MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『美女と野獣(2014)』

2014-11-20 00:35:17 | goo映画レビュー

原題:『La Belle et la Bête
監督:クリストフ・ガンズ
脚本:クリストフ・ガンズ/サンドラ・ヴォ=アン
撮影:クリストフ・ボーカルヌ
出演:レア・セドゥ/ヴァンサン・カッセル/アンドレ・デュソリエ/エドゥアルド・ノリエガ
2014年/フランス・ドイツ

「禁」の犯し方の違いについて

 本作がこれまでの『美女と野獣』と違う点は、王子が野獣になった原因が具体的に描かれていることである。王子が王女と交わした禁を犯して黄金の雌鹿を仕留めてしまうのであるが、その黄金の雌鹿の正体は王女自身で彼女は実は森の精だったのである。それに激怒した森の神が王子に呪いをかけて野獣に変えてしまい、王国をイバラで覆ってしまったのである。
 例えば、日本のおとぎ話の『鶴の恩返し』であるならば、自分を助けてくれた老爺のために鶴に変装して恩返しをしたが、「禁」を犯したために鶴に去られてしまったというもので、老爺に同情できないことはない。しかし王子の場合は単に性格の悪さを露呈した末の罰なのであるから、同情のしようがなく、だからそんな野獣に好意をよせるベルにも共感できなかった。
 どうもこの点が気になって、映像の優美さは評価できるものの、美女にも野獣にも感情移入できなかった。何故この作品が日本でヒットしているのか理解に苦しむ。


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「はっぴいえんど」の功績

2014-11-19 00:55:58 | 邦楽

 はっぴいえんどは最初に「日本語ロック」を確立したということで知られているが、

私にはこの意味がよく分からなかった。例えば、はっぴいえんど以前にもザ・モップス

をはじめとする「グループサウンズ」と呼ばれるバンドが存在していたからである。

高橋幸宏の『心に訊く音楽、心に効く音楽』(PHP新書 2012.8.31)を読んでいて、

はっぴいえんどの功績とは、「四畳半フォーク」のような内省的な歌詞とロックの

リズムを組み合わせたことにあったことが分かったのであるが、はっぴいえんどの

サウンドはバッファロー・スプリングフィールドを基本にしており、今聴きなおして

みると、バッファロー・スプリングフィールドのサウンドはロックとしてはおとなしく、

本格的なロックとして聴くならばはっぴいえんどよりも圧倒的にザ・モップスの方が

今なお聴くに堪えられるロックサウンドだと思う。特に洋楽のカヴァーは完璧である。


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女優の素質十分なダンサー

2014-11-18 00:12:48 | Weblog

昨夜、TBSの「あけるなキケン」という番組を見ていたら、驚くべき女の子が出演していた。

映画をテーマとして、ゲストに犬童一心監督が招かれていたのであるが、映画が好きな

その女の子は観る時はDVDで一日に5本観ることもあり、好きな作品として『ベティ・ブルー

愛と激情の日々』(ジャン=ジャック・ベネックス監督 1986年)、『愛のむきだし』

(園子温監督 2009年)、『時計じかけのオレンジ』(スタンリー・キューブリック監督

1971年)と、寄りにもよってイタい作品3本を挙げたのである。藤井萩花は「Flower」や

「E-girls」のダンサーらしいのであるが、寧ろ女優としての素質があるのではないだろうか

まだ20歳らしく、雰囲気も悪くなかったから一度くらいチャレンジしてみるのもいいと思う。

私には上の写真のどの子が藤井萩花なのか分からないのであるが。


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『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』

2014-11-17 00:44:30 | goo映画レビュー

原題:『The Expendables 3』
監督:パトリック・ヒューズ
脚本:シルヴェスター・スタローン/クレイトン・ローゼンバーガー/カトリン・ベネディクト
撮影:ピーター・メンジース
出演:シルヴェスター・スタローン/ジェイソン・ステイサム/アントニオ・バンデラス
2014年/アメリカ

