村上春樹『1Q84 BOOK3』の精神分析: 斎藤 環(精神科医)(Voice) - goo ニュース
私は村上春樹の作品を全く評価していないが、それ以上に評価していないものは
村上春樹の作品を持ち上げる評論の類のものである。ここに書かれている斎藤環
の文章も村上文学のファンが好んでするような、いかにも自分の事が書かれている
ような体の読解の仕方でうんざりしてしまう。それに本当に村上の作品を分かって
読んでいるのかどうかも疑わしい。例えば、「さきがけ」のリーダーの“筋の通った
見事にまっすぐな鼻”を村上が“カレンダーの写真に出てくるアルプスの山”に例えた
ことに対して斎藤は「かつての村上ではありえなかったような凡庸きわまりない比喩
である」と断じてしまっている。別に私は村上の肩を持つつもりもないし、持ちたくも
ないのだが、これは本当に凡庸きわまりない比喩であろうか? 男の鼻をただの
アルプスの写真ではなく、“カレンダーの写真”に出てくるアルプスの山とすることで
男の鼻の大きさとカレンダーの写真サイズのアルプスの大きさがリンクするのである
から比喩としては分かりやすく正確である。男の鼻とアルプスは十分に「異なった
二つのイメージ間」をジャンプしていると思う。おそらく斎藤は“カレンダーの写真
に出てくるアルプスの山”という文章自体を凡庸と決めつけてしまっているのである。
それほどの才能がないにもかかわらず、あるいは自分には才能があると誤解して
いるためなのかラカンの真似をして大失敗している典型的なおっちょこちょいである
斎藤環のような精神科医にはお世話になりたくないと心から願う今日この頃。