構造になっているという相似性の造詣です。生物の起源にも関連づけられる理論の一つだそうですが、興味深い話です。そして、美しい構造です。

イワチドリ

2012年03月20日 | 自然観察日記
県内には自生はないと思いますが、近い種にコアニチドリという小型ランがあります。県境の渓谷にときどき見られます。イワチドリを一回り小さくしたものですが、これはイワチドリのように魅力がないせいか園芸化されることはなかったようです。自生のイワチドリを見ているわけではないのですが、写真などで見る限りではコアニチドリと大差ない要素を持っています。赤い斑紋もありますし、形状もほぼ同じ。花数はむしろコアニチドリのほうが多いですね。しかし、注目を浴びないほうがランにとっては幸運で、自然の中でゆったりと暮らしていけます。西日本のイワチドリの自生地はどうなっているのでしょう。コアニチドリと同じように人々の意識の中では極普通にある花であってほしいものです。
しかし、選抜され交配され園芸化されてイワチドリもこんな姿になってしまったのかと驚嘆します。マニアでもありませんからこれがどれほどの価値があるのか分かりませんが、改良してきた時間と技術の向上に腐心してきた人々の努力は凄いものがあるのでしょう。

ソフロニティス

2012年03月19日 | 自然観察日記
洋ラン展です。様々なランが展示されていて、その豪華さといい造詣の不思議さといいただただ圧倒されます。そんな中「ソフロニティス」というランに出会いました。ざっくりいって小さなカトレアの仲間です。私はどうもこの色の花に弱いようで、ついつい引き込まれてしまいます。かつて、マスデバリア(ビーチアナ)の同色の花に魅せられて嵌りそうになったことがありました。栽培環境にないのを承知で手に入れてわずか2年で枯らせたことがあり、ランには深い入りしないことにしようと心に決めたものです。朱のような赤・・・・。なんとなくうずくんですね。元気が出ます。

里山の雑木林 残雪150cm

2012年03月18日 | 風景
先日の戻り寒波で再び積雪量が増した里山の雑木林、ここは150cm前後です。場所によって早い遅いはありますが、どう見積もっても4月中頃の雪消えでしょうか。各地の花の名所の話が聞こえてきます。静岡のカワズザクラの満開のニュースがネットに載っていました。およそ1ケ月遅れ。どこも例年以上日遅い花便りです。国営越後丘陵公園里山フィールドミュージアムのカタクリはこの下に眠っていて、圧巻の大群落は4月中下旬に出現することになります。

ヤマモミジ 切断面

2012年03月18日 | 自然観察日記
スノーシューでカタクリ群生地の遊歩道を歩いてみました。斜面に生える潅木が雪に押されて曲がったり(根曲がりの原因)、雪の加減で枝が裂けたりしています。その中で、1本のヤマモミジが枝折れした状態で園路を塞いでいました。折れた先を切り落とし、全体を起こしました。
気がつくと切断した面はみるみる樹液で潤ってきます。雪面を背景にした写真では露出が合わないのでよく分からないかもしれませんが、すごい勢いで樹液が出てくるのです。晩秋に切ってもほとんど変化がないのに、この季節は雪に埋もれながらもすごい反応です。気温は決して高くありませんから、この違いは光の周期(日長の変化)がスイッチの役割をはたしているのでしょう。樹液は根からの水分の吸収でまかなわれます。日長の変化は芽か茎。この間を結ぶ「神経」のようなものは存在していません。ではどうやってこの仕組みができているのでしょうか。興味深い問題です。液はなめてみると甘みを感じます。まさにメイプルシロップです。

ウサギの雪跡

2012年03月18日 | 自然観察日記
1羽のウサギが目の前を疾走していきました。カメラを準備する暇なく小尾根の反対側に言ってしまいました。真っ白な体毛ですから雪面を走っていてはほとんど分かりません。確かな証拠は新鮮な足跡です。ツメの跡も分かります。それにしても大きなウサギの足跡でした。

ヒポエステス 花

2012年03月17日 | 自然観察日記
観葉植物のヒポエステス、といっても私にはあまり馴染みのない種ですが、花を見てキツネノマゴの仲間と判断しました。在来のキツネノマゴとは2枚の花弁のバランスが異なりますが、かもし出す雰囲気は似ています(ちょうど180度回転したような形をしています。つまり天地が逆さま)。花の大きさとか色具合もそっくりで、馴染みのない種であっても、共通項が分かるととても親しみやすくなります。