古い「消耗品」の取り扱いについて

 主人公のバーニー・ロスの心理が理解しにくい理由は、いつものようにメンバーを集めてCIAのミッションを受けてソマリアの武器取り引きを阻止しようとしたものの、組織のリーダーが元エクスペンダブルズ最初期メンバーだったコンラッド・ストーンバンクスだったことが分かり、返り討ちに遭って作戦が失敗してしまうのであるが、一緒に戦ったリー・クリスマス、ガンナー・ヤンセン、トール・ロードを解雇して新たにメンバーを集めてミッションを遂行することで、古い「消耗品」は失いたくないが、新しい「消耗品」は失っても構わないという感情は、どう考えても逆だと思うのである。あるいは作品中盤で本当に老いているレギュラーメンバーを「休憩(インターミッション?)」させたということなのだろうか。
 だから例えば、ドクター・デスがリー・クリスマスの目の前でナイフをちらつかせて『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(ヘンリー・セリック監督 1993年)のパロディーである「ナイフ・ビフォア・クリスマス(クリスマスの目の前のナイフ)」というセリフや、新人の4人が敵に捕まった際に、ストーンバンクスが彼らにゼッポ、グルーチョ、ハーポに、チコの代わりにチカ(Chica スペイン語でお嬢さんという意味)とマルクス兄弟の名前をあてがったギャグなどは面白いと思ったが、前2作と比較するならばストーリーそのものは明らかに弛緩している。
 そんなことを思いながら観ていたら、最後にニール・ヤングの「オールド・マン(Old Man)」が聞こえてきたから驚いた。なるほど、敢えて若手を投入した理由は、この曲をラストに流したかったからなのかと妙に納得してしまった次第である。本作を勘案しながら「オールド・マン」を和訳してみたいと思う。因みに「オールド・マン」という曲は、若くしてミュージシャンとして成功したヤングが、カリフォルニア北部に広大な土地を買い、それを見たある老人が「君のような若者がどうやったらこんな土地を買えるんだね?」と訊ねた際に、「本当に運が良かっただけなんで」とヤングが答え、「そんなことがあるんだね」と老人が答えた対話からインスピレーションを得て書いたものとされている。以下、和訳。

「Old Man」 Neil Young 日本語訳

御老体
俺の人生を見てみろよ
かつてのあなたとそっくりだろう
御老体
俺の人生を見てみろよ
かつてのあなたとそっくりだから

御老体
俺の人生を見てみろよ
24年生きてきてまだまだ先もある
楽園で一人で生きていると
2人のことを比較してしまう

愛を失った代償は大きかった
無くならないものを俺にくれないか
ギャンブルで使われることのないコインのように
あなたを正しい理解に導く

御老体
俺の人生を見てみろよ
かつてのあなたとそっくりだろう
俺には一日中俺を愛してくれる人が必要なんだ
俺の目を見てくれれば
それが嘘じゃないと言えるはず

あなたの目を見つめると
子守唄が同郷の街を流れているようだ
それは俺にとっては大した意味をなさないが
あなたにとっては重要なはず

俺は極めて珍しい存在
時がどのようにして流れるのか見ているうちに
ついに俺は一人ぼっちになってしまい
あなたを正しい理解に導く

御老体
俺の人生を見てみろよ
かつてのあなたとそっくりだろう
俺には一日中俺を愛してくれる人が必要なんだ
俺の目を見てくれれば
それが嘘じゃないと言えるはず

御老体
俺の人生を見てみろよ
かつてのあなたとそっくりだろう
御老体
俺の人生を見てみろよ
かつてのあなたとそっくりだから

Neil Young - Old Man (Live) [Official Audio]

Neil Young - Old Man - Live at Massey Hall


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『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』

2014-11-16 00:50:46 | goo映画レビュー

原題:『Grace of Monaco』
監督:オリヴィエ・ダアン
脚本:アラッシュ・アメル
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:ニコール・キッドマン/ティム・ロス/フランク・ランジェラ/パーカー・ポージー
2014年/フランス・アメリカ・イタリア・ベルギー

「モナコの美質」について

 本作は主人公のグレース・ケリーの撮影シーンから始まる。ブルーバックを利用して車が走るシーンが彼女のどの作品のものなのか定かではない。ここだけ観るならばその後モナコ公妃となった女優の前日譚として描かれた程度の些末なものでしかないが、何故かこのシーンはラストで、同じ場所でグレースが椅子に座ってこちらを見ている短いシーンとしてもう一度現れるのである。
 これではまるで、その間に挟まれているメインストーリーがグレースの見ていた夢のように見えてしまう。そのような演出に文句を言うつもりはないのであるが、どこまで史実に忠実なのか曖昧な本作の言い訳として機能してしまうきらいがある。グレース・ケリーは1956年4月に結婚しているのであるが、5年経ってようやく「モナコの歴史、王室の仕組み、完璧なフランス語、公妃の作法、正しいスピーチ」を学び始めるという状況がどうしても理解しにくい。いくらハリウッド女優だったとはいえそんなに甘やかされることも、グレース本人さえ自分を甘やかすこともないと思うし、寧ろ「女優」だったからこそ本作で描かれているように公妃として必要なことは早々に全て学んでいたはずなのだから、例えフィクションであったとしても説得力が感じられないのである。


