原題:『Horns』
監督:アレクサンドル・アジャ
脚本:ジョー・ヒル/キース・ブーニン
撮影:フレデリック・エルムス
出演:ダニエル・ラドクリフ/ジュノー・テンプル/マックス・ミンゲラ/ジョー・アンダーソン
2013年/アメリカ・カナダ
ヒーローになり損ねた恋人たちが頼る曲について
ポスターに写っているダニエル・ラドクリフの、どこかとぼけたデビルの容姿に騙されたのかもしれない。あるいは彼が演じた主人公のイグ・ベリッシュの頭から角が生えてから彼に関わる人物が次々と本性を露わにするストーリー前半の流れがどことなくコミカルだったことも関係するのかもしれないが、ストーリーの後半あたりからだんだんと話が重くなって、ラストはゴリゴリのホラー映画になってしまい、本作をどのように楽しめばいいのか分からなくなってしまった。
それにしても一昨年の『ウォールフラワー』(スティーヴン・シュボースキー監督 2012年)、去年の『ローン・サバイバー』(ピーター・バーグ監督 2013年)、そして今年の本作と3年連続してデヴィッド・ボウイの「ヒーローズ("Heroes")」が使用された映画を観ることになるとは想像していなかった。しかし本作はイグが途中で回転していたターンテーブル上のレコードを止めてしまうようにイグと彼の恋人のメリン・ウィリアムズが「英雄」になり損ねた物語である。だから「ヒーローズ」よりもラストで流れるカナダのロックバンドのサンセット・ラブダウン(Sunset Rubdown)の「Shut Up I Am Dreaming Of Places Where Lovers Have Wings」の方が心を打つと思う。メジャーな曲により語られようとした「理想的な恋人同士(=ヒーローズ)」の物語が失敗した後(デヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」のモデルは当時のボウイのプロデューサーだったトニー・ヴィスコンティ(Tony Visconti)と当時バッキングボーカルを務めていたアントニア・マース(Antonia Maass)であるとヴィスコンティ自身が英国BBC2が制作したドキュメンタリー映画『David Bowie - Five Years - The Making of an Icon in 2013』で語っている)、テーマは変えずに「宅録」の曲により小さな物語として語ろうと試みることが心にしみるのである。以下、和訳。
「Shut Up I Am Dreaming Of Places Where Lovers Have Wings」日本語訳
君は遠い岸辺にいる
いずれにしても海が僕たちの話を聞くことはありえない
もしも僕が海に飛び込んだら
沈む前に僕は君の名前を呼ぶよ
彼は誰もいないミニチュアの部屋の中で
君の名前を大声で叫んでいる
それは絶望的な響きだ
君は遠い岸辺にいるから
彼は地団駄を踏んでいる
彼が拳で君のドアを叩いている音が君には聞こえているのか
彼は君にデッサンを贈りたいんだ
信義の厚い手をした男たちのデッサンだ
描くことであんな良い友達を作れるんだ
彼は君に話をしたいんだ
足を踏み鳴らしながら
「静かにして! 僕は恋人たちが翼を持っている場所の夢を見ているんだ」と
言う少年たちの話を
僕は川が分岐する場所で君と会うよ
他のみんなが死んでも
水の上の君は無事なはずだ
僕たちは思い出せるよりもずっと若いはず
君は遠い岸辺にいる
僕は地団駄を踏んでいる
君のドアを叩く拳の音が君には聞こえているのか
僕が何のために釘づけにしているのか君には分かっているの?
いずれにしても海が僕たちの話を聞くことはありえない
もしも僕が海に飛び込んだら
沈む前に僕は君の名前を呼ぶよ
いずれにしても海が僕たちの話を聞くことはありえない
僕は水が怖い
僕は空が怖い
僕は待つことにうんざりだ
いずれにしても海が僕たちの話を聞くことはありえない
もしも僕が海に飛び込んだら
沈む前に僕は君の名前を呼ぶよ
いずれにしても海が僕たちの話を聞くことはありえない
だから音をたてないで
音をたてないで