水を溜める アナナスの一種

2012年03月16日 | 自然観察日記
パイナップルは多くの国でアナナスと呼ばれているのだそうですが、この仲間の水対策は巧妙です。茎に付く葉の部分を利用して水がめを作っています。水に沈んでいる花芽や、水に接触している部分の耐水性を高め、菌などにも冒されにくくしています。過湿にすると根腐れするなどという心配はないようです。面白いですね。
なんでこんなことになったのでしょうか。どうも答えは彼らの住処にあるようです。よほど水事情が悪いのでしょうね。多くのアナナスは熱帯アメリカに分布していますが、熱帯アメリカといえばあまり水事情は心配しないでよさそうな場所・・・。しかし、ここは大森林地帯であるため、彼らは着生という生き方を選んで生き抜いたようです。樹上は雨は降っても直ぐに流れ落ちるために、極度に水事情が悪い場所なんですね。そこで考え出したのがこんな仕組みなのでしょう。
こういう適応は単子葉の植物で出来ることで双子葉の種にはみられません。また、乾燥にも強くしておく必要があるために少々の水切れは耐えられます。この点をもっと進化させたのがエラープランと呼ばれるチランジアの仲間なのでしょうね。

サトイモの仲間の落葉痕

2012年03月15日 | 自然観察日記
大形の葉をつける種の落葉した後の「傷跡」はなかなか大変です。かつてはこの面を使って物質の行き来を盛んにしていた場所ですから、そこを閉鎖するとなると・・・、想像しただけで「ごくろうさん」と言いたくなりますね。離層という組織が発達するといえば簡単ですが、この性質を身につけるまでの過程は並大抵のものではないはずですね。落葉という性質を身につけたときに、生育不適な季節がある場所にも進出できる能力を持ったことになります。

アマミセイシカ

2012年03月14日 | 自然観察日記
県立植物園に訪れたときちょうどアマミセイシカが花盛りでした。絶滅危惧種で奄美大島特産の常緑ツツジです。葉はやや大きいアセビの葉のようで、花には上部の裂片には黄緑色の斑点があります。「セイシカ」は「聖紫花」だそうで、うっすらと紫色をしたやさしいツツジでした。
ところで、この植物園はツツジの収集に力を入れているようで、各所外国種のツツジが植栽されています。何種か花を付けているものもありましたが、花はこれからというところ。それはそうと、この温室ができてかなりの時間が経ちましたが、植栽されている樹木が元気がありません。この園にくる楽しみの一つバオバブの大木もとうとう枯死していました。そのほかにも多くの種に力がありません。生き物ですからある程度のロスは計算されてはいます。園の使命の一つに貴重種の育種があると思いますが、自生地で保護できないと考えられる場合は十分な配慮の元環境を作って技術の知識を持った人が育種をすることが求められます。展示されるものは保護レベルが低めなのかもしれませんが、増殖がままならない種を自生地から移動させて結局枯死させてしまうのは残念でなりません。

トラディスカンティア

2012年03月13日 | 自然観察日記
外来種でムラサキツユクサと同じ仲間。このグループをトラディスカンティア(Tradescantia)といいます。略して「トラカン」。大学当時、実験植物としていろいろな種がいろいろな場面で使われたことを思い出します。この花で私は不定根を作らせた実験をしました。3数性で花弁は2おしべは6、雌しべは1ですが、心皮が3室に別れています。シンプルで清楚な花ですね。

ジンジャーの一種 実

2012年03月12日 | 自然観察日記
トロピカルな花と思いきや良く見ると果実です。思い出しました。ミョウガの実も同じ問うな造りで、特に果実の内皮が鮮やかな赤い色をしていましたが、この種も同じです。遠目には花弁のように錯覚してしまいますが、しべと思われる辺りにあるのは種子です。派手な色をしているのは種子を食べてもらって他に運んで欲しいためと考えたほうがいいのでしょうか。ショウガ科の植物は多くを知らない私ですから、詳しいことは分かりませんが、ショウガ科の種はこういう性質があるのでしょう。