澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

民主党政権、検察、中国という三題噺

2010年09月26日 00時36分30秒 | 政治

 村木厚子・元厚生労働省局長が公文書偽造容疑で逮捕されたときは、まだ自民党政権で、舛添要一が大臣だった。自民党政権というと、何だか遠い昔の出来事のように思えてくる。そのとき、舛添は「村木さんはとても優秀で人望がある人だった」と残念がったという。大阪地検特捜部が狙ったのは、民主党の石井一代議士だった。同時期に東京地検特捜部は、小沢一郎に狙いを定めていた。もちろん、村木氏は「役人叩き」の人身御供だった。
 いま村木局長が無罪になり、大阪地検特捜部の主任検事が逮捕されたという事実経過を見ると、自民党政権時には検察による「民主党潰し」を狙った捜査が行われ、民主党政権になって検察内部のひび割れが生じて、主任検事が人身御供になったという見方が成り立つ。政治に対しては中立であるはずの検察が、実は時の政治権力に極めて弱いことが明らかになった。
 
 一方、尖閣諸島の中国漁船衝突事件では、那覇地検が「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮すると、これ以上、身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した」として、船長を釈放した。これに対して、人権派弁護士上がりの仙石官房長官は、「検察の判断を了とする」として、検察の声明があたかも政府とは無関係であるかのような無責任な態度をとった。

 自民党政権下では民主党を貶める謀略に加担した検察が、今度は民主党政権に成り代わって中国と対峙するとは…。これをまともに信じれば、検察は政権を超越する存在になる。もちろん、こんなことを信じる人はいないけれど…。

 「国内法に基づき粛々と処理する」とカッコよかった前原外相だが、「粛々と処理した」のは那覇地検で、その報告を受けただけというお粗末な結果だった。もちろん、ウラでは高度の政治判断があったことは間違いないが、形式上はあくまで那覇地検が主役なのだから、笑うに笑えない話だ。民主党が喧伝した「政治主導」って、こんなことだったのか?

 民主党と検察の怪しい関係が続けば、今度は「小沢一郎無罪」から「小沢一郎待望論」にまで膨らんでいくのだろうか。「私が人民解放軍の野戦司令官であれば…」と北京で演説した小沢のことだから、権力を握ったとしても、中国に媚びるだけだろうと思うのに…。

 最後に、尖閣事件に関する「朝日」と「産経」の報道の違い、これには改めて驚く。「朝日」のこの呆けたような論調は、どうしたら出てくるのか。「朝日」の常套句は「論議を尽くして話し合え」という、いつものお言葉。中国、北朝鮮相手にどう「論議を尽くすのか」、そのやり方を教えてほしいものだ。「護憲」の平和主義から一歩も踏み出さない、この妄想的新聞社の存在に、中国は大いに満足しているはずだ。まさに「朝日=ちょうにち」新聞と呼ばれるのがふさわしい。「中日新聞」ははなはだ迷惑でしょうが…。

 

中国船長釈放―甘い外交、苦い政治判断 (「朝日」9月25日)

 日中関係の今後を見据えた大局的な判断であり、苦渋の選択であったと言うほかない。
 那覇地検はきのう、尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に故意に衝突したとして、公務執行妨害の疑いで逮捕・勾留(こうりゅう)していた中国人船長を、処分保留のまま釈放すると発表した。
 日本国民への影響と今後の日中関係を考慮したという。純粋な司法判断ではなかったということだ。 もとより菅政権としての高度な政治判断であることは疑いない。
 中国側は船長の無条件釈放を求め、民間交流の停止や訪日観光のキャンセル、レアアースの事実上の対日禁輸など、対抗措置をエスカレートさせてきた。河北省石家荘市では、違法に軍事施設を撮影したとして日本人4人の拘束も明らかになった。
 日本側が粛々と捜査を進めるのは、法治国家として当然のことだ。中国側のあまりにあからさまな圧力には、「そこまでやるのか」と驚かされる。
 温家宝(ウェン・チアパオ)首相は国連総会で「屈服も妥協もしない」と表明し、双方とも引くに引けない隘路(あいろ)に陥ってしまった。
 このまま船長を起訴し、公判が始まれば、両国間の緊張は制御不能なレベルにまで高まっていたに違いない。
 それは、2国間関係にとどまらず、アジア太平洋、国際社会全体の安定にとって巨大なマイナスである。
 ニューヨークでの菅直人首相とオバマ米大統領の会談では、対中関係で両国の緊密な連携を確認した。クリントン国務長官は前原誠司外相に、尖閣が米国による日本防衛義務を定めた日米安保条約の対象になると明言した。
 その米国も日中の緊張は早く解消してほしいというのが本音だったろう。菅政権が米首脳の発言を政治判断の好機と考えたとしても不思議ではない。
 確かに船長の勾留期限である29日を待たずに、このタイミングで釈放を発表した判断には疑問が残る。
 圧力をかければ日本は折れるという印象を中国側に与えた可能性もある。それは今後、はっきりと払拭(ふっしょく)していかなければならない。
 そもそも菅政権は最初に船長逮捕に踏み切った時、その後の中国側の出方や最終的な着地点を描けていたのか。
 船長の勾留を延長した判断も含め、民主党外交の甘さを指摘されても仕方ない。苦い教訓として猛省すべきだ。
 日本はこれからも、発展する中国と必然的に相互依存関係を深めていく。それは日本自身の利益でもある。
 簡単に揺るがない関係を築くには、「戦略的互恵関係」の具体的な中身を冷徹に詰めていく必要がある。
 何より民主党政権に欠けているのは事態がこじれる前に率直な意思疎通ができるような政治家同士のパイプだ。急いで構築しなければならない。

