MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ズタボロ』

2015-05-21 00:12:36 | goo映画レビュー

原題:『ズタボロ』
監督:橋本一
脚本:高橋泉
撮影:葛西誉仁
出演:永瀬匡/荒井敦史/中西晶/堀井新太/成田瑛基/木村祐一/佐藤二朗/平田満/南果歩
2015年/日本

「優秀」な不良の生き様について

 画面に「ドン・キホーテ」や「和民」の看板、あるいは『ホットロード』(三木孝浩監督 2014年)の映画のポスターが映っているからといって誤解をしてはいけない。例えば、主人公の板谷コーイチの母親の良子が息子に差し出す一万円札は福沢諭吉ではなく聖徳太子なのであるから1984年以前の話で、つまり本作は高橋ヒロシ原作の『クローズ』よりも、きうちかずひろ原作の『ビー・バップ・ハイスクール』に近いといえるのであるが、それでも板谷たちは大学付属の高校に通っているのだから、少なくとも「聖徳太子」を「せいとくたこ」とは読まないほどに頭は良いのである。
 その頭の良さはコーイチに「獄門」にもヤクザにも属さない生き方を選ばせる。暴力描写ばかりであるが、個人的には『王妃の館』(2015年)よりも本作の方が橋本一監督作品としてよくできているように思う。つまりコメディーよりもバイオレンス作品の方が性に合っているのではないだろうか。


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『Zアイランド』

2015-05-20 00:07:09 | goo映画レビュー

原題:『Zアイランド』
監督:品川ヒロシ
脚本:品川ヒロシ
撮影:柳田裕男
出演:哀川翔/鶴見辰吾/RED RICE/山本舞香/鈴木砂羽/宮川大輔/木村祐一/大悟/水野絵梨奈
2015年/日本

監督がこだわる「数字」について

 銭荷島に乗り込む際に、宗形博也たちが乗っていたトラックのナンバーは「5910」で「極道」と読め、一方、反町たちが乗って来た車のナンバーは「893」で「ヤクザ」と読めるのであるが、それを言うならば冒頭で反町たちが乗っていた車のナンバーは「4771」で「死なない」と読ませ、その後のゾンビの出現を暗示させているのである。
 監督の数字に対するこだわりは相当なもので、例えば、
宗形組は宗形博也と彼の弟分の武史と信也の三人組で、対する竹下組は反町と彼の弟分の内田とジョーであるが、銭荷島に向かう時には宗形組には武史の元妻の桜が加わり、竹下組には何故か木山が加わるのである。武史と桜はゾンビと化した娘の日向と一緒に絶命し、医師のしげるは直美と恵と共に3人一組で死んでいく。
 さすがに細かい数字までは思い出せないが、交番に掲げられていた掲示板には事故件数などの数字が書かれていたのであるが、管内と管外の数字がほとんど変わらず、管内の異常なほどの治安の悪さをそれとなく描写している。
 この数字による「フォーマット作り」が本作を面白くしている一つの要素であることは間違いないであろう。


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『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』

2015-05-19 00:14:06 | goo映画レビュー

原題:『The Spongebob Movie:Sponge Out of Water』
監督:ポール・ティビット
脚本:グレン・バーガー/ジョナサン・エイベル
撮影:フィル・メヒュー
出演:アントニオ・バンデラス/トム・ケニー/ビル・ファッガーバッケ/クランシー・ブラウン
2015年/アメリカ

「子供向け」という言い訳を必要としない子供向け作品について

 『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』(原恵一監督 2015年)が「間」を重視する日本のアニメーションを代表するほどのクオリティーの高さを示すならば、本作がアメリカのアニメーションを代表するものとして捉えても構わないと思える理由は、別に盗まれたレシピを巡るストーリーが単調すぎるという皮肉を言いたい訳ではなく、むしろこれほど内容が無いにも関わらず観賞に耐えられるグラフィカルな映像美が逆に凄いのである。
 唯一実写として登場している海賊のバーガー・ビアードが明らかに『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウを意識していることは言うまでもなく、後半で変身したプランクトンがマーベル・コミックのハルクにそっくりで、『ナイトミュージアム/エジプト王の秘密』(ショーン・レヴィ監督 2014年)でも言及したが、もはやオリジナルを追求するよりもいかに多くのネタをつぎ込めるかで作品の出来の良し悪しが判断されているように見える。


