随分昔、ガードマンをやっていた事があった。地元警備会社としてはナンバー1の会社で、工事現場や駐車場の車両誘導をする一方で、施設の警備も業務とする会社であった。
俺は平常時は工事現場等に行っていたが、週に1~2度、施設の方にも入っていた。
工事現場の時はあまりとやかく言われなかった事もあって、制服は日焼けしてしまった物を着てヘルメットを被って旗を振っていたのだが、施設の時はアイロン掛けした制服を着てヘルメットでは無くて制帽。この事がまだハタチそこそこであった俺に世の中の世知辛さを知らしめる事となった。
今でこそ警備業界というのは、防犯とか交通誘導の必然性等が時代的に要求されて来て業界イメージも随分上がったと思う。だが当時は結構酷かった。赤旗を出しても止まらない車が結構いて、止まったとしても文句を付けられたり、当時の同僚には蹴られたとか、胸ぐら掴まれたヤツもいた。俺も、停止した車がジリジリと俺に向かって寄って来て、俺の膝10cm位に車のバンパーが来る位の所まで寄せられたり、停止中に思い切り空ぶかしされたり。
ところが、制帽の時だと殆どこういうトラブルが無い。むしろ尊い人を見る様な感じなのだ。中身は全く同じ人間が、服装換えるだけでこんなに違うのかと考えさせられた。
今の工場に引っ越したばかりの頃、一人で作業をしていたら、セールスマンが来た。
「事務所はどこですか?」
要するに、ウチの会社の偉い人に会いたいと言う事なのだろうが、勿論シャチョーは俺であるし、他に人はいない。ちょっとムカっと来たので、
「あそこの入口です」
と丁寧に事務所の場所をご案内差し上げた。
こちらにも非がある。真っ当に社会生活を営むならば、身なりには気を付けなくてはならない。
こういうのは結構難しい。軽自動車に乗ってりゃバカにされたりするが、ベンツに乗ると尊敬される。でも金持ってても好きで軽に乗る人もいれば、もしかして60回ローンでベンツ買ったのかもしれない。まあ、身なりよりも内面から発するオーラを身に付けるのが一番いいのかねえ。
ちょっと話は逸れるが、俺は職業(商売)を間違えられる事が非常に多い。確かに俺の仕事はあらゆる事をやるので、知らない人から見ると何屋か判らないのも致し方無い。
一番多いのが、「おーい、ペンキ屋さーん」。その他、金物(装飾金物)屋、フィルム屋、左官屋、土方、ゴミ屋(苦)、電気屋、鳶、芸術家(爆)などなど…。さて、俺は何屋?(※上の写真は俺だ)