台湾のタクシーはボディが黄色く塗られているのが特徴だ。暗がりの大通りを走るタクシーを捕まえた。後部座席のドアを自分で開いて乗り込み、英語を使った。
「台北駅まで行ってくれ」
首を傾げた運転手はとりあえず車を出したが、いきなり小道に入り込んで停車した。運転手が車外に出て私に降りろと言う。「何てこった。俺は大金を持ってはいないよ」と思ったが、仕方がない。指示通りに車から降りた。
すると「お前の持っているガイドブックを見せろ」というジェスチャーをしたので物取りではないことがわかったのである。ボンネットの上で本を広げて「台北車站」を指差した。運転手はようやく行き先を理解してくれた。二人とも照れ笑いを浮かべて出発。まもなく国技館に似た駅に着いた。
台北駅の南側には高層ビル群が建っていた。薄暗いので異様に大きく見える。ガイドブックに挟んでおいた地図を引き抜いて西へ進路をとった。

