久しぶりの遠出だった。刈り払いの助っ人に出かけたのだが、道中が長かった割には若い頃に登山していた山域も見ながらのドライブでもあったので、懐かしいルートだ。なんたってこのルートは二十数年ぶりになるのだから。結局、二日間で430キロメートルを走ったが道路事情は格段に向上していた。
作業を終え汗を流すために最寄の日帰り温泉に立ち寄ったのだが、眼前の浅間山も眼下の千曲川も見えず、こちらはがっかりだ。夜は野営したけれど、これも久しぶりで、帰宅してから気がついたのは、寝心地の悪さは後席の座面を起こして背もたれを倒さなかったためだった。頭の位置と角度の微妙な差が睡眠の質を左右することを実感した。
オオシラビソに囲まれた野営地は雷雨に見舞われたが、雨音が途絶えると一転静寂が支配する。雨の止み間にトイレで林道へ出たのだが、静寂と闇の世界は黄泉路より恐ろしい。きっと…。