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『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』

2015-05-18 00:00:39 | goo映画レビュー

原題:『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』
監督:原恵一
脚本:丸尾みほ
撮影:田中宏侍
出演:杏/松重豊/濱田岳/高良健吾/美保純/清水詩音/筒井道隆/麻生久美子
2015年/日本

監督のインスピレーションの元となる「百日紅」と「向日葵」について

 葛飾北斎を中心とした妻と2人の娘の物語は今公開されている他のアニメーション映画のような派手さはなく、小さなエピソードが淡々と語られるだけなのであるが、本作のラストで主人公のお栄(後の葛飾応為)の代表作である「吉原格子先之図」(浮世絵太田記念美術館所蔵)が映し出され、この光と影の強烈なコントラストを見せる洋風の絵にインスピレーションを得たように本作も光と影が際立った描写で描かれており、奇しくも『名探偵コナン 業火の向日葵』(静野孔文監督 2015年)ではフィンセント・ファン・ゴッホの『ひまわり』が取り上げられ、それぞれ「オリジナル」に対するスタンスを変えてストーリーに上手く組み込んでいるところが興味深い。
 例えば、突風で家の戸が吹き飛ばされ、嫌な予感を抱えて家を飛び出して走るお栄を背後から正面をワンカットで捉えるカメラワークで一気に画面に緊張感を漲らせる原恵一監督の演出の冴えは相変わらず美しいとは思うが、声優としての杏の起用が正しかったのかどうかは賛否が分かれるのではないだろうか。


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『名探偵コナン 業火の向日葵』

2015-05-17 00:25:24 | goo映画レビュー

原題:『名探偵コナン 業火の向日葵』
監督:静野孔文
脚本:櫻井武晴
撮影:西山仁
出演:高山みなみ/山崎和佳菜/山口勝平/小山力也/榮倉奈々
2015年/日本

作品と作者の人生を取り入れた大胆な脚本について

 敢えて日本でも人気のあるオランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホの代表作『ひまわり』をモチーフにどのようなストーリーが展開されるのか楽しみにしていたのであるが、一点だけ指摘しておきたい。
 鈴木次郎吉によってニューヨークのオークションで落札された『ひまわり』を日本に空輸するために特別に編成された「7人のサムライ」と呼ばれる護衛隊の中に絵画修復士の東幸二がいるのであるが、彼には幸一という双子の兄がいた。2人はオランダの郊外で発見した2番目の『ひまわり』の模写の扱いを巡って対立し、幸二が幸一を拳銃で撃ってしまう。幸二を庇うために幸一は弟を現場から離れさせて一人で絶命してしまい自殺として処理されるのであるが、このエピソードは妻や生まれたばかりの息子をかかえて生活が苦しかったテオがそれでも金の無心をしてくる兄のフィンセントを拳銃で撃ったという「テオ犯人説」を反映したものである。作品だけではなくゴッホの人生をも組み込んだストーリーと相俟って、犯人の犯行動機の弱さが気になるとしてもそれなりに見応えのある作品になっていると思う。


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『ドラゴンボールZ 復活の「F」』

2015-05-16 00:49:48 | goo映画レビュー

原題:『ドラゴンボールZ 復活の「F」』
監督:山室直儀
脚本:鳥山明
撮影:元木洋介
出演:野沢雅子/古川登志夫/田中真弓/山寺宏一/中尾隆聖/堀川りょう
2015年/日本

結局、復活してしまう「パワーゲーム」について

 前作『ドラゴンボールZ 神と神』(細田雅弘監督 2013年)はなかなか斬新な演出を施され、できるだけ登場人物たちは戦うことを回避していたのであるが、続編となる本作では結局「パワーゲーム」に徹することになり、まるで『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(高橋渉監督 2014年)から『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』(橋本昌和監督 2015年)へのストーリーの流れとそっくりなことに驚く。しかし原作者が脚本を担い、誰もが戦闘シーンを欲しているのであろうからやむを得ない。ちなみにAKB48の新曲のタイトルは「僕たちは戦わない」。


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『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』

2015-05-15 00:23:19 | goo映画レビュー

原題:『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』
監督:橋本昌和
脚本:うえのきみこ
撮影:梅田俊之
出演:矢島晶子/藤原啓治/ならはしみき/こおろぎさとみ/平田広明/堀内賢雄
2015年/日本

