MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

敢えて村上春樹を擁護する

2010-05-28 21:14:37 | Weblog

村上春樹『1Q84 BOOK3』の精神分析: 斎藤 環(精神科医)(Voice) - goo ニュース

 私は村上春樹の作品を全く評価していないが、それ以上に評価していないものは

村上春樹の作品を持ち上げる評論の類のものである。ここに書かれている斎藤環

の文章も村上文学のファンが好んでするような、いかにも自分の事が書かれている

ような体の読解の仕方でうんざりしてしまう。それに本当に村上の作品を分かって

読んでいるのかどうかも疑わしい。例えば、「さきがけ」のリーダーの“筋の通った

見事にまっすぐな鼻”を村上が“カレンダーの写真に出てくるアルプスの山”に例えた

ことに対して斎藤は「かつての村上ではありえなかったような凡庸きわまりない比喩

である」と断じてしまっている。別に私は村上の肩を持つつもりもないし、持ちたくも

ないのだが、これは本当に凡庸きわまりない比喩であろうか? 男の鼻をただの

アルプスの写真ではなく、“カレンダーの写真”に出てくるアルプスの山とすることで

男の鼻の大きさとカレンダーの写真サイズのアルプスの大きさがリンクするのである

から比喩としては分かりやすく正確である。男の鼻とアルプスは十分に「異なった

二つのイメージ間」をジャンプしていると思う。おそらく斎藤は“カレンダーの写真

に出てくるアルプスの山”という文章自体を凡庸と決めつけてしまっているのである。

それほどの才能がないにもかかわらず、あるいは自分には才能があると誤解して

いるためなのかラカンの真似をして大失敗している典型的なおっちょこちょいである

斎藤環のような精神科医にはお世話になりたくないと心から願う今日この頃。


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『ボーダー』 70点

2010-05-28 21:03:50 | goo映画レビュー

ボーダー

2007年/アメリカ

ネタバレ

‘名コンビ’という遺産

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 ロバート・デ・ニーロやアル・パチーノの全盛期を知る人たちにとっては物足りなさを感じることはやむを得ないのであるが、それでも新しいテーマに挑んだ点を見逃すわけにはいかない。
 この作品のテーマは‘コンビとしての優秀さ’を受け継ぐことの困難さである。ニューヨーク市警に勤めるターク刑事とルースター刑事は名コンビとして、そのノウハウをサイモン・ペレスとテッド・ライリーの若いコンビに受け継がせることが役割となるはずなのだが、作品内で名前が挙がる‘ジョン・レノン&ポール・マッカートニー’や‘刑事スタスキー&ハッチ’のようにコンビとしての彼らの衣鉢は‘マンツーマン’のようにはなかなか継がれることはない。それはおそらく例え名コンビと謳われようとも絶えず二人の間には葛藤があり、関係のバランスが微妙に崩れるだけですぐに悪化してしまう余裕の無さが他者にノウハウを教えるような暇を与えないからなのであろう。
 長い間コンビの関係を良好に保っていられたターク刑事とルースター刑事は、ターク刑事が裁判で無実になった容疑者を逮捕するために仕掛けた瑣末な罠をきっかけに‘正義’が暴走しはじめることになった。それは2人が刑事だからであり、‘レノン&マッカートニー’ならば良質の作品の追求の仕方に齟齬をきたしたということになるのであろう(そしてそれは何故か大抵‘女性’が絡んでくるのである)。
 このようにテーマは悪くないのであるが、演出上の分かり難さは否めない。


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