原題:『龍三と七人の子分たち』
監督:北野武
脚本:北野武
撮影:柳島克己
出演:藤竜也/近藤正臣/中尾彬/品川徹/樋浦勉/伊藤幸純/吉澤健/小野寺昭/萬田久子
2015年/日本
ギャグを優先させるという悪い癖を持った映画監督について
本人が主役をしていない場合「代わり」の主演俳優がまるで本人のように振る舞う『マジック・イン・ムーンライト』(2014年)のウディ・アレン監督作品のように、本作の主役を演じている藤竜也もまるで北野武のように見える。基本的にコメディー作品であるから細かいことはどうでもいいのかもしれないが、それでも気になってしまった細かいところを指摘しておきたい。
例えば、オレオレ詐欺で50万円と多少なりとも価値のあるものを持って待ち合わせ場所で待っていた主人公の高橋龍三が犯人と話し合っているところに仲間のマサがたまたま通りかかったことで未遂に終わったのであるが、その後犯人を追いかけたり龍三の息子の龍平に電話をかけて確認したりするという伏線の処理がなされていないことで演出が下手に見えてしまう。
あるいは龍三とマサが店に入って来る客が何を頼むか賭けをしている時に、若いカップルが入って来て賭けの対象にされてしまうのであるが、2人に怒鳴られた後でもカップルが一緒の席について食事をしようとしている点も不自然で、それはラストにおいてもあっという間に大勢の警官が現場に揃っているところなど結局ギャグを優先させるために設定がありえなくなってしまうのである。
しかしその無理やりなギャグも決して上手くいっているわけではなく、どのネタもベタなために爆笑とまではいかず、唯一笑えたシーンは競馬場で龍三がモキチに指で購入する馬券を教えた際に、龍三の指が欠けていたために「5-5」ではなく「5-6」でもなく「5-3」だったというところで、このギャグだけは意表をついたもので上手いと思った。
因みに「死体ネタ」は、例えば、『運が良けりゃ』(山田洋次監督 1966年)などの前例があり珍しいものではない。