一旦手を離してしまうと、再度取り掛かるのに時間が掛かる・・・。
イカンイカン。
まず構造の検証をする為に、先日テスト用に作った鏡月グリーンのPETボトルによる試作品を、もう少し実物に近い状態にしてみた。
エア抜きホースの径がどの程度必要なのか見当が付かなかったのと、エア吸入口がガソリン吐出口と共通で大丈夫なのか、実際に確認してみたかったから。
エア抜きホースの径だが、液体(ガソリン)よりも気体(空気)の方が流動抵抗が少ないので、予想よりも小さくても機能的には充分な様だ。もしかすると物理学的には計算する方法があるのかもしれないが、俺は知らん。エア吸入口についても、ガソリン吐出口と共通でも問題無い様だ。
もちろんこの二点は、径は大きければ大きいほど抵抗が少なく、吐出口と別の方がより一層エアを飲み込みやすいと思われるものの、あくまで実用上で要求される分には大丈夫という意味だ。実際オンロード耐久で使われるクイックチャージャーはエア抜きとガソリン吐出口の径が同等で、バカでかい。尚且つ二つの口は共通でなく、それぞれ独立している。
ホームセンター等で売っている極一般的なガソリン携行缶は、給油に時間が結構掛かる。給油ノズルが長くて細い事も原因であろうが、何と言っても空気穴が小さいのが最大の理由であると思われる。なので耐久レース等で給油する際はオイルジョッキを使った方が作業が速いのは周知の通り。
クイックチャジャーの必須条件は、
●給油口を下に向けた状態でもコックを閉じる事が出来る。
●給油コックを一気に全開・全閉に出来る。
●落下する燃料の体積よりも同等かそれ以上の体積の空気をタンク内に導く事が出来る。
思いついたのはこの三つくらいかなあ。
なので、洗面器位の大きさの巨大な漏斗、しかもパイプ部分の内径が25mmとか30mm程度はある物をバイクのタンクの給油口に差し込んで、バケツでガソリンを入れれば、給油スピードに関しては立派なクイックチャージャーと呼べる。まあ勿論そんな事したら危なくて仕方が無いのだが・・・。
今回クイックチャージャーを製作するにあたり、自分の個人的なニーズとしての条件が下記。
●少なくとも数日間ガソリンを入れっぱなしにしたまま、持ち運び可能な物。
●ある程度美観を考慮した物。
●全く普通に10リッターの給油が出来る事。
上記を踏まえた上で構造を図にしてみた。
まずバルブ。コレは既にボールバルブ(球状の金属に貫通穴が開いており、これが90度回転する事によってバルブを開閉する仕組み)を入手済みだが、アチャルビスの物はブレーキレバーみたいな操作レバーなので、想像では洗面台の底の栓みたいな構造かと思われる。操作性という意味ではボールバルブの方が不利かな。※上の図では便宜上バタフライバルブで表現してあります。
タンク本体は市販のポリ容器でも機能は果たすと思うが、美観の問題と、携行缶としては使えないであろう事で却下。会社の肥やしになっているアルミ板(2t)を使用する。すると別の問題が発生、一つはキャップ。アルミ製のキャップを調達或いは製作する必要があるが、たまたま所有していた(使ってない)エスプレッソメーカーを切って使う。問題点その二、一般的なアルミ製のクイックチャージャーは円筒状で、下部(図のB)は漏斗のようにテーパーになっている。手曲げで円筒(図のA)を製作するのは慣れた人間ならばそれほど難しくは無いのだが、手作業で円錐に加工するのはかなり大変なのである。そこで円筒状では無く、幻の多角形クイックチャージャーに決定。(スミマセン、オヤジギャグ・・・わかる人にはわかって貰えると信じています)
その他エア抜きホースが大気開放だと、持ち運びの際にガソリンがこぼれるので、ここにもバルブを設置しなければならない。
それと、ボールコックは真鍮製。真鍮そのものはTIGで溶接可能(といっても経験無し)だが、当然アルミとはくっつかない。探しまくっていたら、ステンレス製のテーパーネジを持つジョイントを発見。何とか出来そうなカンジになってきた。
量産するわけではないので、後は作りながら考えよう。
先ず最初に、本体の形状とサイズを決める。六角形か八角形のつもりだが、正六角形や正八角形ではカッコ悪そうなのでラフデザインをして検討した結果、平たい八角形にすることにした。容量を12リッター位と仮に設定すると、サイズはどうすればいいのだろう?
MS EXCELに数式を設定し、各寸法を入力して吟味。寸胴部分で約11リッター(板金の厚みは考慮していない)となりつつも見た目のバランスの良いサイズを決定。
これを元にCADで展開図面を製作。かえって手計算の方が速い場合もあるので、部分的には三角関数を使って計算。
材料をシャーリングで切断し、手曲げ。折り曲げ角度は、ペンプロッターで原寸を書いた物にあてがって微調整した。
とりあえず切り出して曲げた板をTIGで点付けして仮組み。俺のショボイ経験上では、こういった立体物を溶接して組み立てるには、出来る限り図面上のサイズを重視して作業を進めるのが良いと思う。全てを現物合わせで製作する事も可能なのだが、微妙な寸法の狂いが最終的に仕上がりに影響してしまい、見栄えが今一つになってしまう。人間の目は非常に優秀で、ほんの少し歪んでいるだけで正確に出来てない事が判ってしまう。
それとクイックチャージャーの蓋として生涯を捧げて戴くエスプレッソメーカーだが、本当に溶接可能かを検証する。ただでさえアルミ合金は種類がたくさんあるが、鋳物の材質は俺にとって正に未知の領域。付属品として添付されていた計量スプーン(恐らく材質は同じであろうかと)をテストピースとして溶接してみる。
どうやら問題なさそうである。
つづく。