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『イコライザー』

2014-11-15 20:03:17 | goo映画レビュー

原題:『The Equalizer』
監督:アントワン・フークア
脚本:リチャード・ウェンク
撮影:マウロ・フィオーレ
出演:デンゼル・ワシントン/クロエ・グレース・モレッツ/マートン・コーカス
2014年/アメリカ

 主人公の心情を暗示させる本のタイトルについて

 「19秒で世の不正を完全抹消する」という惹句を正確に捉えるならば、19秒内で素早い行動を起こして敵を倒すというよりも、行動を起こす前に目視で得た周囲の情報を収集した後に、19秒で「情報処理」を行うというものであり、だから主人公のロバート・マッコールは自身が勤めているホームセンターに強盗が入った際に、退治しようとした直前に犯人の背後から子供が見えたために、行動を控えて犯人の乗って行った車のナンバーを覚えておいて後で退治したのである。
 ロバート・マッコールがあまりにも強すぎるという感じは拭えないが、例えば、娼婦のテリーと最初に出会った時に、マッコールが読んでいた本はアーネスト・ヘミングウェイの『老人と海(The Old Man and the Sea)』であり、この時のマッコールの心情を勘案するならば、諜報部員という仕事を引退した後の自分と主人公の老人を重ね合わせながら「解脱」を試みていたはずだが、テリーの悲惨な境遇を知ってしまった後は、セルバンテスの『ドン・キホーテ』を読みだして敢えて無謀な戦いに挑むことを暗示させ、ロシアまで赴きロシアンマフィアの首謀者のウラディーミル・プーシキンを仕留めた後は、ラルフ・エリソン(Ralph Ellison)の『見えない人間(Invisible Man)』を読むことで、再び目立たない人間として生きていくことを暗示させるような本のタイトルの使い方が秀逸だと思う。
 マッコールが読書の場として利用していたカフェのシーンが、エドワード・ホッパー(Edward Hopper)の絵画のような雰囲気が出ていてよかったとも思う。


『ナイトホークス(Nighthawks)』(1942年)


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『曲がれ!スプーン』

2014-11-14 00:09:16 | goo映画レビュー

原題:『曲がれ!スプーン』
監督:本広克行
脚本:上田誠
撮影:川越一成
出演:長澤まさみ/三宅弘城/諏訪雅/中川晴樹/辻修/志賀廣太郎
2009年/日本

正反対の「本物」と「理想」について

 「カフェ de 念力」というカフェのマスターである早乙女が店にこのような名前を付けた理由が興味深い。マスターは野良犬に追いかけられた経験を持ち、壁際まで追い詰められた時に、「スポーツバッグ」が転がってきて、地面をひとりでに転がっていった「スポーツバッグ」を野良犬が追いかけていったために助かったことで、いつかそのエスパーが店に来て再会できるようにという願いを込めて付けられたのである。カフェに集う本物のエスパーたちはそのように自分の姿を見せずに超能力を使うエスパーこそ理想とするエスパーだと語り合っているのであるが、そのスポーツバッグに入っていたのは、彼らが「偽者のエスパー」として断罪した「細男」の神田であることは、桜井米との会話の中で私たちは知ることができる。つまり「本物」であることが必ずしも「理想」であるとは限らないどころか、「偽者」が「理想」である可能性さえあるのだ。
 『サマータイムマシン・ブルース』(本広克行監督 2005年)においてもタイムパラドックスを分かりやすく検証していたが、超能力に対するスタンスの取り方というのはここらへんにあるように思う。


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『マンザイ太閤記』

2014-11-13 00:05:45 | goo映画レビュー

原題:『マンザイ太閤記』
監督:沢田隆治/高屋敷英夫
脚本:城山昇/高屋敷英夫/鈴木良武/伊東恒久/吉田喜昭/山崎晴哉
撮影:結束義博
出演:ぼんちおさむ/里見まさと/島田紳助/松本竜介/島田洋七/島田洋八/笑福亭仁鶴
1981年/日本

