「村社八幡宮」の神社の屋根が意外に見どころだった。鬼瓦の上部には3本の経文が乗せてある。経文というと仏教ではないかと思うが、そこは神仏混交のごちゃごちゃ信仰が表現される。その下に「綾筋(アヤスジ)」という2本の筋がある。ふつうは「Λ」型の2本の線が経文と平行または水平にあるが、ここは交差しているところがけっこう珍しい。
その下の左右には「雲」がオーソドックスに配置され、その中央には蓮の花がありその真ん中にキク科の家紋がある。「村社」にしては立派な鬼瓦だ。
屋根の左右には唐獅子の飾り瓦があった。阿吽それぞれあるが、「阿」型獅子の目は片方しか見えない。しかも蜘蛛の巣に捕らえられている。「吽」型獅子は逆立ちしているがお尻が欠けていた。表情はかわいい。これで魔除けになるのかなと心配してあげる。
さらに、松の樹の瓦を発見。松と言えば不老長寿の生命力を表したり、門松のように神が降臨する縁起物だ。同時に、唐の詩人「白居易」の詩に「瓦に松有り」というくだりがあり、それは古びた家を象徴したものだそうだ。両面の対照的な意味があるのがユニークだ。この「瓦の松」は初めて見たように思う。
これらの飾り瓦は、邪気を祓い福を呼ぶものとしての意味があるが、これだけ豊かな作品がお寺ではなく「村社」に残っているのがすばらしい。境内もそこそこ清掃されていて雑草も少ない。カエルや羽黒トンボが遊びにきていた。周りの田園風景にはシロサギが何羽も目撃できた。都市化に包囲された「村社」を昔から支えてきた集落のひたむきさが伝わってくる。