敗れるべくして敗れた日本 中国、海洋権益確保にさらに自信(「産経」9月25日)

【北京=伊藤正】「政治は硝煙なき戦争であり、戦争は硝煙による政治だ」(毛沢東)。中国漁船衝突事件への中国側の対日攻勢は、まさに国を挙げて勝利を目指し、持てる手段を動員した「銃火なき戦争」だった。なぜなら、公務執行妨害事件として処理しようとした及び腰の日本とは対照的に、中国は「主権問題」ととらえ、一歩も譲らない方針を決めていたからだ。
 19日に漁船船長の勾留(こうりゅう)延長が決まった後、中国軍事科学学会副秘書長の羅援少将は「われわれには自国の利益と尊厳を守る知恵と実力がある」と中国メディアに自信たっぷりに話した。その通り、日本が屈服したことで、中国は東シナ海だけでなく南シナ海でも権益確保へさらに自信を深めた、と中国筋は言う。事件の影響が今後、広がるのは確実だ。
 中国は対日外交戦に勝利し、東シナ海での漁業資源だけでなく、海底資源開発や中国艦艇の活動などで有利な地位を得たと外交筋はみる。
 今回の事件の背後には、海洋資源開発の主導権を握る軍の影がちらつく。近年、海洋資源の確保が国家方針になって以来、中国は海軍力の増強に努め、その活動範囲は西太平洋からインド洋に広げ、特に南シナ海を「核心的利益」として、ベトナムインドネシアなどとの摩擦を引き起こしてきた。
 東シナ海では、白樺(中国名・春暁)の天然ガス資源をめぐり2年前に日本との共同開発で合意したが、この合意には、国内世論が強く反発した。それをリードしたのは、軍事系サイトであり、開発に関与する軍系企業の意思を反映していたといわれる。
 衝突事件発生後、中国政府は9月中旬に予定されていた日本とのガス田開発条約交渉を延期、さらに単独開発強行の動きも見せた。中国外務省報道官は、共同開発合意を無視するような発言までして、軍系ネットの支持を集めた。
 中国政府が対日外交に自信を持っていたのは、民主党政権下で日米関係が冷却化し、米国が日本を積極支持する可能性が低いと読んでいたこともあったと外交筋は指摘している。
 米政府は中国の海洋覇権拡大を警戒し、南シナ海の権益をめぐる紛争で、ベトナムと合同軍事演習するなど、対中牽制(けんせい)を強めていた。米中関係は、米国の対台湾向け武器輸出などで冷却化、胡錦濤国家主席の訪米計画も延期されたままだった。
 漁船衝突事件が発生した今月7日、中国温家宝首相が、訪中したドニロン米大統領次席補佐官(国家安全保障担当)やサマーズ国家経済会議(NEC)委員長と会談、温首相はその前日にはカーター元米大統領とも会談し、米中関係改善で一致していた。
 日中が対立を深めている間、米中は胡主席の訪米問題や軍事交流の復活で大きく前進していた。米国は「人民元問題や核拡散問題などで、中国の協力を必要としており、日中の対立には不介入の立場を貫いた」(新華社電)。ニューヨークでの日米首脳会談では尖閣問題は議題にもならなかった。
 中国経済が拡大、日本の対中依存が深まり、「中国の対日手段は、日本の対中手段よりはるかに多い」(中国紙「環球時報」)という現状に加え、対米工作や国際社会への宣伝戦でも日本は後れを取った。戦略も主権を守る決意も欠いた日本は敗れるべくして敗れた。
 この結果の影響は、日中関係全般に及ぶ可能性が高い。中国はまた南シナ海でも実効支配を強めてゆき、周辺国も対抗して軍事力の増強に動くとみられる。
 羅援少将は「歴史と現実の双方が求めているのは、中国の『富国強軍』だ」と強調、経済力と軍事力の増強こそが必要と強調する。この巨大国家の膨張は当面止まりそうもない