「パワーゲーム」を否定することの困難について

 前作『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(高橋渉監督 2014年)の出来があまりにも良かったためなのか、本作は普通の子供向けの作品という印象しか残らないし、前作において否定された「腕力」が復活していたので残念だったが、確かに毎年シリーズ化して制作されているのだからそう簡単に次々と傑作が生まれるはずもなく、前作が例外であり本作こそが本来のクレヨンしんちゃんなのであろう。


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『スーパーヒーロー対戦GP 仮面ライダー3号』

2015-05-14 00:34:21 | goo映画レビュー

原題:『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』
監督:柴崎貴行
脚本:米村正二
撮影:宮崎悟郎
出演:竹内涼真/中村優一/稲葉友/半田健人/天野浩成/倉田てつを/及川光博/内田理央/吉井怜
2015年/日本

ストーリーの構造だけは凝っている子供向けの作品について

 前作『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』と同じ監督と脚本家のコンビだったのでそれほど期待していなかったが、ストーリーの構造そのものはなかなか凝っている。1973年2月10日に放送された『仮面ライダー』の最終回の映像を上手く使い、仮面ライダー3号が存在していたという「擬史」を作り出すところまでは良かったのであるが、その後はいつものように大勢の仮面ライダーが登場し、ゴレンジャーの流れを汲む「手裏剣戦隊ニンニンジャー」が現れ、タイムボカンシリーズのマシンメカのようなものまで出現してなんやかんやわちゃわちゃしてしまっている。最後になってテレビで「正史」が描かれ上手くまとめているから良いのであるが、あくまでも大人用ではなく子供をターゲットに制作されているのだから大人が文句を言っても仕方がないところではある。


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『ドラえもん のび太の宇宙英雄記』

2015-05-13 00:22:36 | goo映画レビュー

原題:『ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』
監督:大杉宜弘
脚本:清水東
撮影:末弘孝史
出演:水田わさび/大原めぐみ/かかずゆみ/木村昴/関智一/井上麻里奈
2015年/日本

 消化不良のメタフィクション的なアプローチについて

 テレビのヒーロー番組『銀河防衛隊』に憧れてのび太が撮影に参加した理由の一つに、得意なあやとりをしてみせて子供たちに喜んでもらえていたという経験をしていたからであることは間違いない。子供たちにとっては糸で次々と物を生み出すのび太はヒーローなのであり、ドラえもんのひみつ道具『バーガー監督』でそれがおおごとになってしまったのである。
 映画作品内で映画撮影をするというメタフィクション的なアプローチは「ドラえもん」というメジャー作品にとってはなかなか斬新だと思うが、それならばラストにおいてバーガー監督が映写している映像がそれまで映されていたのび太たちの活躍するシーンだったことが残念で、実はこんなこともあったという、『SUPER8/スーパーエイト』(J・J・エイブラムス監督 2011年)ほどではないにしてももうひと捻り施された映像であってもよかったのではないだろうか。


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『PERSONA3 THE MOVIE #3 Falling Down』

2015-05-12 00:19:41 | goo映画レビュー

原題:『劇場版「ペルソナ3」第3章(PERSONA3 THE MOVIE #3 Falling Down)』
監督:元永慶太郎
脚本:熊谷純
出演:石田彰/豊口めぐみ/鳥海浩輔/田中理恵/緑川光/能登麻美子/坂本真綾/緒方恵美
2015年/日本

「社会正義」よりも「内面の葛藤」にしか共感されない現状について

 舞台は2009年11月4日。主人公の結城理は「一人」で葛藤している。最初から他人と関わらなければ苦しむことなどないのであるが、既に多くの仲間がいて「シャドウ」たちと戦わなければならない。結城とアイギスの「乾いた関係」に転校生の望月綾時が積極的に関わってくる。それは伊織順平とチドリとの「熱い関係」に影響される。自分の命をなげうっても順平を救ったチドリを見て結城が望月との関係に積極性を持とうと思った矢先にラストを迎え、第4章へと先送りされる。
 戦闘シーンはもちろん修学旅行における露天風呂のシーンなど大胆なギャグも交えて最終章への準備は万全といったところだとしても、このように個人の「内面の葛藤」を巡るストーリーは若者に受けるからいいのであるが、押井守監督が『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』(2015年)で描くような「社会正義」を扱うSF作品が全く受けないのは気の毒としかいいようがない。


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