原題:『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』
監督:押井守
脚本:押井守
撮影:町田博/工藤哲也
出演:筧利夫/真野恵理菜/福士誠治/太田莉菜/森カンナ/吉田鋼太郎/高島礼子
2015年/日本
今、最もリアリティーを持つSF作品について
『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年)はアニメーションであったため違和感がなかった演出が実写映画の本作においては違和感満載で散見される。例えば、キャバレーの舞台で踊っている女性ダンサーを堪能していた第二小隊隊長の後藤田継次が警視庁に呼び出された際に、後藤田が浴衣のまま出勤しているという状況はアニメーションであるならばギャグとして笑えるが実写で見るとなめているようにしか見えない。
作品前半のそのような日常の描写には前衛作品と見間違えるぎこちなさが残るが、後半の戦闘シーンはさすがに見応えはある。「首都決戦」と称しながら「グレイゴースト」と呼ばれる最新鋭戦闘ヘリ一機で警視庁が壊滅状態に陥ったり、肝心の特車二課の警察用レイバーが二機共にポンコツであることや、さらには灰原零が、自分が使っているバスケットボールには「ASH(灰)」とサインしていながら既に平成7年2月に亡くなっており、攻撃をしかけていたのが誰なのか謎のまま終わってしまうところなど、映像は恐らく予算不足により強いられた安っぽさなのであるが、そのチープさこそが却って日本の危うい「正義」にリアリティをもたらしているように見えるのは私だけなのかもしれないと思う理由は、公開初週で観客が異常に少なかったからで、宮崎駿監督と並び称されるべき監督の作品としては寂しいかぎりである。