 「コマネチ」が無いギャグ映画について

 当時流行っていた出演者たちのギャグを取り入れたストーリー展開は、当時は面白かったのかもしれないが、今改めて観なおしてみると全くギャグが弾けておらず、ビートたけしは吉本所属ではないので本作に参加していない。しかし「本能寺の変」の解釈は独特で、落成祝いに贈ったにも関わらず、ホトトギスと見分けがつかない織田信長に「ウグイス坊や」を殺され恨みを持った明智光秀が「我が敵は本能寺にあり」と叫び自軍と共に本能寺へ向かうのであるが、実は既に本能寺は信長が自分が槍を持って「敦盛」を舞っていた時に、ロウソクを倒したことによる失火で炎上しており、そこにたまたま居合わせた森蘭丸に見つかって犯人扱いされたのである。
 その悲報を聞きつけた豊臣秀吉の軍隊が京都に駆けつけ、天王山で明智光秀の軍と対峙することになる。秀吉に捕えられた光秀は「今捕まってたまるか。このままやったらな、わいが殿殺しの張本人にされるんや。わいは天下を取って正しい日本史を書き直すまでは死ねんのや」と語る。このように歴史の「記録」を巡る考察は現代の時代劇においては欠かせないテーマであるはずで、『蜩ノ記』(小泉堯史監督 2014年)に欠けている視点なのである。
 因みにねねから貰ったプレゼントを開ける時に藤吉郎が口ずさむ歌は布施明の「開けてみれば愛」。


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『早春物語』

2014-11-12 00:44:40 | goo映画レビュー

原題:『早春物語』
監督:澤井信一郎
脚本:那須真知子
撮影:仙元誠三
出演:原田知世/田中邦衛/由紀さおり/仙道敦子/平幹二朗/林隆三
1985年/日本

 主演よりも脚本家が気になる作品について

 私がこの作品に興味を抱く理由は、主演が原田知世だからということではなく、脚本が那須真知子だからということに尽きる。翌年に公開された『化身』(東陽一監督 1986年)については既に書いたように決して悪い作品ではないが、那須が「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズの合間に書いたということもあるのか、本作の主人公の沖野瞳はかなりエキセントリックな性格である。
 しかし例えば、そのようなませた少女の沖野瞳の相手をすることになる42歳で独身の梶川真二が乗っている車のナンバーが「品川58 と 59-63」で「ご苦労さん」と読ませるところや、ラストシーンでアメリカに向かうために成田空港にいる梶川を見送りに来る沖野瞳に、『探偵物語』(根岸吉太郎監督 1983年)のラストシーンで演じられた薬師丸ひろ子と松田優作との空港でのディープなキスシーンの再現を避けるようにキスをさせなかったところに工夫は感じられるのである。まさか約20年後に『デビルマン』(那須博之監督 2004年)という「事故」が起こることなどまだ誰も想像していないだろう。
 因みに沖野瞳の友人の沢田真佐子が教師の横谷と出てきたラブホテルの向かい側には語学学校のアテネ・フランセがあるのだが、実際にあったのかどうかは寡聞にして知らない。


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『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』

2014-11-11 00:30:22 | goo映画レビュー

原題:『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』
監督:永田琴
脚本:永田琴
撮影:板倉陽子
出演:門脇麦/道端ジェシカ/ディーン・フジオカ/村上淳/鶴見辰吾/木内みどり/蛍雪次郎
2014年/日本

「寂静の日々」の描き方について

 本作を分かりやすく例えるならば、『食べて、祈って、恋をして』(ライアン・マーフィー監督 2010年)のような「自分探し」の物語である。しかし根本的な問題として主人公のモデル兼ヨガインストラクターである唐沢空美(KUMI)がヨガを熟知しているにも関わらず、恋愛や仕事上のストレスにより心身ともに疲弊してしまうという状況が作品のテーマと合っていないと思う。
 だからと言って本作が失敗作だとは思わない。何故ならば「人はいつも道に迷って、そのたびに何かを求めてもがくけど、その答えは自分の中にある。」それに気づかせてくれるのはヨガというよりも、かけがえのない友情や恩師であることが描かれているからであり、辛うじていわゆる「ニューエイジ思想」のような薄気味悪さからは逃れているように思う。
 ラストの5分間の瞑想前のヨガのシーンは美しく、道端ジェシカのセリフ回しに多少の難はあるものの、もう一人の主人公である本沢海空を演じている生駒里奈はずいぶん演技が上手いと感心していたら門脇麦だった。


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