いよいよヒキガエルの子供達が池から離れていく。水際に群れているのは僅かな数になってきた。地面に展開したベビー達を見るともなく見ていると、パラパラ漫画をゆっくり見ているようなパラッ、パラッと言う感じで黒い点が動いていく。結構、新鮮な情景だ。
陸に上がってしまえば、独り立ちならぬ一匹立ちしなければならない宿命を背負った種であるけれど、その分を水中時代には密集した群れで生活していた事で「プラス・マイナスかなあ」と思った旅立ちの遭遇だった。
そう思うと、まだ水際で「おしくらまんじゅう」している一団も、名残りを惜しんでいるように見えてくる。それはそうだろう、数年後に戻って子孫を残せるのは数匹かもしれない弱肉強食、生存競争の真っ只中に飛び込むのだから。
しかし、人間からみれば四苦八苦とでもいえる過酷な前途で、喰うか食われるかの世界でも、そこには憎しみも哀しみも無い、ただ生きるために互いが喰らう、命のやり取りだけなのだろう。そして互いが命をつなげて行く。この幼くて小さい身体に、それを背負っているかと思うと凄いなあと思うのだ。