寮管理人の呟き

偏屈な管理人が感じたことをストレートに表現する場所です。

台湾北東部の町「九分」を訪れる(後編)

2009年06月29日 | 

昼食後、60分の自由時間を与えられた。私は近くの土産物屋で下駄のミニチュアを購入した。この店から石段がはるか上まで続いている。

「豎崎路」と呼ばれる小道は生まれ故郷の西方にある鄙びた漁師町にどことなく似ていた。あそこのように魚臭くはないが、独特の甘ったるい香りが漂う。そう、八角(スターアニス)の匂いである。初めて台北の屋台で嗅いだ時の記憶が蘇ってきた。

飲食店の前に突っ立っていた私は背後から声をかけられた。

「こんにちは。日本の方ですか?」

振り返ると中学生くらいの女の子だった。流暢で丁寧な言葉遣いに驚いた。

「はい」

「九分はいい所でしょう」

「確かに。一度は訪れる価値がありますね」

「私、日本に行きたいです」

「東京?」

「ええ。大阪や京都も見たいと思っています」

「せっかく行くのなら日本の良い所だけでなく悪い所もよく見て下さい。マナーに関して今や日本人は後進国の民並みに酷いからね。とにかく多方面から物を見ることが大切です。そうすれば自国と他国の長所がそれぞれはっきりとわかりますよ」

私の言いたいことがどこまで伝わったかは自信がないが、最後まで聞いていた女の子は気さくな笑顔を浮かべた。そして「ありがとうございました。さよなら」と言って人ごみに消えた。

思いがけない出会いこそが旅の醍醐味であるとつくづく感じた。

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コメント
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