「おはようございます。この辺りは昔お盛んだったと聞きますが…」
老人はきっと嫌な顔をすると予想した私だったが、取り越し苦労であった。お前さんも好きじゃのぅと言いたげな笑みを浮かべて彼は語り始めたのだ。
「ほうよ。…ここらは女郎屋でな。店の前が雁木じゃった」
色街の生き字引と表現してもよい男性は格子戸の家の前で昔を懐かしむかのように話を続けた。
「ようけ(遊)女が並んどったわ。じゃが、わしは一度も(店には)上がったことがないんよ。今から思うと惜しいことをしたなー。ハハハハハ…」
西村晃そっくりの高い声につられて私もヘラヘラ笑った。しっかりとした足取りで湊明神社の方へ歩いて行く黄門さまを見送り頭を下げた。若き日の男性が見た遊里の賑わいを想像し妓楼の裏手(すぐ西)を流れる大砂川河口へ歩を進めた。
老人はきっと嫌な顔をすると予想した私だったが、取り越し苦労であった。お前さんも好きじゃのぅと言いたげな笑みを浮かべて彼は語り始めたのだ。
「ほうよ。…ここらは女郎屋でな。店の前が雁木じゃった」
色街の生き字引と表現してもよい男性は格子戸の家の前で昔を懐かしむかのように話を続けた。
「ようけ(遊)女が並んどったわ。じゃが、わしは一度も(店には)上がったことがないんよ。今から思うと惜しいことをしたなー。ハハハハハ…」
西村晃そっくりの高い声につられて私もヘラヘラ笑った。しっかりとした足取りで湊明神社の方へ歩いて行く黄門さまを見送り頭を下げた。若き日の男性が見た遊里の賑わいを想像し妓楼の裏手(すぐ西)を流れる大砂川河口へ歩を進めた。
